第1話
完全フルダイヴ型のゲームマシンが発売されてから10年。
初期は様々な問題があり、年齢制限や使用時間の制限などが、設けられたが、その後技術的な進歩が諸問題を解決し。
一番のネックだと言われていた価格も、手ごろな値段で一般に出回ると、その普及率は爆発的に伸びる事になる。
各ゲームメーカーは鎬を削り、新しいゲームの開発に取り組んだ。
その中で、今、一番人気のあるゲーム。
『エレメンタルオブタワークライム』
ロイ・カーと言う。ゲーム制作会社の出しているVRMMOだ。
プレイヤー人口は、国内で1000万人とも言われ。その人気の高さは発売から三年経った、今でも変らない。
そのエレメンタルオブタワークライムの、大型バージョンアップが、この度行なわれる事になり、1ヶ月にもおよぶメンテナンス期間を経て。今日いよいよ再開される。この日を、一日千秋の思いで過ごした。プレイヤー達は、今か今かと、メンテナンス終了時間を示す、カウンターを見つめている事だろう。
そして今日から、そのゲームに新規で参加しようとしている。一人の少年も、メンテ終了時間のカウンターを横目で見つつ、フルダイヴマシーンの初期設定を行なっていた。
「長かった……やっとの思いで手に入れたぞ……」
その少年は、目の前にある。カプセル型の完全フルダイブマシーンspirt worldの初期設定を終えると、嬉しそうに見つめる。
「これを手に入れるために色々なバイトに手を出したなぁ……短期のものから長期勤めた所も……それでも3年かかったから感慨もひとしおだね」
少年はカプセルの表面を撫でると、もう一度嬉しそうに笑う、脇に付いてるボタンを押すとカプセルの蓋が自動で開いていく。中には目元まで覆うヘルメットが備え付けられている。
「これを被って此処で寝転べば、あの憧れの世界に行けるんだ……! 冒険が僕を待っている!」
1人で悶えていると、携帯電話の呼び出し音は響く、その音に少し驚きながらも少年は携帯を操作すると電話で出る。
「おーい、皆人! 準備は出来ているか? そろそろメンテが明けるぞ、一応確認のため落ち合う場所をもう一度言っておくぞ」
電話から聞こえてくる。聞きなれた声に皆人と呼ばれた少年は、元気に返事をする。
「うん、大助も準備は出来てるの? スタートダッシュを決めようって張り切っていたよね?」
「おうよ、この日のために夏休み前半で課題を終らせたんだ、これから1ヶ月はゲーム三昧だ!」
大助と呼ばれた電話の主は、相当気合が入っているようで、電話口でもその声は大きい、皆人は幾分、電話から耳を離しながら大助の話を聞く。
「皆人は新規だから、始まりの都って所からスタートする、俺もダイヴしたら始まりの都に行くから、そこで合流な色々レクチャーしてやるよ」
「でも、良いの? 僕になんか構わないでスタートダッシュに専念しても良いんだよ?」
皆人が、幾分申し訳無さそうに言うと、大助は笑いながら答える。
「確かにスタートダッシュは大事だ! だけど折角お前が始めるんだ初期の面倒位は見てやりたいからな。LVも新規のお前と、古参の俺じゃあ違うし、暫くはPTも組めそうも無いからな……」
大助が、申し訳無さそうに言うと、皆人は明るく言葉を返す。
「ううん、大助もゲームしてるんだもの楽しまないとスタートダッシュするんでしょう? それに僕は最初はソロで活動しようと思っているから…」
「相変わらずのゲームスタイルだな……」
大助は呆れたように言い、諦めたように笑う。
「試行錯誤しながら自分で憶えていくって、今は、あまり流行らないスタイルなんだけどな」
「でも、その試行錯誤がゲームの醍醐味じゃない?」
皆人はさらりと答えると、電話口の大助は溜息を吐いた。
「まぁ、それでもダイヴしたら、向こうの暗黙のルールとかの説明しておかないといけないしな、さっき言ったことを忘れるなよ!」
