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天使が舞い降りたPart1

俺は事故った。


うっすらした意識の中で、医者達が「これ以上はもうだめだ……」なんて言っていたのを聞いた。

もう手遅れなんだなぁ。

ゆっくり目を閉じたら、真っ白になって、それで。



俺は学校へしっかり行っています。

なんでか。なんでだろう。

生き返ったように回復したらしい。俺は全く記憶に無いが。

お医者さんには感謝している。まだ死にたくなかったから、助かった。

親を悲しませずにすんだ。ありがとう。









なんて呑気な俺だが、自分が一番ビックリしている。

運動は出来ないほうではない、むしろ体育はいつも5だが、ここまで体力というか生命力があるとは。医者方はぽかんとしてたそうだ。

自分は人間だと信じたいよな。


3日程で退院して(特殊なケースだから、いろいろ検査された。)今日から学校に通える。授業は遅れてもいいけど、部活は行きたかった。



「おはよ、」

「あっ圭斗じゃん!生きてたかー?」

「生き返ったよ。」

これでもクラスメートには、知らされて無いらしい俺の事故。事実生き返ったのでこう返す。


そういえば、なんで事故ったのかわからない。記憶喪失を起こしているみたいだ。

今話してる伸弘の名前がわかるから、事故の前後の記憶だけみたいだが。


「ま、よかったな。今日の体育バスケだけど大丈夫なのかよ。風邪か?」

「今日は見学しろって母さんに言われた…」


嗚呼、大好きな体育を休まなければならないなんて。今はわからない事故の原因が憎い。

車道ではないし、目撃者もいない、妙な事故。第一発見者がいなければ、今頃……


その発見者は女子高生で、俺の学校と同じ制服だったらしい。命の恩人がこの学校にいる800人の中にいるかもしれない。いや、女子だから半分の400くらいか。

もし記憶が蘇ったら、

「お礼言わなきゃな…」

いつもの席に座れた嬉しさ。生きていない椅子は冷たい。

自分もそんな椅子のようにならずにまた来れたことに感謝した。





















熱心な掛け声。

跳ね回るボール。

嗚呼あれを掴みたい。

あの茶色の球体が俺の手でネットに入っていくのがたまらないのに!

俺はジャージを着、バスケコートの外で体育座りで大人しくしている。

なんとこのバスケの授業、これで終わって次からバレーボールになるらしい。

バレーボールは嫌いではないが…来年の体育は選択だそうだから、絶対バスケを選ぼう。今から誓ってやる。



見ていたら切なくなってきた。後ろでバレーする女子達でも見てようかな。

うちのジャージはダサいから、女子を見てもこう、グッとくるものはない。

が、むさい男と比べたらなあ…でもあまりじろじろ見るのもなあ……

試行錯誤。掛け声に混じって後ろから笑い声が聞こえた。

人馬鹿にするような、不快な笑い声を。
















汚れてしまったジャージを払う間もなく、勢いがついてさらに硬いバレーボールがぶつけられる。

カシャ、と眼鏡が落ちる音。

当てられた少女は泣くわけでも反抗するわけでもなく、ただただ黙ってボールを拾いあげた。


「北田さん!ボール取ってくれてありがと〜!ぎゃはははは」

「ウケる〜〜、ねぇもういっかい当てたらマジギレするかな?」

「えーさすがにまずくな〜い?」

不快な声の主。彼女らは所謂いじめっ子だ。

高校生にもなって情けない…といきたいところだが、高校生だからこそこういうことが起きるのだ。

一方いじめられっ子…北田加奈は落ちた眼鏡をかけ直し、彼女らの台詞を聞かないように背を向けた。視線が合いそうだったので、慌ててバスケコートに目を戻す。

彼女は唇を噛んでいた。


信也は前まで思っていた。

「そんなに悔しいなら言い返せばいいのに。」

北田さんへのいじめは今に始まったわけではない。

いつ頃かはわからないが、一学期の頃にはもう。

いじめるやつの気持ちはわからないが、北田さんはなんでこんな底辺校に来たのかわからないくらい頭もいいし、とても暗いがよく見ると美人だという噂。女心の何に火をつけたのかは知らないが、北田さんは誰とも話さないから友達も居ないし、いじめられる要素はあると思う。

そりゃいじめる方が一番悪いけど……言い返さないのも悪いんじゃない?なんて。


今まではそう思っていたが、今回の事故で、少なからず生きることの素晴らしさを感じていたせいか、あまりそのような感情は起きなかった。変わりにますますあの不細工な女子達に対する憎しみというようなものがふつふつと。


だからと言って北田さんを助けるわけでもなく、あいつらを叱るわけでもなく…自分が情けなかった。

「北田さんが変わらないと何も変わらないよ。」

なんてくだらない言い訳で自分を守るしかできないのが傍観者なのだ。








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