到着
「なんでみんなこんなに暗いんだ?初登校に緊張してるにしては落ち込みすぎじゃないか?」
気まずい雰囲気に耐え切れなくなった俺は、横のシートに座っている一番近い男子に声をかける。
話しかけられた男子は、ゆっくりと顔を上げてこちらを向く。
「そりゃ高校なんて嫌だからだよ。逆になんで君は楽しそうなんだ」
溜息をつくように答えて、向こうは向こうでこちらの顔を覗き込んでくる。
「そういえば君の見送りに女子がいたね。女子と一緒に住んでいるとこんなに違うものなんだね」
といい一人で勝手に納得げな顔をする。
見てたのか、と思いつつ、浮かんだ疑問をぶつけてみる。
「そんな珍しいものなのか?姉か妹がいる家庭なんて普通にあると思うけど」
質問された男子はじっと俺の目を見てくる。
「女子に抵抗がないからそう思うんだね。まぁ家族も詳しく教えてしまうと、じゃあ俺もそうする、なんて言われかねないし」
答えになっていない回答をするので、黙って話の続きを促す。
「確かに男子が産まれるまで子供を作り続けて、姉がいっぱいいる家庭は珍しくないよ。でも男の子に物心がつき始めてすぐあたりに別居するのが普通なんだ。歳の近い女がずっと一緒にいるなんて恐怖でしかないからね」
恐怖ってなんだよ。この世界の女子はそんなに狂暴なのだろうか。
「中途半端に女性に慣れさせちゃうと、防犯意識が低い年齢に差し掛かった年代で誘拐されるってことも昔はあったらしいし。それば護衛官が導入される前の昔の話らしいけど。だから親が心配して進んで別居させる家もあるね」
なるほど、もの珍しげに聞いている俺のことを同じく珍しい様子で見てくる。
男子の話を聞きながら、その顔の向こうにある窓から薄暗くも見える景色を眺めていた。外には多くの人が歩いているが、ほとんどが女性のような気がしてきた。
もちろん全員というわけではないが、大半は女性だ。それに気づいてからは、その傾向が非常に顕著に感じられる。たまに見かける男性も、ひとりで歩いているものは皆無で、必ず何人かの女性を引き連れている。そして見かけるのは車から目的の建物に出入りする瞬間だけだ。
この目の前の男子から聞いた話と外の光景を組み合わせると、一つの可能性が浮かんでくる。いや、その可能性は非常に高いだろう。
もしかして男の数が少ないのではないのだろうか?




