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魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意  作者: やきいもほくほく
二章 値踏みされる悪女

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23/24

②③


乱暴に開く扉。ノックもせずに部屋に入り込んできたのは、後宮で働く侍女たちだった。

久しぶりに入り込んでくる光は眩しすぎて目が眩む。



「ちょっと! 真っ暗でなにも見えないわよ……!」


「何この部屋……! 信じられないっ」


「埃っぽいし、別の物置きと間違えたんじゃないの!?」


「ここで間違いないわ。医師が出入りしているのを見たもの!」



二人の侍女がズカズカと部屋の中に入ってくる。

その後ろから一人の侍女が控え目に足を踏み入れた。

それからいろいろなものにぶつかって痛さに悶えているではないか。

シャルレーヌは、その様子を黙って見つめていた。

彼女たちが何をするつもりなのか興味があったからだ。

暗闇の中でストロベリーピンクの瞳が怪しく光っていたが、彼女たちは気づくことはない。

恐らくアナベルかエマニュエルのどちらかの侍女ではないだろうか。


(魔法を使ってわたくしのドレスをぼろぼろにしたり、部屋を燃やしたり、水浸しになってしまったりするのかしら! ウフフ、楽しみだわ)


魔法でシャルレーヌをどんな方法で追い詰めていくのか。

それが楽しみなのだ。



「部屋にいない今がチャンスよ」


「どうしてやろうかしら。これ以上、ひどくなんてできるのかしら」


「あはは! 無理よ。だってこんなに汚いんだもの」


「や、やめましょうよ……」



彼女たちは夜目が効かないのか、一向にシャルレーヌに気がつくことはない。

仕方なくベッドから体を起こして、サイドテーブルに置いてある蝋燭に火をつける。

すると、ぼんやりとシャルレーヌの顔が浮かび上がった。



「皆さま、ごきげんよう」


「きゃああぁ!」


「キャッ!」


「──ッ!」



侍女たちは小さく悲鳴をあげて尻もちをつき、体勢を崩してしまった。

そんなに驚くことがあっただろうかと考えていると、シャルレーヌの後ろにルイが人形のように立っていた。

彼女の眼球がギョロリと侍女たちを睨みつける。

まるで蝋人形のように不気味だ。けれど愛らしいシャルレーヌの眷属だった。



「ルイ、皆さまを驚かせてはだめですわよ?」


「申し訳ございません」


「それで……何かご用かしら?」



シャルレーヌはフッと息を吹きかけて蝋燭の火を消した。


(さぁ……どうするのかしら?)


暗闇の中、ギィと木が軋む音が響く。

どうやらロミが部屋に入ったようだ。

一瞬だけ光が漏れたが、扉がしまったことですぐに暗闇になる。

侍女たちが振り向いても、もうそこにはもう誰もいない。



「……ひぃ!?」


「なっ、なに……!」



暗闇の中、ロミとルイのガラス玉のような瞳が怪しく光っていた。

彼女たちのゴクリとつばを飲み込んだ音が聞こえた。

少しずつ暗闇に目が慣れてきたのか。

侍女の一人がガタガタと震え始め、シャルレーヌの後ろを指さしている。

しかしそこには影しかない。


(まぁ……! なかなか鋭い方がいるのですねぇ。これは利用させていただきましょう)


シャルレーヌの唇は弧を描いていた。



「あら、質問に答えてはくれないのかしら?」


「……あっ、ぁ……!」



頭を押さえてしまった侍女の代わりに、二人の侍女が立ち上がった?

その顔は引き攣ってはいたものの、次第に眉は吊り上がっていく。


(まぁ……! 恐怖に打ち勝とうと必死な表情、なんて弱々しくて素敵なのかしら)


シャルレーヌは彼女たちが己を奮い立たせているのを見て感動していた。

今から何をするつもりなのか大体想像はできるが、わくわくすることが起こる気がするのだ。


こちらを指さした侍女はシャルレーヌを責めるように声を上げた。



「アナタのせいで、あの方に怒られたんだから!」


「そ、そうよ! 責任とりなさいよ!」


「あら、なんのことでしょうか?」



シャルレーヌはゆっくりと首を傾げた。

彼女たちの言葉から察するに、アナベルかエマニュエルに八つ当たりでもされたに違いない。

そんな中、一人の侍女は頭を守るように押さえながら一歩、また一歩と後ろに下がっていく。



「……や、やめませんか? なんか変な感じが……っ」


「うるさいわね!」



一人の侍女は涙をこぼして、体を震わせながら二人の侍女服を引いていた。



「──ごめんなさい! もう無理ですぅ!」



耐えきれなくなったのか、怯えたまま部屋を出て行ってしまった。




「ちょっと! 信じられない……!」


「あとで見てなさいよ……!」



こちらを睨みつける二人の侍女は次に何をしてくれるのだろうか。

にこやかに微笑むシャルレーヌは次にどう動くのかを待っていた。


(魔法でわたくしを傷つけるのかしら? ルイたちにしたようにずぶ濡れに? それとも風魔法を使うのかしら)


しかし彼女たちはシャルレーヌを罵るばかりで、危害を加えることはない。

そのせいでシャルレーヌから笑顔は消えていく。


(ああ……つまらない)


金切り声が次第に騒音になっていった。



「もう……よろしいでしょうか?」


「は…………?」


「なんですって?」


「気が済んだら部屋から出て行ってくださいませ」



その言葉で今まで人形のように佇んでいたロミとルイが動きだす。

彼女たちを追い出すためだ。

しかし侍女たちは納得がいかないようだ。引くに引けなくなったらしい。



「ふざけないで! なんなのよ、その態度……っ」


「私たちがこんな思いをしてるって言っているのに! 魔法も使えないくせに偉そうにしないでよ」



おもしろみがない罵倒、そろそろ飽きていた。


(侍女がお二人消えたところで、さして気にもしないでしょうし、しばらくはいただいておきましょうか)


シャルレーヌが視線でロミとルイに生け捕りにするよう、指示を出そうとした時だった。


──バシャッ


突然、上から降ってくる水。

全身ずぶ濡れになったシャルレーヌは目を見開いた。

 

(まぁ不思議、わたくしの真上から水が……)


シャルレーヌはベッドに座っていたため、シーツまでびっしょりだ。

ポタポタと髪から水滴が落ちていくのを呆然としつつ見つめていたが、次第にある感情が込み上げてくる。


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