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恋模様五重奏  作者: セユ
2/3

一奏目~過去でも未来でも~

この物語は、私が夢でみたものを小説にしたものです。

過度な期待は、しないで下さい。なお、この物語は、フィクションであり、個人名、団体名など全て自分で考えた、創作小説です。

(ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピ ガシャン)

「ふわぁ~。んん~、ふう~」

(ペタッペタッ、シャッ)

「んっん~、今日もいい天気だなぁ~」

僕は、綺麗な小鳥のさえずりを聞きながら、清々しい朝の空気を浴びます。

「今は、6時か。まだまだ、時間はあるし、ビーナに会いに行こうかな?」

僕は、手早く着替えを済ませ、散歩がてら、いつもの場所へ行きます。


「ビーナ~」

「にゃ~。」

「おっ、ビーナ。おはよう。よしよし、いい子だ。」

「にゃ~、ゴロゴロ♪」

「はい、ご飯だよ~」

「にゃあ~。」

僕は、ビーナがご飯を食べている間、ずっと頭を撫で続けました。朝は、時間がないので、ご飯をあげたら、すぐ帰らなきゃいけないので、遊ぶのは、放課後だけです。

僕は、ビーナにバイバイをして、神社を後にしました。


家に着くと、時刻は6時30分。

時間は、たくさんありますが、主婦にとっては、すぐです。

主婦じゃないけどね。

僕は、婦じゃなくて夫のほうだね。たぶん。

まぁ、簡単に言うと朝は、忙しいということですね。

顔を洗い、髪を整え、歯を磨き、台所へ向かいます。

(一人暮らしして分かったことだけど、本当に大変なんだね、母親って。)

僕は、テレビをつけて、朝ご飯の準備をしながら、毎日のように天気予報をチェックしています。

『今日の天気は、晴れ時々曇り、ところにより、雨が降るでしょう。降水確率は、午前中が10%、午後は、30%となるでしょう。』

「ここら辺も、午前中は10%で、午後は30%。ん~、なんとも、微妙な確率だなぁ~。折りたたみ傘くらいは、持って行くか。」

『予想最高気温は15℃、最低気温は8℃と、少し肌寒く、午後からは、風が強くなるでしょう。傘が飛ばされないように、十分に注意しましょう。以上で天気予報を終わります。次は、最新のニュースをお伝えします。』

僕は、ニュースを聞き流しながら、手早く進めていきます。

朝ご飯の準備ができたら、すぐに食べれるようにして、制服に着替えてきます。

ここまでで、1時間半かかります。

着替えが終わったら、奈留を起こします。僕と奈留は、家が隣であるため、窓が隣接しています。

だから、長い物で窓を突いて起こすんですよ。

(ガラガラガラッ)

(コンコンコン、コンコンコン、コンコンコンコンコンコンコン)

「朝だぞぅ~、起きろ~奈留~。飯も出来てるからなぁ~。」

奈留(ガラガラガラッ)

「ふわあぁ~、おはよう、鏡。」

「あ、ああ。おはよう。」

「?どうしたの、鏡?」

「い、いや。なんでもないよ、なんでも」

「そう?」

「あ、あぁ。飯が冷めるから、早くきてね」

「うん、わかった~」

奈留(ガラガラガラッ、ピシャン)

鏡(ガラガラガラッ、ピシャン)

「///////」

(いつもだけど、やっぱり慣れないなぁ~前のボタンを閉めないで、下はパンツだし、しかも、スタイルもいいほうだから、ある一点に目が行ってしまう、本人は気にしてないみたいだけど、僕にはまだ早過ぎる)

