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魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意  作者: やきいもほくほく
三章 悪女のお気に入り

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「陛下としてはどれだけの影響がでると思われます?」


「大きな影響が出るだろうな」


「まぁ……! それは素敵ですわね」



シャルレーヌは手を合わせて目を輝かせた。

完全に機嫌は治っていた。モルガンの失言などもうどうでもいい。



「わたくしに似合うドレスと宝石をお願いいたしますわ。サイズはロミに聞いてください」


「一緒に買いに行きたいとは言わないのか?」


「デートのお誘いは嬉しいですが、昼間に出かけるのは苦手ですの。テネブルといい子に待っておりますわ」


「コイツはお前のものじゃ……」


「陛下、テネブルですわ」


「……テネブル」



ヴィクトールがテネブルの名前を呼ぶと、嬉しそうにブンブンと触手の影を振っているでははいか。

あまりの勢いにモルガンに触れそうになったが、オノレはモルガンの腹に腕を回して彼を庇った。

どうやらこの影に触れるのはなんらかの影響があるのかもしれない。

気になったシャルレーヌは問いかける。



「お二人はテネブルに触れられないのですか? 意図的に避けているように見えますけれど」


「そもそも闇に触れられる者などいないだろう?」


「そういうものですか?」


「ああ、モルガンはテネブルに指一本触れただけで一週間悪夢に魘された」



だからシャルレーヌが触れるたびに驚いていたのだろう。

人前でテネブルに触れるのは考えた方がいいかもしれないと思いつつ、魔力を感じ取ることができないシャルレーヌには関係ないと思い直す。



「そうだったのですね。人前ではテネブルに触れないように気をつけますわね。勘違いする方がいたら困りますもの」



ブンブンと縦に振り、了承するテネブルはかわいらしい。

伸ばされた触手に頬擦りしつつ、シャルレーヌはテネブルをかわいがっていたがモルガンの顔は青ざめていく。

オノレは観察するように、じっとこちらの様子を伺っていた。



部屋の外にはシャルレーヌを心配したカラスたちが空を飛び、屋根にとまる。もうモルガンを気遣い、姿を隠す気はないようだ。

恨めしそうなモルガンは下唇を噛んでこちらを睨みつけている。

彼を代弁するようにヴィクトールがシャルレーヌに問いかけた。



「魔法ではないのなら、どういう仕組みで従わせている?」


「そうですわねぇ……魔法とは違いますが、サンドラクト王国の文化とでもいいましょうか」


「何……?」


「お父様はワシを従えておりますわ。兄や姉、弟たちも同じです。護衛や諜報、友人のように扱う者もおりますわね」


「……魔法ではないのか?」


「わたくしたちは彼らに助けてもらいながら生きております」



サンドラクト王国のシンボルでも空の王者でもあるワシ。

代々、サンドラクト国王となるものはワシと心を通わせてこそだと言われている。



「カリナお姉様はいつでも邪魔者を排除できるように何匹か肉食獣を従えております。死体が残らず骨までペロリと平らげるので圧巻ですわ。フェランお兄様は狼たちでとても頭がいいのですよ? チームワークもバッチリで番犬にもなりますし、噛み付いたら相手の腕や足がもげるまでは絶対に離しません」


「…………」


「そうそう、今年八歳になるグレゴリーは虫や植物全般に長けていて毒殺ならお手のものですわ。忍び寄って一撃なんですもの。ですがわたくしは一瞬の苦しみで死んでしまうのはどうかと思いますけれど……」



淡々と語るシャルレーヌにモルガンは言葉を失い、ガタガタと体を震わせている。

オノレは感心するように「素晴らしい」と、呟きながら頷いていた。



「ちなみに、わたくしの蝙蝠たちは帝国にも潜んでおりますわ。その子たちに情報収集をお願いしております」


「情報収集……なるほどな」


「わたくしはじっくりじっくり追い詰めていく派ですわ。そうでなければすぐに壊れてつまらなくなってしまうでしょう?」



ヴィクトールは相変わらずの無表情で、何を考えているのかさっぱりだ。

しかし家族たちの話をしたことで、サンドラクト王国ではそれが普通だと思ってくれたようだ。

その能力はナリニーユ帝国では『魔法』と呼ぶのかもしれないが、サンドラクト王国では王族であれば当然のように持っている能力だ。



「そろそろお部屋に戻りたいのですが、よろしいでしょうか?」



これ以上、彼らに話したとしてもシャルレーヌの特にはならない。

それからシャルレーヌはヴィクトールとオノレ、モルガンの三人とともに部屋に送ってもらっていた。

その後ろからはルイとロミが続く。

部屋に入る前、カラスが銀の小さなボールを咥えていた。


(またですの? 懲りない方……)


恐らくエマニュエルの仕業だろうが、何度も何度も仕掛けてくるため飽き飽きしていた。

しかしここにはヴィクトールがいる。


(ふふっ、いいことを思いつきましたわ!)


シャルレーヌはいつもは壊してしまう銀の玉を受け取り、ヴィクトールたちに見せる。

何も知らないふりをして問いかけた。



「またこの玉……カラスたちが何度も持ってくるのですが、陛下たちはご存知ですか?」


「……これは」


「ナリニーユ帝国ではこのような玉が浮かんでいるのが普通なのでしょうか? カラスたちは光り物が好きなようで壊してしまっているのですが……」



ヴィクトールは銀の玉を摘むとクルクルと回して眉を寄せた。



「いつからこれを?」


「ここに来てからずっとですわね。カラスたちが壊しても、わたくしの部屋の周りに常に浮かんでいるので、何かの役割があるのですか?」


「これは魔導具だ。誰かが会話を盗聴している」


「…………そんなっ」



シャルレーヌはわざと知らないふりをして、ショックを受けているというリアクションをする。

そちらの方が都合がいいからだ。



「よくあることなのですか?」


「いや……こんな高価なもの、なかなか手に入らないはずだ」



ヴィクトールは苛立ちを隠せない。



「犯人は突き止める。しばらくは警戒してくれ……オノレ、モルガン、行くぞ」


「は、はいっ」


「かしこまりました」




三人は背を向けて暗闇に消えていく。

シャルレーヌは三人とテネブルを見送り終わったあとに、クスリと笑みを浮かべた。



「あらあら、これからどうなるのかしら」



まだまだ楽しくなりそうだと、シャルレーヌは笑みを深めた。



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