「分ってるよ、始まりの都の、何処で待ち合わせするの?」
「うーん……クライマーギルドの前だな、そこが一番分りやすいはずだ、誰に聞いても分る場所だからな」
「了解、ダイヴしたら其処を目指すね、僕はキャラも作らなくちゃいけないから少し遅れるかもしれないけど…」
「分った、それじゃあ先にギルドの前で待ってるな、因みに俺のキャラの名前はジンだから。よろしく」
「うん、それじゃあそろそろ切るね時間も迫ってきたし、それじゃあ、また後で」
「おう!」
皆人が電話を切ると、それと同時に、今度は部屋のドアがノックされる。
「お兄ちゃん! お昼だよ! 食べないの?」
そんな声とともに、室内に入ってくる少女。髪を肩で揃え、小柄だが出るところ出て引っ込む所は引っ込んでいる。
ショートパンツと大き目のTシャツを着た、その少女に皆人は苦笑しながらも注意する。
「凪沙、返事を待ってからドアを開けてって、何時も言ってるだろう?」
「お兄ちゃんは変な所が細かい、それじゃあ女子にモテないんだからね!」
「一応良識的な事しか、言ってないつもりだけど…」
凪沙と呼ばれた少女は、皆人の傍に来るとspirt worldを見つめながら、皆人に聞いて来る
「昨日届いたコレが、お兄ちゃんが3年もかけて、お金を貯めて買ったモノ?」
「そうだよ、意外とコンパクトでしょ? 僕はもう少し大きいかと思ったんだけど……でも良かったよ。ベッドスペースに収まる大きさで、もし入らなかったら部屋の真ん中に、置く事になる所だったし」
少し自慢するように言うと、凪沙は、興味無さそうに顔を背けると、何故か皆人の足を軽く蹴ってくる。
「高校に入ってから、全然私と遊んでくれなくなったし、休みの日はバイトばっかりでさ……こんな馬鹿でかいゲーム機買うために、あんなに必死に働いていたの?」
拗ねた様に言いながら、また足を蹴ってくる凪沙に向かって、皆人は苦笑してから口を開く。
「悪かったよ、今度時間を取るから二人で何処かに出かけよう?」
すると足を蹴るのを止め、少し顔を赤くしながら皆人を睨む。
「絶対だからね、約束だから破ったら酷いんだぞ!」
「うん、約束」
凪沙の顔を、見つめながらそう言うと、赤い顔を、さらに赤くしながら、凪沙は皆人から顔を逸らす。
妹の顔を久しぶりに見ると、此処最近で、随分可愛くなったなぁなどと、兄馬鹿な事を思って、苦笑を深くする。
「お昼は取り合えず、後で食べるよ、凪沙、ワザワザ呼びに来てくれたのに、悪いけど……母さんにはそう言っておいて」
「うん、分った……お兄ちゃんはこれからゲーム?」
急に、大人しくなった妹に、皆人は不思議に思いながらも、これからの予定を凪沙に説明する。
「うん、これから2時間くらいはゲームをしてるから、お昼はその後、食べるよ……それから、もし何か用事があるときは、このボタンを押してくれれば、ダイヴしてても分るから。何かあったら気軽に連絡してくれて良いよ」
そう言って、カプセル状のベッドの上部に付けられている。ボタンの説明を凪沙にすると、皆人はカウンターを見て慌てだす。
「あっ、もう直ぐ開放時間だ! 凪沙、それじゃあ悪いけど、母さんにもさっき言った事、説明しておいて」
皆人は、急いでカプセルに入ると、備え付けのヘルメットを被り、体を横たえると、カプセルの蓋を閉じる。
バイザー越しに凪沙の顔が見える、妹に手を振ると、凪沙も呆れたような顔で手を振り替えしてくれる。
その姿を見届けると皆人は目を閉じる。カウンターの数字がゼロになるともにspirt worldが起動する。
「ダイブスタート!」
その声共に、皆人は別の世界に飛び込んでいった。
テンプレ物語ですがよろしくお願いします。
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