一奏目~過去でも未来でも~
この物語は、私が夢でみたものを小説にしたものです。
過度な期待は、しないで下さい。なお、この物語は、フィクションであり、個人名、団体名など全て自分で考えた、創作小説です。
(ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピ ガシャン)
「ふわぁ~。んん~、ふう~」
(ペタッペタッ、シャッ)
「んっん~、今日もいい天気だなぁ~」
僕は、綺麗な小鳥のさえずりを聞きながら、清々しい朝の空気を浴びます。
「今は、6時か。まだまだ、時間はあるし、ビーナに会いに行こうかな?」
僕は、手早く着替えを済ませ、散歩がてら、いつもの場所へ行きます。
「ビーナ~」
「にゃ~。」
「おっ、ビーナ。おはよう。よしよし、いい子だ。」
「にゃ~、ゴロゴロ♪」
「はい、ご飯だよ~」
「にゃあ~。」
僕は、ビーナがご飯を食べている間、ずっと頭を撫で続けました。朝は、時間がないので、ご飯をあげたら、すぐ帰らなきゃいけないので、遊ぶのは、放課後だけです。
僕は、ビーナにバイバイをして、神社を後にしました。
家に着くと、時刻は6時30分。
時間は、たくさんありますが、主婦にとっては、すぐです。
主婦じゃないけどね。
僕は、婦じゃなくて夫のほうだね。たぶん。
まぁ、簡単に言うと朝は、忙しいということですね。
顔を洗い、髪を整え、歯を磨き、台所へ向かいます。
(一人暮らしして分かったことだけど、本当に大変なんだね、母親って。)
僕は、テレビをつけて、朝ご飯の準備をしながら、毎日のように天気予報をチェックしています。
『今日の天気は、晴れ時々曇り、ところにより、雨が降るでしょう。降水確率は、午前中が10%、午後は、30%となるでしょう。』
「ここら辺も、午前中は10%で、午後は30%。ん~、なんとも、微妙な確率だなぁ~。折りたたみ傘くらいは、持って行くか。」
『予想最高気温は15℃、最低気温は8℃と、少し肌寒く、午後からは、風が強くなるでしょう。傘が飛ばされないように、十分に注意しましょう。以上で天気予報を終わります。次は、最新のニュースをお伝えします。』
僕は、ニュースを聞き流しながら、手早く進めていきます。
朝ご飯の準備ができたら、すぐに食べれるようにして、制服に着替えてきます。
ここまでで、1時間半かかります。
着替えが終わったら、奈留を起こします。僕と奈留は、家が隣であるため、窓が隣接しています。
だから、長い物で窓を突いて起こすんですよ。
鏡
(コンコンコン、コンコンコン、コンコンコンコンコンコンコン)
「朝だぞぅ~、起きろ~奈留~。飯も出来てるからなぁ~。」
奈留
「ふわあぁ~、おはよう、鏡。」
「あ、ああ。おはよう。」
「?どうしたの、鏡?」
「い、いや。なんでもないよ、なんでも」
「そう?」
「あ、あぁ。飯が冷めるから、早くきてね」
「うん、わかった~」
奈留(ガラガラガラッ、ピシャン)
鏡(ガラガラガラッ、ピシャン)
「///////」
(いつもだけど、やっぱり慣れないなぁ~前のボタンを閉めないで、下はパンツだし、しかも、スタイルもいいほうだから、ある一点に目が行ってしまう、本人は気にしてないみたいだけど、僕にはまだ早過ぎる)
僕は、あの絵を頭から飛ばすかのように、弁当を作りはじめました。
弁当を作り終わると同時に、奈留が家にきました。
「ご飯♪ご飯♪」
奈留は、いつものように、ハイテンションでキッチンにやってきました。
「すぐに終わるから、待ってて。」
「うんっ♪」
机に自分と奈留の分のご飯を並べて、
「よし、じゃあいただきます。」
「いっただきま~す♪」
朝ご飯を食べると、眠気がすっと消えて今日も一日頑張ろうという気持ちになります。