僕は、あの絵を頭から飛ばすかのように、弁当を作りはじめました。

弁当を作り終わると同時に、奈留が家にきました。

「ご飯♪ご飯♪」

奈留は、いつものように、ハイテンションでキッチンにやってきました。

「すぐに終わるから、待ってて。」

「うんっ♪」

机に自分と奈留の分のご飯を並べて、

「よし、じゃあいただきます。」

「いっただきま~す♪」

朝ご飯を食べると、眠気がすっと消えて今日も一日頑張ろうという気持ちになります。

「そういえば、今日、午後から雨が降って、風も強くなるかもしれないらしいぞ。」

「へぇ~、そうなの?でも、『かも?』なら傘はいいや。邪魔になるだけだし。」

「奈留が、それでいいなら、それでいいけど。」

「それに、雨が降ったら、部活は中だし。」「そう?」

奈留は、陸上部の短距離の選手らしい。

戦績は、いい方だが奈留が言うには、「もう少し、胸が小さければ、もっといい戦績を残せる。」らしいでもな、奈留、それを女子の前で言うなよ、もし、言ったら冷たい視線が送られるから。でも、そこら辺はしっかりと出来ていると思う。奈留は、友達がいっぱいいるから。

『時刻は、今、8時になりました。頭の柔軟体操の時間です。』

「もうそんな時間か、さぁ、ご飯食べて学校へ行こう。」

「うんっ♪」

ご飯を食べ終え、家を出て、学校へ向かいました。

「今日は、クラス分けと担任の発表の日じゃなかったっけ?」

「そういえば、そうだったねぇ~、今年は、同じクラスなれるといいね♪」

「なれなくても、毎日会ってるけどね。」

「それだけじゃなくで学校行事も一緒になれるよ。体育祭や文化祭、修学旅行。楽しみだねぇ~」

「修学旅行は、ちょっといやなんだよね。」

「なんで?」

「今年、スカイツリー上るだろ。たぶん。僕、高い所、少し苦手なんだ。」

「幽霊や怪談話は、何も感じないのに?」

「うん。僕、中学校入学と同時に、引っ越したよね。引っ越した先の近くに大きな橋が会って、そこから一度、落ちちゃって。それから、ちょっと怖くなっちゃって。」

「えぇっ!?それって、大丈夫だったの!?なんで、教えてくれなかったの!?」

「だ、大丈夫、大丈夫だから!!もう過ぎたことだったから、関係ないかなぁ~と思ったから。」

「関係無くないよ!!!!でも、よかった。生きていてよかったぁ~」

「かなり、危なかったらしいけどね。後、5分過ぎてたら、手遅れだったらしい。」

「へぇ~、そんなことがあったの。誰が、助けてくれたの?」

「それがね。妹二人らしいんだよ。ちょうど、近くを通ったらしくて。二人は協力して助けてくれたらしい。」

「そのお二人さん、強いんだね。確か、五月ちゃんと羽月ちゃんだっけ?」

「そうそう。あの二人は、命の恩人だから。みんなは、甘やかせ過ぎっていうけど、それくらいしか、僕は出来ないから。」

「ふぅ~ん。」

「いざとなったら、命にかえても、守ってやるつもり。」

「三人は、固い絆で結ばれているんだね。じゃあ、私もそれをサポートするよ!!」

「頼りにしてるよぉ~。」


学校に着くと、生徒玄関前に人だかりが出来ていた。

「あ、あそこに掲示板があるよ。」

「おっ、本当だ。でも、人が多くて見えにくいなぁ~」

人と人の隙間から、見えたものは、

2-C

1番 相川 愁




23番 萩原 鏡

24番 長谷川 奈留





「奈留、同じクラスで2-C組。番号は、僕が23番で、奈留が24番だって。」

「本当!!やった~、鏡と一緒だあ~。それじゃ、一年間よろしくね♪」

「よろしくね。一年間、楽しく過ごせそう。」

「それじゃ、新しい教室に行こう!」

「そんなに、急がなくても、教室は逃げないよ。」

「いいから、早く早くぅ~♪」

いつも以上に、ハイテンションな奈留を見ながら、僕も期待に胸を膨らませて自分達の教室へと向かいます。桜の舞い踊る校舎で、僕達は新しいステージへ進んでいきます。

校舎は、四階まであり、一階には、職員室、体育館、食堂があります。

