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伝説の勇者にはなりたくねぇ!  作者: のな
トリップ編
7/61

Lv.7 イベントクリア1

「この世界適当すぎだろ」


 思わずぼやいてしまうのは仕方がないと思う。

 右手の甲に浮かんだ蔦模様を見つめ、はぁと深くため息を吐くと、その手にポンと小さな手が乗った。


「お揃いね、マスター」


 額の模様を指さしにこにこ微笑むのは愛らしい6歳くらいの少女だ。

 一人じゃなくなったことが嬉しくて仕方がないらしいが、俺としてはもう少し育ってくれている女性の方が…と思うのは男として当たり前だよなっ。


 まぁ、とりあえず問題が一つ片付いたのだから…と、いかん。そういえばまだ片付いて無かった。


「えぇと、名前はなんだっけ?」


「お好きなようにお呼びくださいマスター」


 むず痒いっ。

 小説には確かにマスターと呼んで主を慕うキャラがいるけれど、実際言われるとむず痒いっ。

 

 微妙な羞恥に悶えながらも俺は彼女の名を考え、ふと頭に浮かび上がった文字をそのまま口にした。


「ロマ」


『認識いたしました』


 彼女の口から再びマシンボイスのようなものが響いた。

 まさか、精霊って機械仕掛けじゃないよな?


 じろじろ見ていると、小さな少女はぽっと頬を赤らめる。

 いや…そんな恥じらわれても俺が困るんだが。


 と、とにかくっ! 彼女の名はロマに決定したようだ。

 今いる場所からちらっと森の茂みの方へ目を向ければ、ずっとこちらの様子をうかがう村の男達の姿がある。

 

 どう見ても今の俺よりガタイもいいし、強面で強そうなのに、俺みたいなもやしとこんな幼い少女を遠巻きに見てるってどうよ…。

 まぁ、大事なものを獲られた恐怖はトラウマになるかもだが。


「ロマ、あそこにいる男達と村の女性達の呪いを解いてくれないか?」


 ロマは森の茂みに隠れる男達に目をやり、男達から「ひっ」と小さな悲鳴が上がる。

 男達を眺めたロマは、その中の一人、目力が半端ないニドス村村長ゴメスと目を合わせると、むぅっと唇を突出して頬を膨らませた。


「あの男嫌いです。一度呪いを解けと説得に来て私を押し倒したのですもの。だから大事なものを奪ってやったのですけど」


「「なにっ?」」


 俺を含めた男達の視線がゴメスに集中し、彼は静かに首を横に振る。

 だってあんた、俺に第三者が出るとこじらせるから本人を生かせたみたいなこと言ってたよな。そんで男達まで呪われたとかなんとか言ってたよな?


「あれは事故だ。逃げようとしたので捕まえようとしたら木の根に足をとられて転び、その子供の上にのしかかってしまっただけなのだ」


 さすがは村長。これだけ男達に軽蔑と不審の視線を浴びせられても冷静に答えたよ。



 じぃっとゴメスを見つめていると、彼の額にぶわっと汗が浮かび上がるのを見てしまった。

 内心かなり動揺しているようだ…。


「…まぁ、事故ということにして、許してやれよ」


 そうじゃないとあらぬ疑いがゴメスに降りかかるし、もう終わったことだし、と大人の事情を組んで俺はロマに言う。

 

 ロマはぶちぶちと文句を告げてふてくされる。そんな姿は年相応だ。 


「マスターの仰せのままにぃ~」


 ぱちっとロマが両手を合わせると、緑色の靄が男達を包み、体の中に吸収されていった。


「お…おぉ! 見ろ!」


 体の変化に感動した男の一人が感極まってズボンをずりっと下げたため、傍にいたメルニア婆さんの目がつりあがり、彼女の持つ杖が男の頭めがけて吹っ飛んだ。


 パカァン!


 乾いた木の小気味良い音がして男の後頭部にヒットした杖はからからと音を立てて地面に転がり、男は半ケツをさらして気絶したのだった。


 感極まるのもわかるが、時と場所とここにいるメンバーを考えた方がいいだろうに… 

 恥ずかしい男は、俺が連れてこられた時に乗っていた棺に詰められ、俺達はとりあえず村に戻ることとなった。


___________________



「俺の名前はアキな。アキで呼んでくれ」


 村に着くまでに精霊ロマに言って聞かせ、何とかマスター呼びを回避できた俺は、村に辿り着いて目を大きく見開いた。


 な、な、なんじゃこれは~!


「「おかえりなさ~いっ」」


 そう言って出迎えたのは揺れる乳が過激な美女軍団だ。

 こんな美女セクシィー軍団、俺が来た時にはいなかったぞ!


 遂に勇者らしい出迎え到来かっ…と思えば

 美女達は俺の横をすり抜け、村の男達に飛びつくと、目の前でキスの嵐。

 

 ・・・・彼女達は間違いなく俺が村に来たときに見た老婆達だ。


 村長ゴメスが自分に飛びついてきた細越しの幼な妻をこれでもかと強く抱きしめてキスの猛攻撃だからな…。

 羨ましいぜチクショウ…。


「残念じゃのぅ。この村の女集はほとんど売れてしまっておって、そなたに迫ってくれるものがおらんわい」


 メルニア婆さんが俺を憐れみ、それを聞いたロマがギュッと俺に抱き着いてくる。


「私が慰めてあげるわ。大丈夫、それなりに習っているのよ」


「何をだっ! う・・うおっ、どこ触って…婆さん! にやけてないで止めろっ!」


 俺は美女じゃなく、老婆と幼女に囲まれ、嬉しくない悲鳴を上げたのだった。



 

 






 ピロリロリ~ンッ


 勇者はニドス村を救った


 優しさが上がった 俊敏が上がった 気力・体力が上がった

 幼女好きが加えられた


 

 どこかでそんな音が聞こえたような気がした・・・・。 


 

 



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