「そういえば、今日、午後から雨が降って、風も強くなるかもしれないらしいぞ。」
「へぇ~、そうなの?でも、『かも?』なら傘はいいや。邪魔になるだけだし。」
「奈留が、それでいいなら、それでいいけど。」
「それに、雨が降ったら、部活は中だし。」「そう?」
奈留は、陸上部の短距離の選手らしい。
戦績は、いい方だが奈留が言うには、「もう少し、胸が小さければ、もっといい戦績を残せる。」らしいでもな、奈留、それを女子の前で言うなよ、もし、言ったら冷たい視線が送られるから。でも、そこら辺はしっかりと出来ていると思う。奈留は、友達がいっぱいいるから。
『時刻は、今、8時になりました。頭の柔軟体操の時間です。』
「もうそんな時間か、さぁ、ご飯食べて学校へ行こう。」
「うんっ♪」
ご飯を食べ終え、家を出て、学校へ向かいました。
「今日は、クラス分けと担任の発表の日じゃなかったっけ?」
「そういえば、そうだったねぇ~、今年は、同じクラスなれるといいね♪」
「なれなくても、毎日会ってるけどね。」
「それだけじゃなくで学校行事も一緒になれるよ。体育祭や文化祭、修学旅行。楽しみだねぇ~」
「修学旅行は、ちょっといやなんだよね。」
「なんで?」
「今年、スカイツリー上るだろ。たぶん。僕、高い所、少し苦手なんだ。」
「幽霊や怪談話は、何も感じないのに?」
「うん。僕、中学校入学と同時に、引っ越したよね。引っ越した先の近くに大きな橋が会って、そこから一度、落ちちゃって。それから、ちょっと怖くなっちゃって。」
「えぇっ!?それって、大丈夫だったの!?なんで、教えてくれなかったの!?」
「だ、大丈夫、大丈夫だから!!もう過ぎたことだったから、関係ないかなぁ~と思ったから。」
「関係無くないよ!!!!でも、よかった。生きていてよかったぁ~」
「かなり、危なかったらしいけどね。後、5分過ぎてたら、手遅れだったらしい。」
「へぇ~、そんなことがあったの。誰が、助けてくれたの?」
「それがね。妹二人らしいんだよ。ちょうど、近くを通ったらしくて。二人は協力して助けてくれたらしい。」
「そのお二人さん、強いんだね。確か、五月ちゃんと羽月ちゃんだっけ?」
「そうそう。あの二人は、命の恩人だから。みんなは、甘やかせ過ぎっていうけど、それくらいしか、僕は出来ないから。」
「ふぅ~ん。」
「いざとなったら、命にかえても、守ってやるつもり。」
「三人は、固い絆で結ばれているんだね。じゃあ、私もそれをサポートするよ!!」
「頼りにしてるよぉ~。」
学校に着くと、生徒玄関前に人だかりが出来ていた。
「あ、あそこに掲示板があるよ。」
「おっ、本当だ。でも、人が多くて見えにくいなぁ~」
人と人の隙間から、見えたものは、
2-C
1番 相川 愁
23番 萩原 鏡
24番 長谷川 奈留
「奈留、同じクラスで2-C組。番号は、僕が23番で、奈留が24番だって。」
「本当!!やった~、鏡と一緒だあ~。それじゃ、一年間よろしくね♪」
「よろしくね。一年間、楽しく過ごせそう。」
「それじゃ、新しい教室に行こう!」
「そんなに、急がなくても、教室は逃げないよ。」
「いいから、早く早くぅ~♪」
いつも以上に、ハイテンションな奈留を見ながら、僕も期待に胸を膨らませて自分達の教室へと向かいます。桜の舞い踊る校舎で、僕達は新しいステージへ進んでいきます。
校舎は、四階まであり、一階には、職員室、体育館、食堂があります。
二階には、一年生の教室が、A組~E組までの五個の教室があり、それぞれ、三階には二年生の、四階には三年生の教室があり、その上には屋上があります。
その他、多くの教室がありますが、これらが、主な教室です。
三階にある2-C組の教室に入ると、かなり静かになっていました。
そんな中、盛り上がっている人が一人。
「おぉ~い、みんなたくさん話そうぜ。たくさん話して、コミュニケーション取ろうぜぇ~」
