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魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意  作者: やきいもほくほく
一章 悪女は牢の中で

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「わたくしが意識が失う前支えてくれた男性は誰かしら」


「皇帝陛下のようです」


「まぁ……皇帝陛下が? なら、あれが闇魔法なのね」



シャルレーヌは自分の手のひらを眺めていた。

黒く逞しい腕に抱かれながら触れた闇魔法が忘れられない。

もしもう一度触れることができたなら、はっきりとわかるはずだ。


(ふふっ、また会えるかしら。楽しみだわ)


作業が終わったとの報告を受けたシャルレーヌは部屋の中へ。

シャルレーヌは部屋をチェックしていく。



「申し訳ありません。灯りが……」



ロミが魔導具を手にしている。

どうやら魔力がなければ、灯りすらつけられないらしい。


(魔法が生活の一部なのね。ロミとルイが苦労しそうだわ)


サンドラクト王国に吸収された国々の王族も魔導具を使っていた。

しかしそれは贅沢品だとわかっていた。魔石がなければ動かないからだ。

見たことがないわけではないが、見慣れないものではある。

シャルレーヌは魔導具のランプやさまざまな魔導具を眺めながら考えていた。


(ナリニーユ帝国では魔法を使う暮らしが百パーセントだとしたら、隣国は十~十五パーセントしか使用していない……使用できないと言うべきかしら)


魔法が使えないため、魔力がこもった魔石を原動力に魔法を使っていた。

それはナリニーユ帝国のように魔法を使える国から輸入しているのだ。


サンドラクト国王が魔法を毛嫌いしているため、王国では魔法や魔導具を使うことを禁止されていた。

そうして暮らしてきたが、ここでは真逆。すべてを魔法で賄っている。

だから魔力を持たなければ、部屋のランプで灯りをつけることすらできないというわけだ。



「灯りはいらないわ。それよりも窓は隙間なく塞げるようにしてちょうだい」


「かしこまりました」


「それと喉が渇いたわ。紅茶が飲みたい……」


「すぐに用意いたします」



(こうなってくると不便ですわね。ルイが紅茶を淹れるのにも苦労するでしょうね)


水を出すことや火をつかうことも魔力を使うのだとしたら……。

ロミとルイにはそれすら難しいかもしれない。

それがわかっていていたのか兄にはいろいろと便利な道具を用意してもらって正解だった。


(……ふふっ、楽しくなりそう)


シャルレーヌは椅子に腰掛けて一息ついていた。


しばらくすると、こちらに近づいてくる足音とワゴン。

ロミが扉を開くと、水でびしょ濡れになったルイの姿があった。

しかし彼女は無表情で、そのまま部屋の中へ。

近くにあった凹みがあるバケツにスカートの水を絞った。



「ルイ、遅かったわね」


「申し訳ありません。遅くなりましたが紅茶をお持ちいたしました」


「いいのよ。それよりもあなた……どうしてそんなにびしょ濡れなのかしら」


「水が欲しいと頼んだらこのようなことに。お見苦しいところを」


「いいのよ。慣れないことばかりで大変だと思うけれど、がんばってちょうだいね」


「はい、もちろんです」



淡々と返事をしつつ、ルイは紅茶の準備を進めていく。

扉を開けたロミも部屋の前でルイを待っていただけなのに燕尾服はボロボロだ。

そしてシャルレーヌに訴えかけるように廊下の外、一点を見つめて動かなくなってしまった。


シャルレーヌは笑いかけて小さく首を横に振る。

その仕草を見たルイとロミは頷くと、彼は荷物の整理を再開させ、ルイは紅茶を淹れていく。



「ロミ、服がボロボロだけどどうしたの?」


「どこからか強風が吹いてきて、一瞬で切り刻まれました」


「室内で強風……? ナリニーユ帝国ではこれが日常なのかしら。今度、聞いてみましょうね」



ルイがサイドテーブルに紅茶を置いた。

彼らに着替えるように促しつつ、シャルレーヌはホッと息を吐き出す。



「このあとの予定は?」


「ありません」


「そう……どうして門番に放置されたのか説明してほしいと思っていたんだけど」


「落ち着き次第、皇帝陛下に謁見をと伝言をお預かりしております」


「あぁ、そう。今からでもいいのだけれど……」



シャルレーヌがそう言った瞬間、外から微かに音がした。

それが何かわかった瞬間に唇がゆっくりと弧を描く。


ルイは淡々と紅茶の隣に赤黒い液体が入ったグラスと軽食を置く。


(うふふ……本当に楽しませてくれそうだわ。これでしばらくは持つかしら)


シャルレーヌはグラスを手にとり、一気に飲み干した。

それから口端についてしまった液体を舌を滑らせて舐めとる。



「ああ……これが魔力ね。ふふっ、癖になりそう」


「それは何よりです」



シャルレーヌは微笑みつつ、グラスを置いた。



「シャルレーヌ様の体調が回復すれば、妃様たちがお茶会を開いてくださるそうですよ」


「まぁ……それは嬉しいお誘いねぇ」



妃たちと聞くだけで何かが起こる予感がする。

それだけで参加したいと思えた。



「陛下には明日の夕方か夜には謁見させていただくわ。わたくし、まだ陛下のお顔も知らないんですもの」


「かしこまりました」


「コホッ……明日、暗くなるまではゆっくりと休ませてもらうわね」


「はい、おやすみなさいませ」



その言葉を発したルイは部屋の端に立ち微動だにしなくなった。

ロミは再び部屋の前での護衛へと戻った。


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