二階には、一年生の教室が、A組~E組までの五個の教室があり、それぞれ、三階には二年生の、四階には三年生の教室があり、その上には屋上があります。

その他、多くの教室がありますが、これらが、主な教室です。

三階にある2-C組の教室に入ると、かなり静かになっていました。

そんな中、盛り上がっている人が一人。

「おぉ~い、みんなたくさん話そうぜ。たくさん話して、コミュニケーション取ろうぜぇ~」

僕は、彼を知っている。

小学校の頃、よく遊んでいた親友だ。

一年生の頃は、クラスが違ったため、あまり遊ぶ機会がなかった。

彼は、僕と目が合うと、

「鏡じゃねぇか、久しぶりだなぁ~。元気してたか?」

「去年も、いたけどね。」

「でも、こうやって面と向かってはなすのは、4年ぶりくらいだろう?」

彼の名前は、八木翔鵺。

僕は、昔から彼のことをショウと呼んでいる。

「確かに、奈留と仲良くしてた?同じクラスだったみたいだけど。」

「よく会話は、してたわ。」

「後、勉強も教えて貰ったこともあったなぁ~」

「あの時は、大変だったわぁ~。教えても教えても分からなかったものねぇ~」

「それは、お前の教え方が下手だったからな。」

「失礼な!あなたが、聞き流してただけでしょ。」

「人のせいかよ。」

「まぁまぁ、落ち着いて二人とも。」

「あっ、すまん。」

「こっちも、熱くなっちゃってゴメンね。」「さぁさぁ、すぐに先生、来るだろうから、座って待ってようよ。」

僕達が席に着くと先生がやってきた。

「みんな~、席着いて~、今から出席をとりま~す。」

ずいぶんとのんびりした口調の人が出席をとります。

出席をとり終わると、今日の連絡事項を一通り終わると一時間目が始まりました。

一時間目は、LHRなので、担当は担任です。

「一時間目を始めますよ~。今日は、初めて顔を合わせる人もいると思うので、自己紹介をしたいと思いま~す。」

まぁ、確かにそうなるよね。

「まずは、先生から。はじめまして、私は今年から担任になった、田阪 洋子と言います。よろしくお願いしますね。」

「「「「よろしくお願いしま~す。」」」」

「皆さん、元気ですねぇ~。それじゃ、先生も顔と名前を覚えたいので、廊下側から自己紹介をお願いしますね。」

(この人、ゆっくりとした口調をしてるのに、しっかりと生徒達をまとめることができるんだな)

あっという間に、自己紹介を終えて、次に進みます。

僕の自己紹介は、普通ですよ。

ショウは、ユーモアのある自己紹介。

奈留は、元気ハツラツの自己紹介。

この二人の時は、かなり盛り上がりだった。

ショウは、女子達から「キャーーー!!」という声。

奈留は、「キャーー!!」だの「うぉーー!!」だの言われいた。

この二人は、カッコイイし、可愛いから。

「それでは、今から席替えをします。名簿順にこの箱から、紙を取ってください。くじは、一斉に開けるので、まだ見ないで下さいね。」

僕が、引き当てたのは、窓際の一番後ろ。

しかも、あまりの席、つまり、右と後ろに誰もいない。

でも、前には奈留、右斜め前には、ショウがいる。

知り合いが、近くにいてよかった。

「これで、席が決まりましたね。それでは、一日頑張りましょう~。」

授業は、ほとんど全て自己紹介で終わりました。

奈留とショウの番になるとうるさくなるため、

「あ~う~、耳が痛いよぅ~。」

二人上げられる歓声をもろに浴びてしまう、故にこのように耳が痛くなる。

僕は、今屋上にきてお弁当を食べている。

ショウと奈留は、学食へ行った。

僕は、植物が風になびく音を聞きながら、耳に癒しを与えます。

「そういえば、少し曇ってきたな、風も強くなってきたし。」

(僕は、これくらいのほうがいいなぁ~)

「さぁ~、そろそろお昼休みも終わりだ」

食べ終わったお弁当を片付け、屋上を出ました。


放課後。

(サー-----)

雨は、思っていた通りだったけど。

(ヒューーー-ン、ガタガタッ)

