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Lv.49 魔王戦開幕!

「この国には命知らずの芸者がいたのか・・?」


 転んだ俺はむっくりと起き上がり、その言葉にすかさず突っ込んだ。


「コント集団じゃないからな!」


 告げたものの、相手は胡乱な表情だ!

 絶対これは疑っている…。

 しかし、普通に考えてコント集団がこんな凄惨な場所に来たらおかしいと思うんだが…。


 凄惨…


 俺はつい周りを見回してしまい、うっとこみ上げるものを堪えた。

 見ない見ない。あれは人形。マネキン、マネキン。


 暗示をかけ、胸を押さえながらもう一度正面を向き、玉座に気だるげに座る男と目を合わす。

 

 見た目は綺麗な顔立ちをした大人になり切れていない年頃の青年だ。

 髪は灰色。瞳は赤。耳がとがっているから人間じゃない。

 玉座にふんぞり返っているし、態度からして魔王なのではないかと思うのだが・・・。

 俺は奴が着る服をまじまじと見つめた。


 デザインは良い。魔王らしいマントにファンタジーな軍服のようなものを身に着けている。

 しかし・・・

 

 なぜ色が全身蛍光イエロー…?


「えぇと、魔王、なのか?」


 思わず確認をとると、彼は軽く首を傾げてこちらを見た。


「他に何に見える」


 ・・・・お笑い芸人・・・


 いやっ、そんなことを言ったらその瞬間に襲われそうなのでだまっておこうっ。

 だが・・・だが!


「何故その色の服を着てるんだっ!」


 突込みの血が黙っているのを許せなかったようだ…


 実は魔王の性格ははっちゃけてるとかそういうアピールかっっ?


「色? あぁ、先代の奴がこの色の方が似合うと言っていてな。どうせ服にこだわりはないので着ている」


 それ、絶対先代魔王にからかわれてるだけだと思うんだが…。

 魔王って実はおちゃめか? それとも魔族がおちゃめの集団なのか?


 チラリと周りを取り囲む魔族…だろう人型の、耳がとがった男達を胡乱な目で見やると、自分達は関係ないとばかりに全力で首を横に振った。

 どっちがコント軍団なんだか…。


 この魔王軍団に脅えていた自分がちょっと恥ずかしい・・・。

 かといって、互角に戦えるかは謎だけどな。


「少しは楽しめるのだろうな、コント集団」


「コント集団に位置付けるな!」


 後ろの冒険者達が「そうだそうだー」と同意する。しかし、その中に「そいつらと一緒にすんなー」という聞き捨てならぬ台詞があったのは気のせいか!?

 

 とにかく! 遂に魔王戦突入である。


 ギルドの冒険者と魔族。魔王と俺達パーティーで睨みあい、初めにギルドの…中身は相変わらず誰かわからんが、タヌキが飛び出した。

 それを皮切りに、両者がぶつかり合う。


 俺達が睨みあう魔王はと言えば、その手を横に払い、その仕草だけで床から魔物を呼び出した。


 見た目はかなり目に痛い服装をした男だが、魔王の名は伊達じゃないらしい。 

 魔物を呼び出すとは厄介なっ!


 次々と湧き出る敵に俺、グウェン、ゴルベーザがそれぞれ攻撃を仕掛けるが、これではただの消耗戦である。


「雑魚は任せて!」


 叫ぶなり、本日ノリノリなロマコグマがぶんっと音を響かせ、ハンマーを振るって飛び出した。


「無茶はするなロマ!」


「大丈夫よっ」


 ロマは叫ぶとハンマーを振り回し始める。

 ぐるんぐるんとその場で回転をかけ始めると、さすがに敵がほんの少し怯み、ロマコグマはそのまま彼等を追いかけた。


 おぉっ、高速回転ハンマーで敵をなぎ倒すのかっ!


 …と思いきや、その勢いのままハンマーの方をどかんっと床にまっすぐに立て・・・


「邪魔させないわ!」


 ハンマーをポール代わりに、回転をかけて周りの敵を蹴散らした。

 文字通り、蹴って蹴散らしたわけだ…


 が!


「ハンマーの意味はどこ行った!」


 その凶悪そうなハンマーの棘は何の意味があるんだロマ!


 …相変わらず何か間違っている仲間達にガクリと項垂れる。


「よそ見するなよ、クマ」


 突然耳元で低い声が響き、俺は咄嗟に魔力で自分を覆った。

 気が付けば、目の前に魔王が迫り、その片手に持つ黒曜石のような物でできた剣で思い切り斬りつけられた。

 

 間一髪魔力シールドにより命はとられなかったが、そのまま吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。


「「「アキ!」」」


 3人の仲間が同時に声をかけ、俺は無事という代わりに手をひらひらと振った。

 衝撃はわずかにあったものの、何の問題もない。この着ぐるみのおかげだ。


 視線を魔王から外さずそのまま起き上がり、手首と足首をひねってストレッチすると、両の掌に魔力を乗せ、地面を蹴って間合いを詰めた。

  

 俺は素手に魔力を纏わりつかせ、攻撃と防御を繰り返した。

 

 いわば、俺のこの着ぐるみのクマの手が剣と盾の役目を担う。


「・・・楽しめそうだ」


 にやりと笑みを浮かべる魔王に、俺はチラリと視線を足元に向けた後、にやりと笑い返す。


「あんたを倒してすぐ終わるかもな」


 俺はそういうとほんの少し驚きを見せる魔王に掌底を繰り出し、足で床に転がる騎士の剣を叩くように踏みつけ、わずかに浮いた剣を蹴りあげて空中でキャッチ、そのまま魔王の振り下ろした剣を受け止めた。


「人間ごときが調子に乗るなよ」


「人間なめんなよ」


 言われれば返すと言った感じで俺は魔王と睨みあうと、互いに剣をはじいて間合いを取った。


________________


 

 アキと魔王が戦い始めた丁度その頃


「あ~、まずいクマねぇ…」


 元伝説の勇者の残りかすであるクマが、半壊した城を見上げてポリポリと頭を掻く。


「任せるがよいぞ! このわしが来たからには冒険者もアキも大船に乗せてやるわい!」


 クマの背中に負ぶわれているのは鹿の着ぐるみを着たメルニア婆さんだ。

 結局、ゴルベーザから離れた後、少し無茶をしてぎっくり腰が悪化し、蹲っている所を通りすがりのクマに拾われたのである。


「・・・やっぱり召還するのクマか?」


 クマが尋ねると、メルニア婆さんがこっくりと頷き、クマはやれやれとため息をついた。


「じゃあ、協力するのもあと少しクマね…」


 メルニア婆さんは、ゆったりと歩き出すクマの後頭部をじっと見詰めながら、己の杖をぐっと握りしめた。


「時は、巻き戻っても変えれぬよ」


 ぽつりと呟くメルニア婆さんの意味深な言葉に、応える者はいなかった。


 




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