僕は、彼を知っている。
小学校の頃、よく遊んでいた親友だ。
一年生の頃は、クラスが違ったため、あまり遊ぶ機会がなかった。
彼は、僕と目が合うと、
「鏡じゃねぇか、久しぶりだなぁ~。元気してたか?」
「去年も、いたけどね。」
「でも、こうやって面と向かってはなすのは、4年ぶりくらいだろう?」
彼の名前は、八木翔鵺。
僕は、昔から彼のことをショウと呼んでいる。
「確かに、奈留と仲良くしてた?同じクラスだったみたいだけど。」
「よく会話は、してたわ。」
「後、勉強も教えて貰ったこともあったなぁ~」
「あの時は、大変だったわぁ~。教えても教えても分からなかったものねぇ~」
「それは、お前の教え方が下手だったからな。」
「失礼な!あなたが、聞き流してただけでしょ。」
「人のせいかよ。」
「まぁまぁ、落ち着いて二人とも。」
「あっ、すまん。」
「こっちも、熱くなっちゃってゴメンね。」「さぁさぁ、すぐに先生、来るだろうから、座って待ってようよ。」
僕達が席に着くと先生がやってきた。
「みんな~、席着いて~、今から出席をとりま~す。」
ずいぶんとのんびりした口調の人が出席をとります。
出席をとり終わると、今日の連絡事項を一通り終わると一時間目が始まりました。
一時間目は、LHRなので、担当は担任です。
「一時間目を始めますよ~。今日は、初めて顔を合わせる人もいると思うので、自己紹介をしたいと思いま~す。」
まぁ、確かにそうなるよね。
「まずは、先生から。はじめまして、私は今年から担任になった、田阪 洋子と言います。よろしくお願いしますね。」
「「「「よろしくお願いしま~す。」」」」
「皆さん、元気ですねぇ~。それじゃ、先生も顔と名前を覚えたいので、廊下側から自己紹介をお願いしますね。」
(この人、ゆっくりとした口調をしてるのに、しっかりと生徒達をまとめることができるんだな)
あっという間に、自己紹介を終えて、次に進みます。
僕の自己紹介は、普通ですよ。
ショウは、ユーモアのある自己紹介。
奈留は、元気ハツラツの自己紹介。
この二人の時は、かなり盛り上がりだった。
ショウは、女子達から「キャーーー!!」という声。
奈留は、「キャーー!!」だの「うぉーー!!」だの言われいた。
この二人は、カッコイイし、可愛いから。
「それでは、今から席替えをします。名簿順にこの箱から、紙を取ってください。くじは、一斉に開けるので、まだ見ないで下さいね。」
僕が、引き当てたのは、窓際の一番後ろ。
しかも、あまりの席、つまり、右と後ろに誰もいない。
でも、前には奈留、右斜め前には、ショウがいる。
知り合いが、近くにいてよかった。
「これで、席が決まりましたね。それでは、一日頑張りましょう~。」
授業は、ほとんど全て自己紹介で終わりました。
奈留とショウの番になるとうるさくなるため、
「あ~う~、耳が痛いよぅ~。」
二人上げられる歓声をもろに浴びてしまう、故にこのように耳が痛くなる。
僕は、今屋上にきてお弁当を食べている。
ショウと奈留は、学食へ行った。
僕は、植物が風になびく音を聞きながら、耳に癒しを与えます。
「そういえば、少し曇ってきたな、風も強くなってきたし。」
(僕は、これくらいのほうがいいなぁ~)
「さぁ~、そろそろお昼休みも終わりだ」
食べ終わったお弁当を片付け、屋上を出ました。
放課後。
(サー-----)
雨は、思っていた通りだったけど。
(ヒューーー-ン、ガタガタッ)
風が、窓をならすほど、強くなっていた。
「これじゃ、傘を持っていると危ないなぁ~」
奈留は、筋トレがあるらしいから、部活へ行った。
「ビーナが、心配だ。早く帰ろう。」
風は、いっこうに止まないままで、雨が、少しずつ強くなっている気がする。