風が、窓をならすほど、強くなっていた。

「これじゃ、傘を持っていると危ないなぁ~」

奈留は、筋トレがあるらしいから、部活へ行った。

「ビーナが、心配だ。早く帰ろう。」

風は、いっこうに止まないままで、雨が、少しずつ強くなっている気がする。

僕は、神社に行くとすぐにビーナをすぐに探し始めました。

「にゃ~・・・・。」

ビーナは、すぐに見つかりましたが、どうやら風が強くて、雨をもろに浴びていたためか、体が冷たくなっていました。

「大丈夫か!?すぐに、あっためて上げるからな!!」

僕は、すぐに家に帰りました。

家に着くと、すぐにあっためて上げました。

「にゃ~~~~。」

ビーナは、10分くらいあたためて上げるとすぐに元気になりました。

「へくちっ!!ビーナの事で、必死になっていたけど、僕、びしょびしょだよ。バスタオルで濡れた髪を拭いて、お風呂沸かさないと。」

僕は、タオルで頭を拭きながら、お風呂場を開けます。

(ガラガラガラッ)

「あっ、鏡。勝手にお風呂沸かして、入っちゃったけど、よかったかな?」

「あ・・えぇ~と、べ、別にいいけど。」

「?どうしたの?顔がタコみたいに真っ赤だよ?もしかして、この雨と風で風邪引いた!?」

奈留は、そのままの格好で、近づいてきた。

そう、一糸纏わぬ姿で。

「だ、だだだ大丈夫だから!!!気にしないで、じゃ、失礼しましたーーーー!!!!!」

「ちょ、ちょっとどうしたのよ!!鏡~~。」「う~ん、どうしちゃったんだろ。鏡。んっ?あぁ~、これか。」


「ハァッ・・ハァッ・・。初めて・・だな・・階段を全力で登ったの。」

自分の部屋へ逃げ込んでしまった、理由は、見てしまったからだ。

奈留の裸をはっきりと。

(それにしても、奈留の肌、真っ白だったなぁ~。はっ、考えちゃだめだ考えちゃ。)

頭から追い出そうとしてみますが、

(頭から、離れないよおぉぉぉぉ~~~~~!!!!!!)

顔が、まだ熱い。

(うわああぁぁぁ!!!冷静になれ、僕!!冷静になれ、冷静に!!!)

「くしゅん!!」

(ふうぅ~、やっと落ち着いた。そういえば、なんで風呂場に行ったんだっけ?確か・・雨で体が冷えてたから。)

そこまで、考えて。

「って、寒~~~!!早く、あたためないと本当に風邪引いちゃうよ。」

僕は、お風呂道具を一式持って、急いでお風呂に入りました。

僕は、身体を洗い、髪を洗った後に、湯舟につかりました。

「ふうぅ~、生き返るぅ~。」

冷えた身体に、染み渡って気持ちいい。

(ガラガラッ)

「ん~~?」

「鏡。ビーナに汚れがついてたから、洗ってもいい?」

「別に、いいぞぅ~。いつの間に、仲良くなったんだ奈留?」

「鏡が、マタタビエキスを私にかけてから懐いちゃった。」

「そうか、ならよかった。」

(ん?奈留?鏡?)

声のするほうをすると、ビーナを抱いている奈留がいた。

笑顔で。

「ちょちょちょ、ちょっと!!なんで、入ってきてんの!?」

「だって、ビーナちゃんが汚れてたから。」

「そういう意味、じゃなくて!!」

「だって、猫洗えるのここしかないし。それに、鏡も私の裸見たでしょ?だから、これでおあいこ。」

「な、なな、何を言ってるのかな?何も見てないよ。」

「嘘。目が泳いでるよ。」

「ぐっ・・。すいませんでした。」

「分かった?なら、洗ってもいいよね。」

「は・・はい、お好きにどうぞ。」

「ありがとうね。・・・別に鏡に見られてもいいんだけどね。」

「ん?なんか言ったか?」

「えっ!?べ、別に何も言ってないよ!!」

「そうか、ならいいけど。」

(少し経てば、奈留も出ていくだろう。)

「よし、これで終わりっと」

ビーナを洗い終えたのか、バスタオルで拭いてあげていた。

(よし、これで奈留も出ていくだろう。)

