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伝説の勇者にはなりたくねぇ!  作者: のな
トリップ編
10/61

Lv.10  何か現れた!

「昼飯にするかー」


 ゴメスの言葉に俺の腹がぐぅぅぅと鳴り響く。

 朝飯は二日酔いで食べられなかったし、胃の中は既に空っぽ。本来ならまだ食べられる元気はないはずだが、ロマのおかげで回復して今はただの腹ペコ男だ。


「本当なら狩りも教えるべきなんだが、それは剣がそこそこできるようになってからだな」


「そうだなぁ。先は長い」


 狩りといえばそれこそ狩った獲物を解体する作業が待っているが、この先生きていくためには必要だ。無理だと言って避けることは許されない項目だ。


 俺の計画としてはここで自分が生きられるための技をできるだけ学んで、ギルドで荒稼ぎと行きたいところだ。

 

 そうそううまくいかないのが世の中だけどな。

 

 ゴメスと俺と、それに数人の見学者とともに村の中央付近へと戻ると、何やら女性達が輪になってざわめいている。


 嫌な予感だ。まさかと思うが、次のイベント発生とか言わないよな…?


 




「何事だ」


 ゴメスが村人の輪をかき分け、その中心へと出ると、彼の強面の眉間に皺が寄り、さらに恐ろしい表情になる。

 隣に立つロマが一瞬びくっと脅えたので、頭を撫でてやると、ロマはにっこり微笑んできた。

 

「村長。行き倒れです」


 狩人の男達が人の輪の中心で、とてつもなく丈夫そうな鎧に身を包み顔が見えない兜を被った男を介抱していた。


 なんだろう。某狩人ゲームで見るようなとげとげしい緑色のごついアーマーだ。

 あちこちとげとげしいでっぱりのある装飾がしてあり、ここまで運ぶのはさぞ苦労しただろう。重くて痛そうだし、俺ならこんなアーマーは脱がせて捨ててくるぞ。


「おい、起きろ」


 ゴメスが男の兜を外すと、女達から小さく喜びの声が上がる。

 

 美形だ。

 それも金髪碧眼のまさに王子様のような20代ぐらいの美形だ。


「少々負けたかの?」


「うおっ」


 声をかけられ、真横にメルニア婆さんの存在を認めて俺は驚きに飛び上がる。

 ほんとに神出鬼没というか、一体いつの間に俺の横に立ったんだ、このばあさんは。


「アキの方が素敵よ」


 ロマがフォローを入れてくれるが、それは身内びいきというやつではないか? 俺でもこの行き倒れが美形だとわかるぞ。


「ありがとな」


 それでも嬉しいことには変わりなく、ロマとほほ笑みあっていると、メルニア婆さんが杖を片手にひょいひょいとステップを踏んで美形の前に立ち、その杖を勢いよく振り下ろした。


「あ…」


 止める間もなく振り下ろされた杖は、パカァン!と小気味良い音を立てて男の額を打ち、男はカッ!と目を開いた。




「い…いてぇぇぇぇぇ~!」


 うん。あれは痛い。

 経験者として俺はうんうんと頷く。


「それくらいで軟弱なっ! それでも・・の端くれか!」


「ん? 今婆さんなんて言った? なんの端くれって?」


 聞き取れなかったのでロマに聞いたが、ロマは聞いていなかったらしく首を横に振った。

 ん~…まあ、いいか。


 男はガバリと起き上がり、はっとしたように顔に触れると、辺りをきょろきょろと見回してゴメスの持つ兜をものすごい勢いで奪い取ると、それをずぼっと被った。

 途端に女達の失望の声が漏れる。

 

「私はマイスリーネ王国緑の騎士グウェン。この村に変事有りと聞いて(まか)り越した!」


 はっはっはっはっはーと胸を張って笑われても、行き倒れ男では何の威厳もないのだが…。


「私が来たからにはこの村は安全だっ! さぁ、緑の魔女とかいう者の元へ案内するがよい!」


 任せろとばかりにゴメスに告げたグウェンという男の姿に、俺はふと気が付いて声をかけた。


「グウェンさんとやら。あんた敵に向かうのに武器はどうしたんだ?」


 男の鎧は抱き着けば武器になりそうなほどごついものだが、武器ではないはず。だとしたら、何も持っていないのは不自然だった。


 グウェンはピタッと笑いをやめると、パタパタと腰の辺りと背中を手で叩き、ガシャッと鎧の音を立ててその場に膝をついた。

 

 おぉ…俺以外にもリアルがっくりをする人間がいたよ。


「バカな…私の愛するハルバートが消えた…」


 ハルバートと言えば槍の先に斧頭が付いた武器だな。

 チラリと村人を見れば、彼等は首を横に振っているので、初めからなかったのだろう。


 この男、追剥にでもあったんじゃないだろうか?


「あの武器があれば私は鬼に金棒、森の魔女など一思いに消し去ってくれるものをっっ」


 その言葉がほんとかどうかは知らないが、さめざめと泣く男をみて、ロマが俺のズボンをクイクイと引く。

 どうやら先程から言われている『森の魔女を倒す』という言葉に憤っているらしい。

 ひどく冷めた表情を浮かべて呟いた。


「アキ、私あの人のちょん切ってもいいかしら」


 ・・・・・・・


 ・・・・・


 え、えぇと、ロマちゃん、一体君は何をちょん切るおつもりで!?


 ロマが何を切るつもりかはしらないが、俺は全力で彼女を止めにかかった。

 

 その苦労も知らず男は叫ぶ。


「そうか! 私の武器は魔女に奪われたのだなっ。おのれ魔女めっ、私に恐れをなして武器を取り上げるとはっ。しかし、安心したまえ村人達よ。私は武器などなくとも必ず魔女に勝利する秘策が…ごふぅ!」


 ロマのウサギのぬいぐるみによる攻撃により緑の騎士グウェンは弾き飛ばされ、地面でバウンドした後沈黙した。


 俺も村人も唖然・・・


 ま、まぁ…ちょん切られなかっただけ感謝しとけ~。


 そして、ロマよ、その兎のぬいぐるみには何が入っているんだ。

 鎧をも吹き飛ばす兎のぬいぐるみの威力に俺はぞっとするのだった。

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