Lv.4 異世界怖ぇよ!
男にツライ残酷表現があります(?)ご注意くださいww
ゴメス(もうさん付けで呼ぶものかっ)の肩に担がれ、揺られ揺られて鳩尾が痛くなってきた頃、ようやく辿り着いた村は、村の周りを木の柵で囲った森の中の小さな村だった。
なんというか、ちょっとした…
「砦みたいだな」
地面に降ろされ、腹をさすりながら呟けば、それを耳にしたゴメスが頷く。
「砦だ。昔はこの辺りも戦地で、戦後に残されたこの砦を我々が使ったのが始まりだ」
「森にすむ戦士達の村じゃよ」
ただの狩人ではないらしい。ていうか、そんな強い人達なら、俺みたいなにわか勇者の力なんて必要ないと思うんだが?
ついて来いというのでとりあえず婆さんと二人、ゴメスの後ろをついて行くと、行く先々でゴメス同様筋骨隆々のマッチョに睨まれ、婆さんと同じようなちっさい婆さんたちに懇願されるような視線を向けられた。
と、そこで気が付いたんだが…。
異世界ひゃっほーというべき王道の美女達がいないが、どこ行ったよ?
不審者が来たから隠れてるのかね? それなら異様に多い村の婆さん達も隠れるべきだと思うんだが。
そんなことを思いながら通されたのはこの村の一般的な建物、丸太小屋の一つだ。他と違って少しだけ大きめなので村長であるゴメス宅であるのは間違いないだろう。
「帰ったぞ」
家の奥に声をかけた所を見ると、奥さんがいるのかもしれない。
異世界はじめての…まぁ、ゴメスが4~50代なので、それくらいの若さの、とにかく!婆さん以外(ここ大事!)との初体面だ!
「お帰りなさいっ。いまご飯ができた所よ。勇者様もお腹空いてるんじゃないかしら、食べて下さいなっ」
声は若いっ。これは期待できる!
ばっと顔を上げた俺の目に飛び込んできたのは、プラチナの長い髪と、輝くような青い瞳が美しい、すらりとした…いや、ちょっとばかり骨ばった…
老婆だった
・・・・・
がっくりと項垂れて俺は思わずその場に膝と両手をついてしまった…。
異世界、恐ろしいことに老婆が大人気…。
______________
て…そんなはずはなかった。
ゴメスの妻は現在32歳のぴちぴち幼な妻(?)らしい。もともと細いらしく、見た目がミイラのようだが、これは村全体が呪われているのであって、元からこんな姿ではないとのことだ。
当然俺はほっとした。
この世界の女性が全て見た目老婆ならどうよ!
そういうもんだと言われりゃそういうもんだが、若い女性を知ってる俺には無理だ! 恋愛云々に発展すると思えねぇ!
俺だって男だ、帰れないとわかった以上は異世界の女性達とむふふな生活をしてみたいと思うんだよ! それが、老婆ハーレムでもいいと思うやつがいるだろうか!?
どうだろう、日本の男達よ!
くっ、思わず熱くなったぜ…。
とにかく老婆ハーレムは回避されたんだから落ち着こう、俺。
さて、ゴメスたちが俺に助けてほしいというのはこの呪いについてらしい。
俺達は食事をしながら話を聞く。
「女達が呪われたのは1週間ほど前だ。呪ったのは森の奥に住む精霊の女で、どうやらこの村の男に振られた腹いせらしい」
「男女のもつれなら本人に解決させたらどうなんですか」
第三者が出たら絶対こじれると思うんだが。
「そう思い、向かわせたところ…さらに関係をこじらせてしまい、今や男達まで呪われる始末」
「…えぇと、どこが?」
見た目に老けたとかいうんだろうか? だが、老人になったようには見えない。
「老人にはなってないですよね?」
一応確認はとってみる。男の老人の姿は若く保たれるということなら見た目にはわからないからだ。
「我等は狩猟で生活をしている。年をとれば狩りができず皆が路頭に迷うのでそれだけは回避したのだが」
ゴメスは何の呪いを受けたのかはっきりさせようとしない。さきほどから言おうとしては口を閉ざすという動きを繰り返している。
「よほどの呪いを受けたようでの、アキを迎えに行く前に話を聞いたわしにもいまだ話してくれぬのじゃ」
巫女の婆さんが何の呪いかのうと首を傾げつつ杖をほんのり光らせている。呪いを探ろうと怪しげな魔法を発動させているのだろう。
「アキ殿」
何やら覚悟を決めたらしいゴメスが、俺を見て目をギラリと光らせる。
「な、なんですか」
村に着いた時に見た男達の視線と同じそのハンターのような目にたたじたじになった俺の腕を、ゴメスががしっと掴む。
「風呂に入ろう。この村には温泉が湧いている。そこで詳しい話をしようじゃないか」
裸の付き合いとかそういう意味だろうかっ?
「や、おれ、一緒に入るとかマジ無理なんで」
人が入った風呂は気持ち悪いとか、なんかそういう感情が浮かんでしまう現代人の潔癖症な俺は首を横に振ったが、ゴメスは問答無用で俺を担ぎ上げた。
またか!
今腹に入れたものが出てきそうな勢いで集団浴場である温泉に連れて行かれた俺は、潔癖症など吹き飛ぶような呪いの正体を見て悲鳴を上げることになった。
「な、ないいぃぃぃぃぃぃ~!」
集団浴場の温泉に集まっていたむくつけき男達の下半身には、男を象徴する大事なものがきれいさっぱりなかったのである。
せ、精霊の呪い恐るべし・・・。
俺は、呪いの正体を見たショックなのか、男共に囲まれたショックなのか、それとも、男の一人が湯をかぶった瞬間出た茶色いお湯を見たショックなのかは知らないが、とにかくいっぱいいっぱいで、俺の意識はそこでブラックアウトしたのだった…。