ビーナと一緒に出て・・・・行かなかった。

「あのぉ~、奈留さんやぁ~、ビーナは洗い終えたんじゃ・・」

「うん、洗ったよ。」

「じゃあ、どうして?」

「誰も、ビーナちゃんを洗ったら、出ていくとは言ってないけど?それに、私、『ビーナちゃんを洗ってもいい?』じゃなく、『洗ってもいい?』って聞いたんだよ?」

「それは、つまり・・・・。」

「つまり、鏡ちゃんも洗って上げますよぉ~。ふっふっふっ。」

「身体はもう洗っ「私の裸を見たこと、忘れてないよね」すいませんでした。思う存分、わたくしめを洗って下さい。」

アニメとかで、ラッキースケベってあるけど、実際にあると怖いね。

これからは、ちゃんとノックをしよう。

ノックは、人類最大の発明だね。うん。

さすがに、タオルは腰に巻こう。

奈留は、少し納得のいかない顔をしていたが、諦めてくれたようだ

「私が、こうやって背中洗うの何年ぶりかな。」

「う~んと、小学校以来だったかな。あの時は、よく一緒に入ってたっけ。」

「うん。それにしても、鏡。身体つきも、肌も女の子みたいだね。」

(グサッ)

「ぐはっ」

「どうしたの、鏡。もしかして痛かった?」

「い、いや。別になんともないよ。」

「そう?でも、心は男らしくなったよね。小学校の時は、いつも私が一緒にいて、守ってあげてたのに、泣き虫な鏡を。」

「確かに、あの時は守られてばっかりだったっけ?」

「うん。いつも私に助けを求めてきてたよ。」

「昔は、迷惑かけてばかりだったけど。今は大丈夫!!だから、次は、僕が奈留を守るよ。」

「じゃあ、お願いしようかな?ずっと。」

「当たりだよ。任せておきなさい。」

「ふふっ。じゃ、流すよ。」

「分かった。ありがとうね。」

僕の身体を流すと、奈留は「じゃあ、少しあったまってから出てきてね♪」と、上機嫌で出ていきました。

僕はというと、

「・・・」

(僕は、何を恥ずかしいことを言ってるんだああぁぁぁ!!!)

顔が赤いのは、きっとお風呂のせいだ。

そういうことにしておこう。


(パタン)

「ふうぅ・・・」

(私は、何大胆なことしているのよおぉぉぉ~。)

そう。私はただ、鏡が男としてどのくらい成長したか、確かめったかっただけなんだから。

(見た目は、あまり変わってなかった、うん。だから、私がいつまでも守ってあげるつもりだった。で、でも、な、な、中身はずっと変わっていた。だから、守って欲しいと思った。ずっと。永遠に。鏡は、気付いてないと思うけど、私、こ、こ、告白みたいなことしちゃったよ!!)

この鼓動の早さと顔の熱さは、きっとお風呂の蒸気のせいだ。

そういうことにしておこう。

僕達二人は、何事もなかったかのように、いつもみたいな時を過ごしている。

みたいなというのは、例外が二つあるからだ。

一つ目は、今日はビーナがいること。

二つ目は、雨と風が強いこと。

つまり、天気が悪いということ。

天気予報では、この地域一帯だけが、台風みたいな天気らしい。

どういうことかね?

まぁ、特にすることがないので、居間の机も綺麗に、食器の汚れを隅々まで落としてみます。

時間が余ります。

「いい子ですねぇ~、ビーナちゃん。可愛いなぁ~」

「奈留~、今日の夜、麻婆豆腐食べたいって言ってたでしょ。」

「言ってたねぇ~。」

「ゴメン。今日は、作れない。材料ないから。」

「仕方ないでしょ。この天気じゃ、買いに行けないし。」

「今日は、あるものでしか作れないから、オムライスでもいい?」

「なんでもいいよ~、鏡の料理はおいしいし。」

「いつもより、早いけど。ご飯作ろうかな?」

「ビーナのご飯はどうすんの?」

「それなら、テレビの後ろに猫缶があるよ。飲み物は、猫用のミルクを飲ませないといけないから。」

「テレビの後ろ?う~ん、あ、あったあった。それで、猫缶ってどれくらいあげるの?」

「ビーナくらいなら、缶の四分の一あげればいいよ。」

「ふ~ん。手じゃ開けられないよね。鏡、缶を開くやつは?」

「それ、手で開けれるよ。丸いやつない?」

「ないよ~。」

「じゃあ、裏側は?」

「裏側?あ、あった。これか、よしいくぞ~」

(カコン)

