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第五話 真夜中の侵略者!?

真夜中、三時頃。

 葛山宅に、異変が起きた。

「お嬢様がいらっしゃるのは、このお部屋のようですね」

「きっとそうやろう。お嬢様の荷物にこっそり忍ばせたマイクロ型GPSが反応を示しとるし。それにしても体が重い。これが地球の重力か。何度も地球へご来星されているお嬢様達は1Gに慣れとるようやが、うちにはきついわ」

「お嬢様達、いましたよ。気持ち良さそうにぐっすりと眠っております」

「うわっ、おっ、男の子も、いましたよ、隊長。里緒お嬢様と舞羽お嬢様に挟まれるように眠っております。とても幸せそうです」

 平祐と三姉妹が寝ている部屋の窓から、黒い布を顔以外の全身に纏った大勢の侵入者が――。

「お嬢様達がまだ地球から飛び立ってないようなので、最高時速一二万キロの超高速宇宙船で飛んで来てみたら、男の家に泊まっているとは――有馬温泉の旅館かホテルに滞在するとおっしゃっていたのに。やはりまだお嬢様達だけでの地球へのご旅行は早過ぎたようですね。この男、お嬢様達を監禁したな。こいつを即処刑せねばいかん!」

 そのうちの隊長と呼ばれる女性が険しい表情で平祐の寝顔を見下ろしながら、小声で言った。

他の侵入者は平祐の周りを取り囲む。みんなまるで忍者のように、物音はほとんど立てずに行動していた。

「おい、起きろっ!」

 そののち、隊長は中腰姿勢になって囁くような声で命令し、平祐のほっぺたをペチペチ叩く。

「なっ、何? うわっ」

平祐は目を覚ますやびくっと反応してガバッと上体を起こす。彼はこの人他数名から銃口を突きつけられていた。

「だっ、誰だよ? おまえら」

 ぽかーんとした表情で周囲をぐるりと見渡す。

数えてみると八人いた。全員女性だった。

「関西人の少年、おはようさん。ワタクシ達はお嬢様達の護衛隊でまんねん。先ほどキビノヌ星から大急ぎで飛んで来たでまんねん」

 護衛隊長はどこか照れくさそうにしながらも、険しい表情で伝える。 

「?」

 平祐は思わず笑ってしまった。

「何がおかしいでまんねんっ?」

 銃口を鼻頭に突きつけられ問い詰められると、

「あの、今時、関西人でも、まんねんって言う人なんて、ほとんどいない、ですよ」

 平祐は途端に顔をこわばらせ、唇をカタカタ震わせながら教える。

「ほんまでっか? 地球の日本の関西地方で暮らす人々の日常会話表現だと近所のおばさんから教わったぞ。せやから言葉が通じるように、事前にワタクシ達護衛隊の皆で日本語のうち関西弁と呼ばれる方言の勉強会までして来たのに。まあ、とにかく、おまえを始末するでまんねん」

