表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意  作者: やきいもほくほく
二章 値踏みされる悪女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/24

②④


「ちょっと、やり過ぎよ! バレたらどうするの!?」


「このくらいでいいのよ! 私たちだってつらい思いをしたんだもの!」


「で、でも……!」



シャルレーヌは両手のひらで顔を覆い、そのまま体を震わせていた。


(ああ……どうしましょう。このままだと……っ!)


シャルレーヌの震えはどんどんと大きくなっていく。

ロミとルイも先ほどまでは無表情だったのに珍しい反応をしているからか驚きを隠せない。



「……ゴホッ、ゴホ」


「こ、これに懲りたら大人しくしていなさい!」


「今日はこのくらいにしておいてやるわ! これ以上、アナベル様に刃向かわないことね」



激しく咳き込み出したシャルレーヌを見て、二人は焦ったように部屋を出て行ってしまった。

しかも主人の名前まで口にしているではないか。

二人の足音がパタパタと遠のいていくが、それと同時に「大丈夫なの!?」と、心配そうな声が聞こえた。


ロミが持ってきた布がシャルレーヌを包み込むように背に触れるが、手を上げてそれを制する。

それでも震えるのを止められそうになかった。

周囲が静かになったのを確かめてからシャルレーヌは顔を上げた。



「ンフ……フフッ!」


「シャルレーヌ様」


「アハハハッ……!」



シャルレーヌは噴き出すように笑った。

先ほども震えながら笑うのを我慢していたのだ。


(何をするのかと思いましたけれど、ただ水をかけて去っていくだなんて! しかも主人の名前も……あぁ、どうしましょう)


抑えようとしても笑うのを止められそうになかった。


(サンドラクト王国だったら、間違いなくその場で殺されるでしょうに……)


こうして自由に動き回り、子どものいたずらのようなことをして去っていく。

それがおかしくてたまらない。



「ああ、ゾクゾクしちゃう……こんな気持ち初めて」



魔法を使えるということは、貴族の令嬢だ。

アナベルの元に行儀見習いに来ているのか、または彼女が正妃になることを望んで仕えているのかもしれない。



「ウフフ、なんてかわいらしい嫌がらせですこと!」


「…………」


「血が流れないなんておままごとみたいね。おかしいわ、ゴホッ」



笑い過ぎたのかシャルレーヌは何度も咳き込んでいた。

ルイが慌てて水を持ちに行く。



「捕らえますか?」


「何もしなくてもいいわ。そのうち手に入るから」


「…………」



しかしロミは不満そうに眉を寄せた。



「このままでいいのよ。彼女たちには十分楽しませてもらったもの。そのまま泳がせておきましょう」


「かしこまりました」


「それにもうすぐ医師たちが来るでしょう?」



ロミはシャルレーヌの言いたいことを理解したのだろう。

納得したのか丁寧に腰を折ると、水分を拭おうとしていた布を引く。

シャルレーヌの笑い過ぎて溢れ出てくる涙を拭った。



「窓を開けてくれるかしら?」


「よろしいのですか?」


「風で少しはシーツが乾くといいけれど……フフッ、いつまで保つのかしらね」



びしょ濡れで微笑むシャルレーヌの指示のまま、ロミは窓を開ける。

なるべく日が入らないように布を使って調整してくれていた。

生ぬるい風がシャルレーヌの頬をそっと撫でていた。

しばらく彼女たちのかわいらしい姿を思い出しては笑っていた。


(楽しみはあっという間に終わってしまうものね)


この後の展開は概ね想像通りだった。

医師たちがびしょ濡れになったままのシャルレーヌを見つけて大騒ぎ。

昨日よりも咳き込んでいるため、慌てて皇帝に報告。

誰にやられたかはおもしろそうだという理由から黙っていた。

けれど〝侍女〟だということだけは伝えておいた。


(今頃、いつバレるのかと震えているのかしら……可哀想に)


アナベルの侍女たちはここまで大事になるとは思っていなかったはずだ。

そのことを考えるだけで楽しく過ごせそうだ。

シャルレーヌのベッドのシーツなどはすべて綺麗になり、窓を覆う布もいいもの結果的には遮光性が高いものに変わった。

それだけでも満足なのだが、シャルレーヌは待っていたものがあった。


(いつ限界が訪れるかしらね……)


数日後、シャルレーヌが楽しみにしていたことが起こった。

最初にシャルレーヌの部屋から逃げ出した侍女が白状したのだ。

彼女はここ何日か眠れなかったそうで、ついに限界が訪れたように泣きながら自白した。


(彼女、なかなか強いのね……! 気に入ったわ)


それからアナベルの対応は早かった。

『わたくしを心配してくれたのでしょうね。けれどシャルレーヌ様にこのようなことをしてしまうなんて…………許されることではありませんわ』

そう言って、あっさりと侍女たちを切り捨ててしまった。

彼女たちは数日苦しんだだけで姿を消した。


(やっぱり捨て駒だったのね。残念だわ……)


悪夢に魘されて居場所がなくなった侍女は、シャルレーヌが引き取ることになった。


名前はリリー。オリーブ色の腰まである髪を編み込んでおり、眼鏡をかけている地味な少女だ。

どこかで見たことがあると思いきや、シャルレーヌを物置き部屋まで案内した侍女と同一人物だった。


リリーは長女だったが弱い魔法しか使えずに妹が後継に。

居場所がなくなり、エマニュエルに憧れて侍女になろうとしたが、なぜか流されるままアナベルの侍女になってしまった。

気弱で自分の意見を言えず、鈍臭いためため追い出された侍女二人にいいように使われていたそうだ。

彼女自身は水魔法と風魔法を使えるそうで、ここにいる間いろいろと役に立ちそうだ。


(ロミとルイ以外、わたくしのそばにいたことはないけれど意外と根性はありそうだもの。そばに置いておくだけでもおもしろそうですわ)


しばらくはシャルレーヌの役に立ってもらおうではないか。

この件でアナベルはさらに身動きできなくなるはずだ。



「よろしくね、リリー」


「は、はひ……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