「はい、ビーナようのお皿。」

「ども、ども。」

「猫用ミルクは?」

「ええと。これ?」

「そうそう。それを、この皿に入れて、ぬるま湯を入れて飲ませるの。」

(サラサラサラ、コポポ。)

「ありがとう。」

「奈留も、飯食べる準備しててね。」

「分かった。」

いつもは、7時くらいに食べているが、今日は、両方とも早く帰って来たため、いつもより、一時間早く食べます。

「よし、出来たよ。ケチャップは、自分で好きな量をかけて食べてね。」

「ふふふっ、こうやってると新婚さんみたいだね。」

「立場、逆だけどね。」

「でも、そういう家庭、増えてきているみたいだね。女性が仕事をして、男性が家事をやるっていう。」

「家庭もそれぞれだし、仕事も共働き、家事も一緒にって家もあるみたいだけどね。」

「その家庭、すごいね。」

『さきほど、最新の天気予報が分かりました。ある一部の地域の上空に大きな雨雲が出現しました。今日の夜から、明日の朝まで、雷雨を伴う、天気になるでしょう。』

「か、か、雷!?」

『落雷によって、停電になるかもしれません。』

「て、て、停電!?」

「ん?どうしたの?」

「えっ、いや別に。」

「怖いの?」

「そ、そんなわけないじゃない、全っ然、平気なんだからね。」

「震えてるように、見えるのは、僕の気のせい?」

「ふ、震えてわけないじゃない。これは、家に帰ったら、ゲームで敵を倒すかシミュレーションしていて、それに対する武者震いよ。」

「で、本音は?」

「かなり怖いので、誰か助けてくれないかなぁ~って。はっ。」「大丈夫だって、家に落ちるわけじゃないし。」

「じ、自分に、お、落ちるかもしれないじゃない。」

「いや。それは確立的にもっとありえないと思う。」

「そ、それはそうかもしれないけど、万が一、億が一、自分に落ちるかもしれないと思うと、怖くて怖くて。」

「なんで、そんなネガティブな考えなの。」

僕も奈留も、ご飯を食べ終わっていたので、僕達は片付けました。


(キキー、キリキリキリキリ、ドーン)

「あっ、母さんからだ。」

「ホント、おかしな着信音だねぇ~」

「あっ、これ、僕が実際に聞いた音だ。」

「なんで、事故に巻き込まれてんですかあなたは!!」

「?何、言ってるの?これ、ゲームだよこれ。」

「なんとも、紛らわしい言い方してんですか。」

「そのキャラって、僕が変な着信音を鳴らすたびになるの?」

「仕方ないじゃない、何故かこうなっちゃうんだから。」

電話は、この天気のことだった。

「鏡のお母さんは、何かあると心配して電話をしてきてくれるの?」

「奈留のお母さんは、そういうことしないの?」

「心配はしてくれるんだけど、あの人内気だから。」

(ピカッ、ドォーンゴロゴロゴロ)

「キャーーーーー!!!」

(ガッシッッッ)

「ちょ、ちょっと。奈留!!!」

「やっぱり無理!!怖いものは怖いのよ。」

体と体を密着させてくる奈留は、尋常じゃないほど震えていた。

(ピカッ、ドォーンゴロゴロゴロ、・・・フォン)

停電だ。

停電になった。

奈留の体は、さっきより何倍も震えていた、怖さのあまり声を出せなくなっていて、僕に抱きつく強さは、かなり強くなっていた。

「痛い痛い痛い、痛いよ奈留。」

「あっ、ゴメン。つい、我を忘れちゃって。」

「どうして、そんなに怖がるの?」

「ずっと前にね。そういう夢をね。見たね。最初は、回りにたくさんの人がいたんだけど、雷で停電になるとみんなが私から離れていくのみんな、『お母さんが来てくれるでしょ』って。でも、お母さんが迎えにきてくれなかったの。私は、雨と雷がなっている暗い場所で一人ぼっち、寂しくて悲しくて寒くて暗い場所で一人ぼっち、夢だって分かっているんだけど。なんだか、とてもリアルで。」

