第14話 村長が旅立ちました
「ゴホッ、ゴホッ……!
わ、ワシはもうダメのようです……」
「村長、元気出して。僕はまだ……まだ……えっと……その……」
なんか適当な理由をつけようと思ったけど、約束していた「地平線まで続く畑」と「元気な子供であふれて家が足りない」は達成しちゃったんだよなぁ……。
移住者が増えた影響で、あっという間に。
「リオ様……約束を果たすの、早すぎです」
「なんかごめん」
フワッと村長が軽くなったように見えた。
きっと魂が抜けたのだろう。その分ちょっぴり軽くなったのだ。
この日、村長は旅立った。
◇
「今日、我々は大きな支えを失いました。モーリスは村長として長くこの村の未来を憂え、人々を支えてきましたが、ついに神の御下へ招かれたのです。彼の魂が神の御下で永遠の安らぎを得られるように……祈りましょう」
マハトマ・パラメディック・ガンジーが、村長の葬儀を取り仕切る。
棺が穴に下ろされ、村人たちの手で埋められた。
「よいしょおーっ!
おはよう、みんな! 今日も元気かね?」
なんか地面から飛び出してきた!
ちっちゃい村長だ!?
手のひらサイズ!
「「うわーっ!?」」
出たぁー!
……て感じでもないな。
「村長? なに? どうなってるんですか?」
「え? ワシにもよく分からんです。
なんか精霊的なアレになった? みたいな?
あ。ちなみに本体はアレですぞ」
指さした先には、マハトマ・パラメディック・ガンジーが回復魔法を注いで育てている木があった。
「どうしてこうなった……」
「はっはっはっ! こっちが聞きたいですな」
「まあ、とにかく元気そう? で良かったです」
「はっはっはっ!」
厳かな葬式の雰囲気はぶち壊れた。
まあ、誰も文句は言うまい。
◇
「ああ……どうすればいいのだろう……」
「おや、これはガンジー殿。
何かお悩みですかな?」
「ああ、これはドンキホーテさん。こんにちは。
導師なら実験農場ですよ。
私は……はぁ……」
「言えないような事ですか? 僧侶でも秘密はあるんでしょうな。私らはしょせん人間ですから無理もない。いつ何を聞かれても困らぬ、とは行きますまい」
「いえ、その……うーん……身内の恥をさらすようでアレなのですが、この村にいると教会に報告できない事が増えていくなぁ、と思いまして」
「できない事はないでしょう?
しても信じてもらえないだけです。むほほほほ。
私もあの芋菓子がまさか、これほどの利益を出すとは想像もできませんでした。話だけ聞いても、かつての私は信じなかったでしょうね」
オムツ用の吸水素材として持ち込んだ芋。
ゼリーのような菓子として食べられていたそれは、今やドンキホーテ・デラマッチャの店で乾燥剤として様々な場面に使われ、100種類以上の商品がその影響で劇的に利益を伸ばしている。
「僧侶の追加派遣は絶望的です。
村長が亡くなりました。
順当にいけば、次は私です。
せっかく明るい未来が見えているのに、寿命などで足を引っ張っては申し訳ない……神よ、どうかもう少しだけ時間をください」
「そうでしたか……村長が……それは寂しくなりましたね」
「あ、いえ、全然寂しくはなってないのですが」
「はい?」
ドンキホーテ・デラマッチャは、僧侶らしからぬ発言に首を傾げた。
「よいしょおーっ!
やあ、ドンキホーテさん! 今日も元気ですかな?」
地面から村長が生えてきた。
どうも村長は地面を通して人を探知できるらしい。
「村長さん!? お亡くなりになったのでは? てか、なんか、ちっちゃい!?」
「はっはっはっ!
あ。リオ様なら実験農場ですぞ」
「ま、まあ、元気そう? で良かったです。
それでは実験農場に行ってみますね」
◇
と、そんな事があったので。
「どうなってるんですか、あれは!?」
ドンキホーテ・デラマッチャは、僕を見つけるなり詰め寄ってきた。
「さあ?」
「さあ!?」
「本人にも分からないらしいですよ」
「本人にも分からないんですか!?」
「ええ」
「そうですか……」
「そうなんです」
「……じゃあ、仕方ないですかね?」
「仕方ないですね」
「「はぁ……」」
ため息が重なった。
村長のことはそれ以上どう言うこともできないので、話題を変えることにする。
「次は木工ですかね。
実はガンジーさんの魔法で植物が早く育つことが分かりまして。森を作るお手伝いをお願いしてあるんですよ」
植樹して回復魔法。
このコンボで劇的に森が拡大している。
ヒール1発で木がドバドバ育つ。あまりに早く育つので、タイムラプスというよりビフォーアフターの比較映像のようだ。
「木工職人を手配しましょうか?」
「お願いします。質実剛健な椅子を作るのが得意な人だと嬉しいですね。
それと、鍛冶師の手配も。今度の木工品に必要な金属部品がいくつかありまして。
ああそれから、ひとつ探してほしい植物があります」
「何でしょうか?」
「ゴムの木です」
「南方の木ですね。輸送コストが高くつきますが、良いですか?」
「ドンキホーテさん」
「はい」
「車椅子を作りましょう」
「詳しく」
食いついてきた。




