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Lv.39 旅立ち

「おはよう皆~」


 全員が食事も終えてのんびりお茶をしている頃、俺はダンディ姿でよたよたと食堂に入って行った。

 その姿…満身創痍といった感じだ。


「アキ!? どうしたの!? やつれてるわ!」


 驚いたロマが駆け寄り、癒しの魔法をかけてくれる。

 じんわりと暖かな力が流れ込み、俺はほっと息を吐いた。


 椅子に腰かけ、ぐったりとテーブルに突っ伏すと、食堂にある窓ガラスに映った俺をちらりと見やる。

 随分とやつれ、先日出会ったほぼHP1の勇者にどこか似ている。

 まぁ…それもそのはずだ。まさか奴から吸い上げた能力が、あんな…


「アキ? 一体何があったの?」


 優しく覗きこまれ、俺はもう一度大きく息を吐いて体を起こした。


「村に来る前に会った勇者の能力が凄まじすぎて…」


「へぇ、結局どんな能力だったんだ? モテるって言うのは大会の時のあの様子でわかったんだが」


 ゴルベーザがにやにやと笑みを浮かべながら尋ねてくる。

 ま、男は下半身の生き物だ。こういう話題に食いついてくるのはわかるけどな、ロマとメルニア婆さんにドン引かれてるぞゴルベーザ…


「あ~、まぁ…なんというか…骨の髄まで搾り取られた感じだ。しかも、宿に無理やり連れ込まれた後、アマゾネスが3人ほど乱入してきて…」


 女は怖い…


 思い出してブルリと身震いし、俺は頭を振って忘れることにした。

 とにかく、今はようやく姿を変えることができたし、窮地は脱した。・・はずだ。


「もう忘れましょう。それよりも賞金貰ったし王都に帰って今度はもう少しましな依頼を受けて資金を溜めましょうね。夢のスィートホームのために」


 ロマの目が一瞬ギラリと光った気がしたが、今は何も言わないでおく。

 女によるダメージは少ないに越したことはない。


 再びぐたっとテーブルに突っ伏せば、目の前に食事ののったトレーが置かれた。


「何か食べた方がいいぞ。どうせすぐに出発するんだろう?」


 冑はかぶっていてもこのパーティの中では常識人と知れているグウェンの優しさに顔を上げ、上げたところで俺はぎょっと目を見開いた。


「な、何があったんだグウェン!?」


 そこには、愛らしいアマゾネスの妻を腕に纏わりつかせ、ハワイで新婚旅行中といった感じのアロハシャツに短パン、ウクレレを持った冑のないまさに残念王子がいた…。


 顔は相変わらず格好いいが…、いや、でも、おかしいだろそれ?








________________


「私はここで待っているから、いつでも帰ってきてね」


 ゴルベーザがもらった嫁は奥ゆかしいらしく、村を出るときそう言って彼の頬にキスをしてにっこりほほ笑んだ。

 まさに妻という感じだ。

 

「冑は預かっておくわね。それから、時々お土産を送ってねダーリン」


 アロハシャツの胸にのの字を書きながら上目づかいでおねだりするグウェンの妻は、可愛いのだがおかしい…。何故冑を預かっておくのだ…。

 時にグウェン…、アロハシャツ装備で旅立つつもりか…?



 それから俺の妻になった人はと言えば…


「うおぉぉぉ~ は・な・せ~」


 昨夜の悪夢ヨロシク、さっさと旅立とうとする俺に取り付く5人の女達。

 て、なぜ増えてんだ!


「もうっ、アキの正妻は私よ! 愛人達はアキがいない間他の男を探しておきなさい!」


 ロマが叫べば、女達がしぶしぶ離れていく。


 いつの間に正妻と愛人の関係が…?

 いや…もう…いろいろとつっこみたいがやめておくことにするよ。



 そんなこんなで、アマゾネスの女達は基本村を出ることはないらしいので、ここに置いて俺達は旅立つことになる。

 それにしてもグウェン…


 馬車に乗り込んだ俺は、哀愁たっぷりにぽろんとウクレレを弾く金髪碧眼の王子を見やった。




 ウクレレで敵は倒せないぞ…剣はどこやった!?






 グウェンの職業が増えた!

 吟遊詩人(!?)の職を手に入れた! 

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