「へぇ~、そんな夢を見たの?」

「鏡と仲良くなる前だったから、小学二年生くらいの夢だったの。でも、この夢は一回だけじゃなかったの。」

「また、見たの?」

「うん。これは、小学四年生くらいの時の夢、鏡と仲良くなってからみた夢、二年生で見た夢が長くなったの。」

「それは、また。」

「ううん、これはいい夢だった。一人ぼっちになった所までは同じだったんだけど、次がよかった。急に明るい光が出てきて、そこから鏡が来て、「一緒に帰ろ。」って言って、私を引っ張っていってくれたんだよ。」

「すごいな、僕。」

「でも、その二年後はいやだった、鏡は出てきて、また引っ張ってくれたんだけど、私、途中で転んだの。起き上がると鏡もいなくなってて、また一人ぼっち。それに、その夢を見た次の日に鏡が引っ越すことを聞いたから。」

「タイミング、悪いなぁ~、その夢。」

「中学入ってからも、何度もその夢を見たの。それは、一人ぼっちのまま。」

「それを、何度も見たのか?確かに、きついな。」

「怖い話を聞いたときは、その話になったり、楽しい話を聞いたときはその逆の話になったり。」

「よく、今まで怖がらずにいれたね。」

「少し怖いんだけどね。」

「じゃあ、なんで今日はそんなに怖がるの?」

「だって、今日は鏡がいる。もし、手を離してしまえば、またいなくなってしまうかもしれない。夢では、全部こんなシチュエーションだから、怖さ倍増しちゃうんだよ。」

「でも、それは夢でしょ?」

「夢だよ!夢だけど!!一回、本当にいなくなったじゃん。それに、昨日の夢でもいなくなったから。」

「大丈夫だって、引っ越したりしないから。」

「違うの。昨日、見た夢は私の目の前で、き、鏡が私の変わりに殺させる夢を見たの。だから、夢なんだけど、怖くて怖くて。」

「大丈夫だって!!だって、僕はこんなにピンピンしてるから、夢だから夢!!!!」

(・・・ピカッ)

「ほら、電気ついた。だから大丈夫だよ。」

「あっ、ホントだ。よかったぁ~。」

「何も無かったじゃん。だから、安心して。」

「うん、分かった。でも、怖いから、今日この家に泊まってもいい?」

「あっ、やっぱり?そうなるだろうと思ってた。」

「そして、怖いから鏡と寝る。」

「な、なな、何言ってるの!!!それは、さすがにねぇ~。」

「私をずっと守ってくれるんじゃないの?こんな怖がっている、女の子を一人にするの?」

「分かった、分かったから。そんな、捨てられた子犬みたい目、しないでよ。」

「ホント!!やったぁ~。これで、今日はいい夢を見れるよ。」

あの夢を話しているときとは、一転してハイテンションな奈留に戻った。

(奈留のあんな悲しい顔、初めて見たな。)

僕は、あの夢を話ている時の、顔を思い出していました。

(奈留には、寂しい思いをさせてしまったから、今度は、奈留を楽しませるようにしよう。)

いつもの奈留に戻ってくれてよかった。

僕の知ってる奈留は、いつも笑顔でみんなを笑顔にさせることができる、僕の可愛い幼なじみだ。


僕は、夜中に目が覚めた。

どうやら、誰かに起こされたらしい。

(奈留?)

いや。

奈留は、心地良さそうに寝息を立てて、眠っている。

(なーんだ、気のせいか。)

再び、眠りにつこうとしたら、

(ペロペロペロ)

誰かが、僕の頬を舐めている。

(ビーナか?)

いや、違う。

これは、猫の舌じゃない。

しっかりとした、人間の舌だ。

(もしや、変態か!?)

いや、違う。

戸締まりをちゃんとしたはず、何度も確認したから。

(じゃあ、誰だ?)

今も、なお舐め続けられている方向を見て、重いまぶたを開いていきます。

ビーナがいた所が膨らんでいます。

更に目を開けると、黒くて長いストレートの髪が目に入りました。

(日本人形?もしかして、日本人形の呪いか!?)

慌てて目を開けると、

「起きた?・・・・鏡。」

肌は雪のように白く、自分の背丈ほど長い髪をした、黒髪の女の子がいました。

「?・・・・私に何かついてる?」

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