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男女逆転世界でクズ男が奴隷を侍らせる  作者: 札幌在住太郎


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2/7

突然の死


「この車に轢かれたらもう出社しなくてもいいのかな・・・」


たくさんの車が行き交う横断歩道を見て、無意識ながらにひとりでつぶやいていた。


まだ朝日がのぼったばかりで薄暗く、周りに人もほぼいないため誰にも聞かれなかったが、そんなことを気にする余裕がないほど、その男の目はぼんやりとしていた。


思えば、今日は自分の誕生日であった。35歳。ついにアラフォーへ到達してしまった。


むかし思い描いた大人は、こんな生活だっただろうか。こんな生活を送るとわかったら大人になりたいと願っただろうか。そういえば夢なんかあっただろうか。


回らない頭でそんなことを考えていたら、信号が青に変わった。


おぼつかない足取りで前に進む。ふらふらと歩をすすめ、一先ずの目的地である駅に到着する。


慣れた手つきで定期券を取り出し、挨拶を通り抜け駅構内に入る。


駅ホームへのエスカレーターに乗り、しばし目をつぶって少しでも英気を取り戻す。


始発のため人はまばらで、とても静かなため短時間でも効果が感じられる。


ホーム上部にある電子掲示板に目をやると、電車の到着まであと2分ある。毎日の行動なのでこの時間調整も完璧になっていた。それは誇らしくもあり悲しい性でもあると自身は感じていた。


いつもと乗車位置へとゆっくりと向かい、ホームドアの前に立つ。電車が到着するまであと1分ほどだろう。今日の仕事内容をいやいやながら考え出した。だが昨日の続き作業のため考える余地もないと思考を放棄した。


思えば昨日もいつものように終電で帰っていた。いつものことだ。この会社に入ってから毎日。それこそ毎日である。休みなんかあった記憶もない。残業代もない。出勤実態も残らないのでどこかに訴えることもできない。


終電で帰り始発で出勤する。それがいつもの毎日だ。ほかの生き方など模索する暇もない。そのための金ももちろんない。このまま死ぬまでこのままなのだ。


今まで何百回も浮かんできたそんな軽い絶望感も、電車到着を告げるアナウンスで霧散する。


右を見ると、電車の灯りが近づいてきた。その時、通常なら到着まで閉まっているはずの目の前のホームドアが開き始めた。初めてのことに混乱するが、ぼんやりしているためそれを何もすることなくぼうっと観察していた。


その時、背後から強い衝撃を受けた。誰かに突き飛ばされたのか、それとも偶然ぶつかってしまったのか。はたまた衝撃など勘違いでただ立ち眩みを起こして前に転んでしまったのか。


後ろを確認する暇などなく、なすがままにホームドアの隙間に身体が吸い込まれていく。視界の端っこには強い光が近づいてきている。電車の走行音に甲高いブレーキ音が響き、ただただうるさいなぁ、と思っていた。それと同時に、開放感にも包まれていた。


そして、視界が真っ暗になった。





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