僕は、神社に行くとすぐにビーナをすぐに探し始めました。
「にゃ~・・・・。」
ビーナは、すぐに見つかりましたが、どうやら風が強くて、雨をもろに浴びていたためか、体が冷たくなっていました。
「大丈夫か!?すぐに、あっためて上げるからな!!」
僕は、すぐに家に帰りました。
家に着くと、すぐにあっためて上げました。
「にゃ~~~~。」
ビーナは、10分くらいあたためて上げるとすぐに元気になりました。
「へくちっ!!ビーナの事で、必死になっていたけど、僕、びしょびしょだよ。バスタオルで濡れた髪を拭いて、お風呂沸かさないと。」
僕は、タオルで頭を拭きながら、お風呂場を開けます。
(ガラガラガラッ)
「あっ、鏡。勝手にお風呂沸かして、入っちゃったけど、よかったかな?」
「あ・・えぇ~と、べ、別にいいけど。」
「?どうしたの?顔がタコみたいに真っ赤だよ?もしかして、この雨と風で風邪引いた!?」
奈留は、そのままの格好で、近づいてきた。
そう、一糸纏わぬ姿で。
「だ、だだだ大丈夫だから!!!気にしないで、じゃ、失礼しましたーーーー!!!!!」
「ちょ、ちょっとどうしたのよ!!鏡~~。」「う~ん、どうしちゃったんだろ。鏡。んっ?あぁ~、これか。」
「ハァッ・・ハァッ・・。初めて・・だな・・階段を全力で登ったの。」
自分の部屋へ逃げ込んでしまった、理由は、見てしまったからだ。
奈留の裸をはっきりと。
(それにしても、奈留の肌、真っ白だったなぁ~。はっ、考えちゃだめだ考えちゃ。)
頭から追い出そうとしてみますが、
(頭から、離れないよおぉぉぉぉ~~~~~!!!!!!)
顔が、まだ熱い。
(うわああぁぁぁ!!!冷静になれ、僕!!冷静になれ、冷静に!!!)
「くしゅん!!」
(ふうぅ~、やっと落ち着いた。そういえば、なんで風呂場に行ったんだっけ?確か・・雨で体が冷えてたから。)
そこまで、考えて。
「って、寒~~~!!早く、あたためないと本当に風邪引いちゃうよ。」
僕は、お風呂道具を一式持って、急いでお風呂に入りました。
僕は、身体を洗い、髪を洗った後に、湯舟につかりました。
「ふうぅ~、生き返るぅ~。」
冷えた身体に、染み渡って気持ちいい。
(ガラガラッ)
「ん~~?」
「鏡。ビーナに汚れがついてたから、洗ってもいい?」
「別に、いいぞぅ~。いつの間に、仲良くなったんだ奈留?」
「鏡が、マタタビエキスを私にかけてから懐いちゃった。」
「そうか、ならよかった。」
(ん?奈留?鏡?)
声のするほうをすると、ビーナを抱いている奈留がいた。
笑顔で。
「ちょちょちょ、ちょっと!!なんで、入ってきてんの!?」
「だって、ビーナちゃんが汚れてたから。」
「そういう意味、じゃなくて!!」
「だって、猫洗えるのここしかないし。それに、鏡も私の裸見たでしょ?だから、これでおあいこ。」
「な、なな、何を言ってるのかな?何も見てないよ。」
「嘘。目が泳いでるよ。」
「ぐっ・・。すいませんでした。」
「分かった?なら、洗ってもいいよね。」
「は・・はい、お好きにどうぞ。」
「ありがとうね。・・・別に鏡に見られてもいいんだけどね。」
「ん?なんか言ったか?」
「えっ!?べ、別に何も言ってないよ!!」
「そうか、ならいいけど。」
(少し経てば、奈留も出ていくだろう。)
「よし、これで終わりっと」
ビーナを洗い終えたのか、バスタオルで拭いてあげていた。
(よし、これで奈留も出ていくだろう。)
ビーナと一緒に出て・・・・行かなかった。
「あのぉ~、奈留さんやぁ~、ビーナは洗い終えたんじゃ・・」
「うん、洗ったよ。」
「じゃあ、どうして?」
「誰も、ビーナちゃんを洗ったら、出ていくとは言ってないけど?それに、私、『ビーナちゃんを洗ってもいい?』じゃなく、『洗ってもいい?』って聞いたんだよ?」
