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魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意  作者: やきいもほくほく
一章 悪女は牢の中で

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シャルレーヌがしばらくそのままで待っていると、真っ黒な蝙蝠が飛んでくる。

窓をカリカリと爪で引っ掻く音、慌てている様子を見るに何かを伝えたいようだ。



「今から謁見なのだけれど……急ぎの用事かしら」



シャルレーヌの言葉と同時に彼らは申し訳なさそうに窓枠の上に止まる。

すると蝙蝠たちの後ろから、数羽のカラスが顔を出した。

手を伸ばすと、頭を下げて擦り寄ってくる。



「あら、わたくしの〝お友だち〟になってくださるの?」



カラスは控えめな鳴き声を上げた。

嘴には壊れた銀色の玉。それをシャルレーヌに渡してくれた。



「ゴホッ……あなたなのね。おかげでお話がしやすくなりましたわ。ありがとう」



シャルレーヌは咳き込みつつも笑顔でカラスを迎え入れる。

それをじっとりとした嫉妬に塗れた瞳で見つめる蝙蝠がいたが、カラスは気にすることはない。

それからしばらく話を聞いていると興味深いことを教えてくれた。



「まぁ動物とコミュニケーションをとれる方が皇帝陛下のおそばに? それは厄介ね」



カラスは小さく頭を下げる。その後ろには数えきれないほどのカラスが飛んでいるのが見えた。

まるでまだまだ情報があると伝えてくれているようだ。



「そう。ありがとう……わたくし、とても嬉しいわ」



シャルレーヌが彼らの漆黒の羽根を優しく撫でる。



「なら、契約いたしましょうか」



その言葉に喜びを露わにするように一気にカラスが鳴き出した。

シャルレーヌが唇に人差し指に当てると、鳴き声はピタリと止む。



「前の雇い主は随分と鳥遣いが荒いのねぇ。大丈夫よ、いい子にはご褒美をたくさんあげるから」



カラスたちはシャルレーヌの言葉に応えるように空を飛び回っている。

そのまま背を向けると、カラスは一気に飛び立った。



「いい子たちと契約できましたわ。けれど許可もなく奪ってよかったのかしら……いいに決まっているわよねぇ?」



シャルレーヌの唇はゆっくりと弧を描いていく。

すると蝙蝠たちが不満を露わにするように鳴き声を上げる。



「あら、わたくしは眷属を蔑ろにはしないわ。あなたたちは夜、あの子たちは昼を任せるの。そうすれば顔を合わせることもない。大丈夫でしょう?」



そう言って顔部分を人差し指で撫でると機嫌は直ったようだ。

蝙蝠たちが機嫌よく飛んでいく。


窓を閉めようとすると、空でカラスと蝙蝠が喧嘩いるような気もしたが、シャルレーヌは何も見なかったかのように窓に背を向けた。


そこにはメイク道具を指に挟んで待機しているルイが立っていた。



「よろしいのですか? 先ほどまで主人がいた子たちと契約するなど……」



ルイが何を言いたいのかはわかっていた。

あまり派手な動きは危険だと言いたいのだろう。

それにあれだけのカラスを従えていたとなれば、皇帝の側近に選ばれるのも納得だ。


けれどカラスたちがいながらシャルレーヌの出迎えをしなかったとするならば腹立たしい。

他にもあの状況を知りながら見ていただけの奴らがたくさんいたということだ。


(……あの銀色の玉で様子を見ていたのかしら)


シャルレーヌを迎えに来るのも本来皇帝の仕事ではないはずだ。

彼だけがシャルレーヌの体調を気遣ってくれた。

それは紛れもない事実なのだ。

歓迎されていないにしても、先に礼をかいたのはそちらの方なのだから問題はない。



「ウフフ……わたくしを待たせた罰ですわ」


「……かしこまりました」


「そろそろ準備をいたしましょうか。これからきっとおもしろいものが見れるわ」



シャルレーヌは準備を行い、謁見の間へと足を進める。

値踏みするような視線、馬鹿にするような声が聞こえていた。

あえて視線を返し、声をする方を見つめた。

すると戸惑いつつも視線を逸らして黙る人たちばかりだ。

シャルレーヌは一人一人の顔をしっかりと覚えながら進んでいく。


そして目の前で威圧感を放っている大きな扉が開く。

長いレッドカーペットには、こちらを見下すように座っている皇帝のヴィクトールとその周辺には偉そうな男性たちが並んでいる。


この部屋に入る前はシャルレーヌに鋭い視線を送っていたが、姿を見た途端、驚きに変わった。

余裕の表情を崩すことなく、ドレスの裾を掴んでカーテシーを披露する。



「皇帝陛下に拝謁いたします。サンドラクト王国からまいりました。シャルレーヌと申します」


「…………顔を上げろ」


「失礼いたします」



薄ピンクのドレスに小柄な体。ぱっちりとした目にほんのりと色づく唇。

プラチナゴールドの髪は緩く結えており、多少の化粧を施しているが、濃くはない。

シャルレーヌが顔を上げて、柔らかい笑みを浮かべると辺りが騒ついた。



「そんなに注目されると恥ずかしいですわ。わたくし、あまり人前に慣れていませんの……」



シャルレーヌの言葉にバッと音が聞こえるほどに顔を逸らす男性たち。

咳払いも遠くから聞こえてきた。

中にはほんのりと頬を赤ている者もいる。


(サンドラクト王国出身とは思えないと言いたいのでしょうね。表情がわかりやすくて何よりですわ)


カリマは表に出ることとあるが、シャルレーヌは滅多に表に出ることはない。

シャルレーヌは瞼を伏せつつ、手のひらを口元に当てて軽く咳をする。


(やはりまだ回復はしていませんわね)


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