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第5話 水路を設計します

 井戸ができて、濾過装置もできた。

 しかし人は水だけでは生きていけない。

 畑の作物が実るには、時間が必要だ。

 そこで僕は、みんなが濾過装置を作っている間に、ちょいと水魔法を使っておいた。

 そして大量の綺麗な水に喜ぶ村人たちに、本日最後の協力をお願いした。


「3人1組で、今から指定する場所へ向かってほしいんですが。

 そこにある死体を回収して、戻ってきてください」


「し、死体……?」


「すみませんが、村に水をもたらしたお返しにということで、ひとつご協力をお願いします」


「わ、分かった。とにかくやってみよう」


 30分後。


「「ぃやっほぉーう!」」


 回収されたいくつかの死体を見て、村人たちは大歓喜した。


「これ良いんですか!?」


「貰っても良いんですか!?」


「本当に!? あんたは神様か!?」


 回収してもらった死体は、僕が水魔法で遠距離から窒息攻撃した動物。

 つまり彼らは、新鮮な肉を大量に手に入れた。


「遠慮なく食べてください。

 体力をつけて、明日からの作業にも協力をお願いします」


「リオ様、明日はどんな事をするんです?」


 村長が尋ねた。

 村人たちも期待に満ちた目で見ている。

 ついに「監督官様」呼びから名前呼びに格上げされたようだ。


「明日からは長期戦ですよ。

 井戸から水路を整備して、畑を広げていく作業です。

 監督官として僕が目指す目標は、食べ切れない量を収穫できる大農園を作ること。

 皆さん、今日ここで合言葉を覚えてください。これからのサハラ村の合言葉です」


「合言葉?」


「まずは腹いっぱい飯を食おう! 話はそれからだ!」


「「おおーっ!」」


 村人たちは希望に満ちた目で、拳を突き上げた。

 そしてたちまち解体作業を終えて、流れるように調理へ。

 各家庭の親父たちが隠していた酒が持ち寄られ、宴会が始まるまでわずか30分。


「と、父ちゃん、こんなに食べていいの……?」


「食え食え! 腹いっぱい食え! 食わなきゃ俺が食っちまうぞ」


「ははは! バカ言え! こんなに食えるもんなら食ってみろってんだ」


「うめぇ! 食っても食っても減らねえ!」


 ピラニアもかくやという勢いで、村人たちはこぞって肉にかぶりついた。

 まるで今日がこの世の終わりかのような食べっぷりだ。

 必死すぎて「笑顔があふれる光景」とは程遠い。泣いている人まで居る。

 彼らは確かに飢えていたのだ。



 ◇



 熱狂から一夜明けて、計画は静かに動き出した。

 まずは村長の家で会議だ。

 僕は水魔法で地面の水分量を探知しながら、サハラ村の周辺の地図を書いた。とくに畑の位置と形を正確に。畑は水分がやや多めで、道路は水分が少ない。僕の探知には、乾いた場所が格子状に見えている。


「水路を造るのに最大の問題は、余分な水を捨てる場所がないことです。水をやりすぎると根腐れを起こしますから、畑が沼地みたいにならないように余分な水は捨てないといけません」


「谷がこのあたりにあります。

 雨が降ったときには川になるのですが、あまり雨が降らない土地ですので、普段は干上がっております」


 村長が言った。

 それは伯爵邸の地図には無い情報だった。

 高低差が小さすぎて地図には載せられないともいう。


「グレート! その情報は今日一番のプレゼントです。これで排水場所は決まりましたね。

 ならば、まずはこう――」


 言いながら、井戸と谷をつなぐ直線を引く。


「最初にこの水路を作りましょう。

 ここから枝分かれさせて、すべての畑に広げていきます。

 畑の横を通って、またこの水路に戻す形にしましょう。水路は幅も深さも30cmほどで良いでしょう」


「畑を広げるのですよね? 30cmでは水が行き届かないのでは? 地面に染み込んだりもしますし」


「将来的には1mサイズの水路が欲しいですね。

 しかし今は手っ取り早く水を畑へ運ぶことが最優先です。合言葉を覚えていますか?」


「まずは腹いっぱい飯を食おう。話はそれからだ。でしたね」


「そうです。

 なので現段階では、作業量の少ない小さな水路を、今ある畑に手早く届けることにします。

 豊富になった水で収穫量がどれだけ増えるか、来年以降にその成果を見てから、次の段階へ進みましょう。

 最終的には深さ1mほどの水路を作りたいですが、大規模な治水工事に出せる人足はないと言ったのはモーリス村長、あなたではありませんか。

 まず食べ物を増やす。次に子供が増える。そして子供が育って大人になり、増えた大人を使って水路を広げる。この繰り返しです。10年をひとつのサイクルと考えてください。

 村長。あなたが天寿をまっとうする頃には、地平線まで続く畑と、元気な子供であふれかえって住宅が足りない村にしてみせます」


「ははは……それは楽しみですな。

 ならば、今のうちから木を植えて増やしておかなくては」


「その通りです。将来の建築資材が必要ですからね。管理の手間を考えると、谷の周囲を森にするのがいいでしょう」


「森を作ると? 夢のような話ですが、リオ様ならやってしまうのでは、と思えてきますね」


「忙しくなりますよ。しかし働いた分だけ豊かになる」


「どうぞ何なりとご指示を。

 ワシらはリオ様についていきます」


 騎士の誓いのように頭を下げた村長。

 がっちりと握手して、僕らはまだ見ぬ光景を夢に描いた。

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