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第17話 父上と対決しました

 こうなったら、サハラ村の様子を確認してみるしかない。

 伯爵はお供を連れて出発した。

 本来こういう事は、誰か人をやって「見てこい」と命じるものたが、果たしてその報告を信じられるかといえば、否も否。どっちに転んでも信じられない。

 ――本当に発展してました。そんな報告を聞いても、自分の目で見るまで信じられないだろう。すでに今がその状態だ。

 ――全く発展していませんでした。そんな報告を聞いても、じゃあ領都の状況は何なのだ? あの黒字報告は何なのだ?

 結局は、自分の目で見るしかない。

 たとえ我が目を疑うことになろうとも。



 ◇



「……バカな……」


 地平線まで続く畑。

 きっちりと格子状に伸びた道。

 整然と並ぶ街路樹は、防風林の役割も持つのだろう。

 まだサハラ村が見えてもいない場所で、伯爵は我が目を疑うことになった。

 いったいどこの大農園だ?

 このあたりは荒野のはずだ。

 前に通ったときは荒野だったではないか。

 どこかで道を間違えたのか? いや、そんなはずは……ならばこの光景はいったい……?


「私は夢でも見ているのか?」


 しかし、これなら、なるほど、あの馬鹿げた増益も納得できる。

 実際の収穫量は、税として納めた量の数十倍……いや、見えていない範囲にも畑が広がっているだろうから、数百倍もありそうだ。定量制にしたままだったとは、あのマヌケ代官め! 割合制にしておけばガッポリ取れたものを。

 バカな、と否定したい気持ちと。

 なるほど、と納得する気持ちが。

 伯爵の中でぶつかり合う。

 悪夢と吉夢を同時に見ているような気分だ。


「と、とにかく、サハラ村へ……」


 混乱しすぎて現実を受け止めきれない。

 かくなる上は、中心部へ行くしかない。

 何が待ち受けているのか分からない。

 だが、間違いなく、何かが待ち受けているはずだ。



 ◇



「リオ様、街の東門から報告が。

 伯爵を名乗る一団が現れ、通せと要求しているそうです。

 門番が食い止めていますが、あまり長くは……」


「すぐ行きます」


 せいいっぱい立派に見える服に着替えて、僕は東門へ急行した。



 ◇



「ええい、通さぬか! 我はこの地の領主であるぞ! これ以上の抵抗は反逆とみなす! 総員、抜剣! 押し通るぞ!」


「くっ……! こうなれば門を――」


「門を閉めよ! 第1優先命令である!」


 間に合った。

 僕が叫ぶと、すぐに警備隊から返事が来た。


「はっ! 閉門! 閉門!」


 すぐさま門が閉じられる。

 ちなみに、第1優先命令とは、現在の行動をただちに破棄して最優先で取りかかれという種類のものだ。

 命令をたくさん出す立場になってしまったので、現場が混乱しないように定めた。


「な、なにィィィーッ!? 公然と反逆するだと!? どうなっているのだ、この街は!?」


 さて、父上と対決だ。

 第1ラウンドってところだね。


「恐れ多くも領主テルコ・コモ・ウン・トロ伯爵閣下の名を騙る不届き者め! お前たちは不敬罪である!

 先触れの使者も出さぬ貴族など居るものか! そのような杜撰な変装で騙される愚か者など、この栄光ある伯爵領には1人たりともおらぬ! 己の愚かさを呪うがよい!

 総員、第2種攻撃用意! 奴らを捕縛せよ! 状況開始!」


「「おおーっ!」」


 麻痺の魔法や、網の投擲など、行動阻害を目的とする非致死性の攻撃が開始された。

 こちらは石造りの分厚い防壁の上からなので、反撃を受ける心配はほとんどない。父上の魔法が飛んでくるのが一番の脅威だが――


「あ……! アホか、貴様ァーッ!? そこまで見事な忠誠心を持ちながら、領主たる私の顔を見忘れたとは言わせぬぞ!」


 持ち上げた言い回しをされて、父上はこちらを「誤解しているだけの忠臣」と思ったようだ。まったく攻撃してこない。


「貴様のような間抜け面は、見たこともないわ!

 そこへ直れ! 偉大なる伯爵閣下を愚弄した罪、その身をもって償わせてくれるぞ!」


 なんだか気持ちよくなってきちゃったな。

 こうも公然と父上をこき下ろせるのは、初めての体験だ。


「お、おのれ! 言わせておけば……!

 くそっ、邪魔だな、この網……!」


 網が絡まって父上がもがく。

 剣で切ってしまおうと考えたようだが、固定されていない太いロープは攻撃の威力に耐えつつ柔らかく変形して逃げるため、なかなか切れるものではない。

 しかも次から次へと投げかけられて、切るより早く次の網が絡まっていく。

 兵器と見ている魔法は、自分の近くでは危なくて使えない。この時点で父上には、捕まるか逃げるかの2択しかなくなった。


「は、伯爵様……! これ以上は……!」


「馬鹿者! 閣下と呼べ! 奴らに忠誠心で負けてどうする!?」


「それ今言う事じゃないでしょう!? まともに行動できません! ここは撤退を!」


「ええい、クソぉ! 覚えておれよ!」


 薄汚れた網やロープが絡まりまくって乞食のような姿になった父上たちが、這々の体で逃げていく。

 勝った! まずは1勝だ。


「状況終了! 通常警戒態勢に戻れ!

 奴らの追跡は、第4優先命令とする!」


 通常警戒態勢が第3優先命令あつかいなので、第4優先命令は「通常業務の間にたまたま見つけたら対処せよ」という意味になる。

 つまり事実上、放っておけという事だ。

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