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伝説の勇者にはなりたくねぇ!  作者: のな
トリップ編
6/61

Lv.6 契約

「俺は無関係!」

 

 必死の叫びに精霊は手をピタリと止め…たりはしなかった。


「無関係だって言ってんだろうがー!」


 いざとなれば俺だってやる。

 ぐっと精霊の腕を掴み、イメージしたのは捕縛のイメージだ。


「獲られてたまるかー!」


 会心の一撃ってのはこういうものを言うのだろうか?

 焦りと恐怖とイメージと魔法が繋がり、シュルリと音を立てて太い縄が精霊を雁字搦(がんじがら)めに縛り上げていく。

 

「きゃあっ、何よこれ!」


 緑色の幽霊のような女が縄によって締め上げられ、その姿をはっきりと現すと、周りの男たちはおぉっとどよめきの声を上げた。


 なんだこれ…


 ゼイゼイと息を乱しつつ精霊を見下ろし、俺は思わず背後にいた原因の男へジト目を向ける。

 なぜならば、縛られて姿をはっきりと表した精霊の女は、声や話し方とは裏腹に、とても幼い少女、それも幼女と言えるくらいの6歳くらいの姿だったからだ。


「幼女に…」


 ポツリと漏らせば、原因の男がブンブンと首を横に振る。


「手は出してませんっ! 彼女が幼いので振ったんです!」


「私は振られてなどいないわー!」


 見た目が6歳くらいのゴスロリ服に身を包んだ緑髪と瞳の幼女は、フーッと毛を逆なでる猫のように怒りながら男達を睨みつけた。


 つまり、彼女を振ったのは痴情のもつれ云々からなどではなく、彼女が幼かったから?


「えぇと、君は何歳?」


 異世界なのだからこんな姿でも実は人間よりもずっと年上ということはあり得る。何しろ精霊っていうぐらいだからな。


 彼女はギンッと鋭い目を俺に向ける。

 これじゃあ可愛い顔が台無しだよ。


「私は6歳よ!」


 そうだよなー、話し方が若干大人染みてるけどやっぱり見た目通り…


「青少年保護法に引っかかるわ!」


 児童福祉法だったか? なんにせよ法律違反だ!


「なにそれ?」


 俺が力んで叫んだことで幼女はきょとんと年相応の表情を浮かべて説明を求めてきた。


 改めて言われて俺は気がついた。

 異世界にそんな法律あるものなのか?


 だらだらと冷や汗が流れだす。

 どう説明したものだろう。俺の中では幼女、少女、とにかく18歳未満に手出しするのは変態と犯罪者となっているわけだが、この世界の常識を俺はまだ知らないわけで、俺の中の常識を適当に教えたら…


 後が怖い…。


 チラリと男達を見ると、男達は青少年保護法について話し合っていた。

 

 誰か助けろよ!


「ねぇ、ひょっとして人間は6歳が成人ではないの?」


 困り果てる俺に幼女が助け船を自らそうと気づかずに出してくれ、おれはほっと安堵しながら頷く。


「人間の成人は18歳だ。だから、まだまだ若い君と付き合うわけにいかないんだよ」


 途端にしゅんとした様子を見せたので、俺は縄のイメージを解いてやった。

 縄で幼女を縛るなんて虐待に引っかかりそうで怖いからな。


「18歳…」


 森の茂みに隠れる男達が遅いだのなんだの言っているがもう知ったことか。この世界の常識を教えられていないんだから成人が何歳かなんて知らんっ。被害が無くなるなら18歳にしたって別にかまわんだろうっ。


「人間を夫にできれば、もう一人にならなくて済むと思ったのに。そんなに待たなくちゃいけないなんて…」


 彼女はそう呟くとしくしくと泣き始め、俺は大いに焦る。


「ちょっ、まてっ、俺か? 俺が悪いのか?」


 幼女を泣かしたなんて知られたらすぐ下の弟に殴り倒される!

 て、ここは異世界だからそんなことは起きないか…


 自己突っ込みしてずぅぅぅんっと打ちひしがれると、泣いた幼女が俺のズボンをクイクイと引っ張り、愛らしい顔を上げて尋ねた。


「ねぇ、どうしたら一人ぼっちじゃなくなるの?」


 どうやら彼女は寂しかったらしい。


 話を聞けば、少女は成人してすぐに精霊の村を出されたのだそうだ。それに関しては別におかしなところはなく、当たり前のことらしいのだが、彼女自身がホームシックに掛かり、寂しさから誰かを夫にすることを考えついたらしい。


「精霊なら誰かと契約とか、そういうこと出来るんじゃないのか?」


 第2案として冒険者についていくとか、そんなことを提案してみる。


「マスターになれそうな力ある人間なんてそうそういない…も…の」


 少女は俺を見てぴたりと泣き止んだ。

 外野が子供を泣かすなーっとか勝手なことを言っているが知るかっ。

 

 俺は今、何かしらのピンチに立たされていると思うんだが…?


 少女はがばっと抱っこ人形のように俺の腹に飛びつくと、そのままぎゅうぎゅうとあらん力で締め付けてくる。


「ぐふっ」

 

 み、身が出るっっ


「あなたが私のマスターになって!」


「シャカシャカアケートじゃ」


「それは俺の名前じゃねぇ! てか、婆さんいたのかっっ」


 全く姿が見えなかったのに俺のピンチに現れるとはっ。

 助けてくれるならまだしも、悪化させてくけどな。


『契約完了いたします。シャカシャカアケート様、マイマスターに認証されました』


 マシンボイスのような声が聞こえたかと思うと、緑の幼女の額と俺の手の甲に草の蔓のような模様が浮かび上がった。


「森の精霊と契約完了じゃ。さすがは伝説の勇者殿」


 かっかっかっと笑う婆さんはこの際置いといて、俺は手の甲の模様を見てガクリと項垂れた。


 


 シャカシャカアケートで認証されたという事実が俺を打ちのめした瞬間だった・・・・

 

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