「それは、つまり・・・・。」
「つまり、鏡ちゃんも洗って上げますよぉ~。ふっふっふっ。」
「身体はもう洗っ「私の裸を見たこと、忘れてないよね」すいませんでした。思う存分、わたくしめを洗って下さい。」
アニメとかで、ラッキースケベってあるけど、実際にあると怖いね。
これからは、ちゃんとノックをしよう。
ノックは、人類最大の発明だね。うん。
さすがに、タオルは腰に巻こう。
奈留は、少し納得のいかない顔をしていたが、諦めてくれたようだ
「私が、こうやって背中洗うの何年ぶりかな。」
「う~んと、小学校以来だったかな。あの時は、よく一緒に入ってたっけ。」
「うん。それにしても、鏡。身体つきも、肌も女の子みたいだね。」
(グサッ)
「ぐはっ」
「どうしたの、鏡。もしかして痛かった?」
「い、いや。別になんともないよ。」
「そう?でも、心は男らしくなったよね。小学校の時は、いつも私が一緒にいて、守ってあげてたのに、泣き虫な鏡を。」
「確かに、あの時は守られてばっかりだったっけ?」
「うん。いつも私に助けを求めてきてたよ。」
「昔は、迷惑かけてばかりだったけど。今は大丈夫!!だから、次は、僕が奈留を守るよ。」
「じゃあ、お願いしようかな?ずっと。」
「当たりだよ。任せておきなさい。」
「ふふっ。じゃ、流すよ。」
「分かった。ありがとうね。」
僕の身体を流すと、奈留は「じゃあ、少しあったまってから出てきてね♪」と、上機嫌で出ていきました。
僕はというと、
「・・・」
(僕は、何を恥ずかしいことを言ってるんだああぁぁぁ!!!)
顔が赤いのは、きっとお風呂のせいだ。
そういうことにしておこう。
(パタン)
「ふうぅ・・・」
(私は、何大胆なことしているのよおぉぉぉ~。)
そう。私はただ、鏡が男としてどのくらい成長したか、確かめったかっただけなんだから。
(見た目は、あまり変わってなかった、うん。だから、私がいつまでも守ってあげるつもりだった。で、でも、な、な、中身はずっと変わっていた。だから、守って欲しいと思った。ずっと。永遠に。鏡は、気付いてないと思うけど、私、こ、こ、告白みたいなことしちゃったよ!!)
この鼓動の早さと顔の熱さは、きっとお風呂の蒸気のせいだ。
そういうことにしておこう。
僕達二人は、何事もなかったかのように、いつもみたいな時を過ごしている。
みたいなというのは、例外が二つあるからだ。
一つ目は、今日はビーナがいること。
二つ目は、雨と風が強いこと。
つまり、天気が悪いということ。
天気予報では、この地域一帯だけが、台風みたいな天気らしい。
どういうことかね?
まぁ、特にすることがないので、居間の机も綺麗に、食器の汚れを隅々まで落としてみます。
時間が余ります。
「いい子ですねぇ~、ビーナちゃん。可愛いなぁ~」
「奈留~、今日の夜、麻婆豆腐食べたいって言ってたでしょ。」
「言ってたねぇ~。」
「ゴメン。今日は、作れない。材料ないから。」
「仕方ないでしょ。この天気じゃ、買いに行けないし。」
「今日は、あるものでしか作れないから、オムライスでもいい?」
「なんでもいいよ~、鏡の料理はおいしいし。」
「いつもより、早いけど。ご飯作ろうかな?」
「ビーナのご飯はどうすんの?」
「それなら、テレビの後ろに猫缶があるよ。飲み物は、猫用のミルクを飲ませないといけないから。」
「テレビの後ろ?う~ん、あ、あったあった。それで、猫缶ってどれくらいあげるの?」
「ビーナくらいなら、缶の四分の一あげればいいよ。」
「ふ~ん。手じゃ開けられないよね。鏡、缶を開くやつは?」
「それ、手で開けれるよ。丸いやつない?」
「ないよ~。」
「じゃあ、裏側は?」
「裏側?あ、あった。これか、よしいくぞ~」
(カコン)
「はい、ビーナようのお皿。」
「ども、ども。」
「猫用ミルクは?」
