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ジャーナリズム

「さて、次はどっちに進むかだが……」

通路は分かれ道になっており、先は薄暗く、どうなっているのかは分からない。普通なら、どちらへ進むべきか迷うところだが――

「俺には関係ないな」

世界の記憶から得た情報によって、俺には進むべきルートが分かってしまう。このゲート内は複雑に入り組んだ通路構造をしているが、ルートさえ把握していれば、トラップもなく遮蔽物も少ない。魔物にさえ注意していれば、十分に踏破可能なゲートだ。

俺は左の通路には目もくれず、そのまま真っ直ぐ通路を歩き始めた。


とあるグループチャット

コウタ「おい鉄矢!ニュース見たか!」

テツヤ「当たり前だろ!今はどこもその話題でもちきりだぞ!」

コウタ「なんなんだあれ!?みんな“ゲート”って呼んでるけど!」

テツヤ「日本ではまだ渋谷だけみたいだが、世界各地で出現してるらしいな」

コウタ「渋谷のライブ映像も見たけど、今は機動隊や自衛隊がゲート周辺を囲んでて、誰も近づけねえ!」

テツヤ「やっぱりゲートって危険なものなのか?」

コウタ「分かんねえけど、ネットじゃゲートに触れたやつが消えたって噂も流れてる!」

テツヤ「まさにファンタジーだな。こんな展開、あいつが見逃すはず――って翔は?」

コウタ「さっきから何回も電話してるのに、全然連絡つかねえ!何やってんだあいつ!」


「今度は二匹か」

先ほどのゴブリンとは違い、一体は木製の棍棒、もう一体はナイフを持っている。最初の戦闘でもそうだったが、なぜか恐怖に呑まれることはない。これも世界の記憶が原因だろうか。あの時から、俺の中の何かが変わった感覚がある。

俺はナイフを構え、戦闘態勢を取った。

「「ギャッギャッー!」」

棍棒を持ったゴブリンが近づき、横薙ぎに棍棒を振る。俺は距離を取り、その一撃をかわした。

「ギャッ!」

攻撃を避けられたゴブリンはむきになり、さらに棍棒を振り回してくる。俺は後退し続けることで、ナイフ持ちのゴブリンと引き離すことに成功した。

「今だ!」

棍棒が大きく横に振り抜かれた瞬間、俺は姿勢を低くして回避し、持ち手を蹴り上げた。

「ギャー!!」

悲鳴を上げるゴブリンをよそに、俺は腹部へ膝蹴りを叩き込む。ゴブリンはその場に倒れ込んだ。

「次っ!」

視界に、ナイフを持って飛びかかってくるゴブリンが映る。俺は自分のナイフを投擲した。

「ギャッ……」

ビュン、という鋭い音とともに、ナイフはゴブリンの額に突き刺さり、そのまま絶命した。

「余裕だな」

ナイフを回収し、そう呟いた瞬間――背後から、倒れていたはずの棍棒持ちのゴブリンが立ち上がり、襲いかかってきた。振りかざされた棍棒は翔の頭部に迫ってくる。だが、

「甘いな……」

俺は即座に振り向き、心臓部へナイフを突き立てる。ゴブリンは一瞬で事切れた。

「よし……だいぶ慣れてきたな」

数度の戦闘を経て、スキルの使い方も理解できてきた。スキルランクは一つ違うだけで大きな差を生むが、絶対的なものではない。使い方次第では、その差を埋めることも可能だ。つまり、自分より上位ランクの所持者にも勝てる可能性がある。

スキルの習熟は、今後俺が強くなるうえで欠かせない。

「さて……そろそろ終わらせようか」


数時間前 渋谷ゲート周辺

渋谷では今もなおゲートが厳重に封鎖され、その周囲には話題を嗅ぎつけた多くのメディアが集まっていた。

その報道陣の中でも、ひときわ注目を集める女性がいる。

彼女の名は木下彩(きのしたさやか)。二十五歳の敏腕ジャーナリストだ。鋭い嗅覚と、その美貌は業界内でも広く知られている。

「ゲートが現れて数時間……政府は警戒態勢を取ったまま、動かないつもりなのかしら」

紛争地域を含む数々の危険な現場を取材してきた彼女の経験が、警鐘を鳴らす。

――これは危険だ。このままではいけない。

「多分、このままでは終わらない。きっと、とんでもないことが起こるわ」

彩がそう呟いた直後、渋谷の野外スクリーンにニュース映像が映し出された。先ほどまで騒がしかった街は、不思議なほど静まり返る。

「緊急ニュースです。世界各地に出現したゲートから、未確認生命体の出現が確認されました。中国、インドをはじめ、複数の地域で同時に発生しています。各国政府は軍を派遣し、迎撃体制に入りました」

その瞬間、静寂のあとに渋谷全体がざわめいた。

「...スタンピードだ」

誰かがそうつぶやく

民間人も、メディアも、警察や自衛隊でさえ理解したのだ。

――目の前のゲートも、例外ではないと。



現在、世界中にゲートが出現しており、その数は今後も増え続けるだろう。

ゲートを減らすには、内部を踏破し、閉じるしかない。

その鍵となる存在――

「守護者」

翔の前には、いわゆるボス部屋と思われる扉がそびえ立っていた。高さ十メートルを超える石造りの扉には、謎めいた紋様が刻まれている。周囲は広々としているが、その扉だけが異様な存在感を放っていた。

「ここが、守護者の部屋か」

守護者を倒せば、ゲートは閉じ、消滅する。

俺が見た未来では、政府が侵入を躊躇した結果、ゲートから魔物が溢れ出し、多くの被害が出ていた。

だが、俺は未来を知っている。

今の俺なら、このゲートを攻略し、日本への被害をゼロに抑えられるかもしれない。

いや――俺がやらなければならない。

俺が扉に手を触れると、重厚な音を立ててゆっくりと開き始めた。内部から強風が吹き荒れ、緊張感が高まる。

俺は覚悟を決め、一歩を踏み出した。



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