スキル覚醒
「ここは……」
視界が切り替わった瞬間、俺は言葉を失った。
周囲には限りなく広がる宇宙空間。彼方には無数の星々が輝き、俺を取り囲んでいる。目の前には、浮かぶ大量のカードが一面に並んでいた。
「ここが……精神世界か」
世界の記憶によれば、ゲートに初めて入った者は、自身の精神世界でスキルを一つ選べるらしい。
「こりゃあ、すごいな……」
改めて見回すと、俺の背丈どころか、視界いっぱいにカードが積み上がるように並び、圧倒される。これらすべてがスキルで、しかもここにあるのは“ごく一部”に過ぎないという。
スキルにはE〜Sまで6段階のランクがあり、ランクが上がるほど取得難易度が跳ね上がる。
使用していればランク自体は上がるが、取得時点で高ランク、ましてやSランクを得るのはほぼ不可能だ。
「……のはずなんだけどな」
俺は思わず笑みを浮かべた。
カードは通常裏向きで、内容を見ることはできない。しかし俺は違う。世界の記憶が流れ込んでいるため、カードの“中身”が透けて見えてしまうのだ。
「少しズルい気もするが……まあいいか」
深く考えるのをやめて、カードを選び始める。
「さて、どれにするかな」
何枚も眺めていると──
「ん? これは……」
一枚のカードに目が止まった。
【S級スキル:身体強化】
身体能力を強化するスキル。
S級効果:身体能力・五感・魔力量の大幅増強
「身体能力が上がれば戦える幅も広がるし……常時発動のパッシブスキルってのも魅力だな」
俺は迷わず決めた。カードがふわりと目の前へ降りてくる。
手を伸ばした瞬間──
「っ!?」
カードは光の粒子に変わり、俺の体に吸い込まれた。
「……すげぇ」
スキルの扱い方が、脳に直接流れ込んでくる。
未知の感覚に息をのむ。
「これがスキルを獲得した感覚か…」
俺が初めての感覚に感動していると
「うおっ!?」
突如光に包まれ、思わず目を閉じる。
そして、目を開くと──そこは石造りの通路だった。
「遺跡……か?」
壁も床も石で作られ、通路はまっすぐ奥へ伸びている。幅は五メートルほど。
「灯りもないのに明るいな」
辺りが青い光に照らされているのに気づき、壁を見る。
「これは……ヒカリゴケか」
世界の記憶によれば、暗い場所に自生している光る苔だという。
おかげで視界は十分だ。
ポケットから買っておいたナイフを取り出す。警察に会わなかったのは不幸中の幸いだった。
この格好でナイフなんか持ち歩いていたら、言い訳ができない。
「さて、行くか」
カツ、カツ……
静寂の通路に俺の足音だけが響く。
「何もいないな」
歩き始めて数分。魔物の影はないが、いつどこで遭遇するかわからない。
そんなとき──
「分かれ道か」
前方に左の曲がり道と直進の道。俺が角へ近づいた、その瞬間。
「ギャッ!」
「っ!?」
何かが飛び出し、そのまま拳を振りかざして突っ込んできた。
俺は反射的に後方へ跳び退く。
姿を確認すると、緑の肌、尖った牙と爪。
140センチほどの体格で鋭い目を光らせている。
「……ゴブリン、か」
ラノベ好きなら誰でも知っているあのモンスター。
世界の記憶では、成人男性より強く、スキルなしの一般人には厳しい相手だ。
「初戦には丁度いい」
俺の胸が自然と高鳴る。
俺はナイフを構えて地面を蹴る。
──その瞬間。
「ズドォン!!」
凄まじい音とともに、気づけば俺はゴブリンの首を切り落としていた。
「ドスン」
ゴブリンの胴体は崩れるように倒れ込む。
「……俺が、こんなことをできるようになるなんてな」
ナイフについた血を払う。
振り返ると、さっきいた場所の床が大きくえぐれていた。
自分が手に入れた力の異常さを痛感する。
「さて、次は……」
ゴブリンの死体に近づく。
魔物の心臓部には魔石がある。これは莫大なエネルギーを秘めており、火力や原子力に代わる発電方法としても研究されている……まさしくエネルギー革命だ。
俺はナイフを胸に突き立て、解体して魔石を取り出す。
解体が終わり魔石をポケットにしまうと、俺は立ち上がった。