「処刑じゃ、処刑じゃぁ!」

「覚悟しろ、地球の少年」

「一瞬で済ますから、怖がらんでもいいねんで。ニンニン」

 もう三人の護衛に両こめかみと後頭部に銃口を突きつけられると、

「まっ、待ってくれ、落ち着けって。俺が、何をしたって言うんだよ?」

 平祐は強い恐怖心からか身動きが取れなくなってしまっていた。

「とぼけるなっ! 貴様、お嬢様達を監禁しただろ?」

 隊長は平祐の鼻頭に銃口を突きつけたまま、きつい口調で問う。とは言っても三姉妹を起こさないようにするための配慮なのか、小声で迫力はなかった。

「しっ、してないよ」

 平祐はかなり怯えながら手をぶんぶん振りかざして主張するが、

「嘘付けっ!」

 全く信じてもらえなかった。

「ほっ、本当だって」

 平祐は今、こんな時、側に姉ちゃんがいてくれたらな、と心の中で思っていた。

「では、お嬢様達はなぜ貴様の側にいる?」

 隊長は怒りに満ちた表情で問うた。

「それは、この子達から、誘って来たんだ」

 平祐はこう主張したが、

「分かり易い嘘をつくな、まんねん」

 隊長は信じてくれず。

「キミ、往生際悪いどすえ」「地球人は嘘つき星人でまんねん」「あなた、草食系っぽいし、お嬢様みたいな大人しいタイプの子を狙ったんでっしゃろ?」「どないやねん?」 

 他の護衛も同じだった。コソコソ言い合う。

「しっ、信じてくれよぉ」

 平祐は今にも泣き出しそうな表情で主張したが、

「問答無用でまんねん、皆も容赦なく撃てぇっ!」

 隊長の構えていた銃の引き金が引かれ、発射されてしまった。

 一発、平祐の鼻頭に諸に命中する。

 ほぼ同時に両こめかみと、後頭部にも。

 計四発食らわされたのだ。


 しかし、それでも平祐は生きていた。


しかも、顔が粉々にされたどころか、血が一滴たりとも出ていなかったのだ。

「あれっ? 痛く、ないぞ」

 平祐は呆気に取られていた。

「ん? この色、この匂い、これって……」

 頬を伝ってパジャマの上にぽたぽた流れ落ち続ける、薄黄色の液体を見て彼は目を丸くする。

「レモンティじゃ……」

 こう呟くと、

「その通りだ。砂糖未使用、口に入ったら酸っぱいぞ」

 隊長は得意顔で言った。

 次の瞬間、

「おねしょの刑どすえ!」

 護衛のもう一人が、平祐の股間目掛けて銃を撃った。見事直撃する。

「冷たっ」

 平祐は思わず声を上げる。

「どうだ! この色、おしっこそっくりやろ? っていうかキミ、さっきリアルに漏らしたとちゃいますの?」

 撃った本人はにやにや笑う。

「あのう……」

 平祐が意表を付かれた攻撃に呆然としていたところ、

「なんか、騒がしいわね」

「何の音ですかー?」

「うるさいよぅ」

 三姉妹も目を覚ました。

「あら、難波さん、どうしてここに?」

 愛紗美は、銃を平祐の眼前に向けていた隊長に不思議そうに尋ねる。

「お嬢様達、お目覚めですか。貞操はご無事ですか?」

「今すぐお嬢様達をキビノヌ星へ連れて帰りますので、ご安心下さい」

「お嬢様達も、いくら現地の生活に密着したいからといって、男の家に寝泊りするなんて、不純過ぎます」

「この男、ばっちり処刑しといたよ」

 護衛部隊の方々は口々にこうおっしゃる。

「落ち着いて下さい皆さん、じつはですね――」

 里緒は眠たそうにしながらも護衛隊の方々に、自分達がここに泊まるようになるに至った経緯を冷静に説明した。

「……そういうことでしたか。平祐さん、でしたね。早とちりしてしまい申し訳ございません」

 隊長は事情が分かると平祐に向かって土下座姿勢で謝罪した。

「ごめんね」「冤罪やったんかぁ、ごめんな」「うちの頭、ハリセンで叩いていいよ」

他の護衛も同じような形で。

「いやいや、俺、べつに気にしてないから」

 平祐はけっこう戸惑う。

「それでは、失礼致します。お嬢様達も、お気をつけてお帰り下さい」

 隊長の難波さん、他七名の護衛は窓から外へ出て、続々と葛山宅庭に留められてあった一隻の大型宇宙船に乗り込んでいく。

 その宇宙船の形は、まるでチョコレートケーキのようであった。

「平祐ちゃん、災難な目に遭わされちゃったみたいね。元はといえば、わたくしがあの子達に帰りが遅れること連絡するのを忘れたせいだわ。ごめんね平祐ちゃん」

 愛紗美はぺこんと頭を下げる。

「平祐お兄ちゃんを悪い人だと思っちゃうなんて、あたし達の護衛は用心深過ぎるね。大丈夫? 平祐お兄ちゃん」

 舞羽はとても心配してくれ、頭を撫でてくれた。

「大丈夫。だけど俺、あの人達に銃で撃たれる直前、死を覚悟したよ。水鉄砲で本当によかったぁ」

 まだ恐怖心から若干震えていた平祐に、

「キビノヌ星の人々は争い事を好まず、とっても温厚ですから人殺しなんてしませんよ。キビノヌ星では戦争も殺人行為も過去に遡っても存在しません。わたし達の護衛の役割は、わたし達が蛇や虫的な自然界の生き物に刺されたり噛まれたりしないかとか、石につまずいて転んだりしないかということを見守ることなのです」

「あと熱いお茶やスープをふーふーもしてくれるよ。正直ちょっと迷惑。そこまでしてくれなくてもって思ってる」

 里緒と舞羽は笑顔で説明した。

「そうなのか……平和だな。パジャマがレモンティ塗れだよ。下着まで染みてる」

 平祐は苦笑いを浮かべる。すぐにお部屋から出て自室へ向かい、新しい下着とパジャマと持って洗面所兼脱衣場へ。着替えた後、汚された下着とパジャマを水で洗って絞り、続いて自分の髪の毛と顔を洗って、タオルで拭き取る。

 洗った下着とパジャマは洗濯籠に入れておくと後で母におねしょを疑われかねない、と危惧した平祐は、それは自室に干しておくことに決めた。

 平祐が再びこのお部屋に戻って来た時には、三姉妹は再びぐっすり眠っていた。平祐も安心して二度目の眠りにつく。

 この騒動は両親も、遥子も全く気が付かなかったという。


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