「ええと。これ?」
「そうそう。それを、この皿に入れて、ぬるま湯を入れて飲ませるの。」
(サラサラサラ、コポポ。)
「ありがとう。」
「奈留も、飯食べる準備しててね。」
「分かった。」
いつもは、7時くらいに食べているが、今日は、両方とも早く帰って来たため、いつもより、一時間早く食べます。
「よし、出来たよ。ケチャップは、自分で好きな量をかけて食べてね。」
「ふふふっ、こうやってると新婚さんみたいだね。」
「立場、逆だけどね。」
「でも、そういう家庭、増えてきているみたいだね。女性が仕事をして、男性が家事をやるっていう。」
「家庭もそれぞれだし、仕事も共働き、家事も一緒にって家もあるみたいだけどね。」
「その家庭、すごいね。」
『さきほど、最新の天気予報が分かりました。ある一部の地域の上空に大きな雨雲が出現しました。今日の夜から、明日の朝まで、雷雨を伴う、天気になるでしょう。』
「か、か、雷!?」
『落雷によって、停電になるかもしれません。』
「て、て、停電!?」
「ん?どうしたの?」
「えっ、いや別に。」
「怖いの?」
「そ、そんなわけないじゃない、全っ然、平気なんだからね。」
「震えてるように、見えるのは、僕の気のせい?」
「ふ、震えてわけないじゃない。これは、家に帰ったら、ゲームで敵を倒すかシミュレーションしていて、それに対する武者震いよ。」
「で、本音は?」
「かなり怖いので、誰か助けてくれないかなぁ~って。はっ。」「大丈夫だって、家に落ちるわけじゃないし。」
「じ、自分に、お、落ちるかもしれないじゃない。」
「いや。それは確立的にもっとありえないと思う。」
「そ、それはそうかもしれないけど、万が一、億が一、自分に落ちるかもしれないと思うと、怖くて怖くて。」
「なんで、そんなネガティブな考えなの。」
僕も奈留も、ご飯を食べ終わっていたので、僕達は片付けました。
(キキー、キリキリキリキリ、ドーン)
「あっ、母さんからだ。」
「ホント、おかしな着信音だねぇ~」
「あっ、これ、僕が実際に聞いた音だ。」
「なんで、事故に巻き込まれてんですかあなたは!!」
「?何、言ってるの?これ、ゲームだよこれ。」
「なんとも、紛らわしい言い方してんですか。」
「そのキャラって、僕が変な着信音を鳴らすたびになるの?」
「仕方ないじゃない、何故かこうなっちゃうんだから。」
電話は、この天気のことだった。
「鏡のお母さんは、何かあると心配して電話をしてきてくれるの?」
「奈留のお母さんは、そういうことしないの?」
「心配はしてくれるんだけど、あの人内気だから。」
(ピカッ、ドォーンゴロゴロゴロ)
「キャーーーーー!!!」
(ガッシッッッ)
「ちょ、ちょっと。奈留!!!」
「やっぱり無理!!怖いものは怖いのよ。」
体と体を密着させてくる奈留は、尋常じゃないほど震えていた。
(ピカッ、ドォーンゴロゴロゴロ、・・・フォン)
停電だ。
停電になった。
奈留の体は、さっきより何倍も震えていた、怖さのあまり声を出せなくなっていて、僕に抱きつく強さは、かなり強くなっていた。
「痛い痛い痛い、痛いよ奈留。」
「あっ、ゴメン。つい、我を忘れちゃって。」
「どうして、そんなに怖がるの?」
「ずっと前にね。そういう夢をね。見たね。最初は、回りにたくさんの人がいたんだけど、雷で停電になるとみんなが私から離れていくのみんな、『お母さんが来てくれるでしょ』って。でも、お母さんが迎えにきてくれなかったの。私は、雨と雷がなっている暗い場所で一人ぼっち、寂しくて悲しくて寒くて暗い場所で一人ぼっち、夢だって分かっているんだけど。なんだか、とてもリアルで。」
「へぇ~、そんな夢を見たの?」
「鏡と仲良くなる前だったから、小学二年生くらいの夢だったの。でも、この夢は一回だけじゃなかったの。」
「また、見たの?」
「うん。これは、小学四年生くらいの時の夢、鏡と仲良くなってからみた夢、二年生で見た夢が長くなったの。」
「それは、また。」
「ううん、これはいい夢だった。一人ぼっちになった所までは同じだったんだけど、次がよかった。急に明るい光が出てきて、そこから鏡が来て、「一緒に帰ろ。」って言って、私を引っ張っていってくれたんだよ。」
「すごいな、僕。」
「でも、その二年後はいやだった、鏡は出てきて、また引っ張ってくれたんだけど、私、途中で転んだの。起き上がると鏡もいなくなってて、また一人ぼっち。それに、その夢を見た次の日に鏡が引っ越すことを聞いたから。」
「タイミング、悪いなぁ~、その夢。」
「中学入ってからも、何度もその夢を見たの。それは、一人ぼっちのまま。」
「それを、何度も見たのか?確かに、きついな。」
「怖い話を聞いたときは、その話になったり、楽しい話を聞いたときはその逆の話になったり。」
「よく、今まで怖がらずにいれたね。」
「少し怖いんだけどね。」
「じゃあ、なんで今日はそんなに怖がるの?」
「だって、今日は鏡がいる。もし、手を離してしまえば、またいなくなってしまうかもしれない。夢では、全部こんなシチュエーションだから、怖さ倍増しちゃうんだよ。」
「でも、それは夢でしょ?」
「夢だよ!夢だけど!!一回、本当にいなくなったじゃん。それに、昨日の夢でもいなくなったから。」
「大丈夫だって、引っ越したりしないから。」
「違うの。昨日、見た夢は私の目の前で、き、鏡が私の変わりに殺させる夢を見たの。だから、夢なんだけど、怖くて怖くて。」
「大丈夫だって!!だって、僕はこんなにピンピンしてるから、夢だから夢!!!!」
(・・・ピカッ)
「ほら、電気ついた。だから大丈夫だよ。」
「あっ、ホントだ。よかったぁ~。」
「何も無かったじゃん。だから、安心して。」
「うん、分かった。でも、怖いから、今日この家に泊まってもいい?」
「あっ、やっぱり?そうなるだろうと思ってた。」
「そして、怖いから鏡と寝る。」
「な、なな、何言ってるの!!!それは、さすがにねぇ~。」
「私をずっと守ってくれるんじゃないの?こんな怖がっている、女の子を一人にするの?」
「分かった、分かったから。そんな、捨てられた子犬みたい目、しないでよ。」
「ホント!!やったぁ~。これで、今日はいい夢を見れるよ。」
あの夢を話しているときとは、一転してハイテンションな奈留に戻った。
(奈留のあんな悲しい顔、初めて見たな。)
僕は、あの夢を話ている時の、顔を思い出していました。
(奈留には、寂しい思いをさせてしまったから、今度は、奈留を楽しませるようにしよう。)
いつもの奈留に戻ってくれてよかった。
僕の知ってる奈留は、いつも笑顔でみんなを笑顔にさせることができる、僕の可愛い幼なじみだ。
僕は、夜中に目が覚めた。
どうやら、誰かに起こされたらしい。
(奈留?)
いや。
奈留は、心地良さそうに寝息を立てて、眠っている。
(なーんだ、気のせいか。)
再び、眠りにつこうとしたら、
(ペロペロペロ)
誰かが、僕の頬を舐めている。
(ビーナか?)
いや、違う。
これは、猫の舌じゃない。
しっかりとした、人間の舌だ。
(もしや、変態か!?)
いや、違う。
戸締まりをちゃんとしたはず、何度も確認したから。
(じゃあ、誰だ?)
今も、なお舐め続けられている方向を見て、重いまぶたを開いていきます。
ビーナがいた所が膨らんでいます。
更に目を開けると、黒くて長いストレートの髪が目に入りました。
(日本人形?もしかして、日本人形の呪いか!?)
慌てて目を開けると、
「起きた?・・・・鏡。」
肌は雪のように白く、自分の背丈ほど長い髪をした、黒髪の女の子がいました。
「?・・・・私に何かついてる?」