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第6話


 あたしはリリに憧れている。


 リリは工作が得意だった。粘土で作る猫ちゃんはいつも可愛かった。


「ねこちゃんかわいいー!」

「えへへ!」


 リリは絵が上手だった。クレヨンで描くイラストはいつも綺麗だった。


「これリリでしょ! キラキラしてるもん!」

「そうだよ! それでね、これがココ!」

「おてて繋いでる!」

「そうだよ! リリとココはずっと一緒なの!」

「あははっ!」


 あたしはリリの手を握った。


「リリ、だーいすき!」

「リリも、ココだーいすき!」


 リリは親友だった。


「ココはね、リリと死ぬまで一緒にいるんだ!」

「死ぬまでなんてやだ! 死んでからは一緒に天使になって、死んだ人を迎えに行こうよ!」

「あっ! 天使ごっこしよ!」

「あははは!」


 小学校に上がったら、リリ以外の友達がいることを知った。


「ねえ、ココ」

「あ、ちょっと待ってて。エリちゃーん」

「あっ……」


 三年生で、クラスが別々になった。


「ココ遊ぼー」

「うん! 遊ぼう!」


 ドッジボールをしたメンバーの中に、リリはいなかった。


 あたし達は完全に別の友達と遊んでいた。


「ユウジ君、好き。彼氏になってください」

「いいよ」

「やった!」


 帰り道、手を繋いで帰った。でも、


「ごめん。リリのこと好きになったから別れてほしい」

「えー……んー……わかったぁー……」


 一ヶ月後、リリとユウジ君は別れた。


「リリってめちゃくちゃ頭良いよね」

「いつも満点取ってるんだって」


 そこからだろうか。妙に、リリが気になるようになった。


「リリちゃん、歌、超上手いんだよ!」

「ダンスも上手なの!」


 みんなリリのことばかり。


「シュン君、好きなんだけど……」

「あー……ごめん。リリのことが好きなんだ」


 みんな、リリばかり。








 ――仏壇の鐘が鳴った。正座したあたしは、肩を震わせた。突然、スマートフォンの着信が鳴った。お父さんがポケットから取り出し、そそくさと立ち上がった。


「お世話になっておりますー! 今ちょっと身内の葬式でしてぇー!」


 親戚のおばさん達が顔を見合わせる。

 あたしは悲しみと怒りで拳を握る。

 お母さんを雇ってた会社の人達が「信じられない」という、驚いた顔をした。

 式が終われば、大人達の飲み会が始まった。


 あたしはいつまでもお母さんの側から離れなかった。


「可哀想に……」

「あの年でお母さん亡くすのはねぇ……」

「これからあの男が引き取るの?」

「いや、あの人他に家庭があるから無理でしょ」

「そうなの!?」

「やだ、じゃあ……どうするの?」

「誰か引き取るんじゃないの?」



「ココちゃん」



 両肩を優しく触れられ、振り返ると……リリのお母さんだった。


「大丈夫?」

「……」

「そんなわけないよね。そうだよね」


 あたしの背中を優しく撫でる。


「ごめんね。ちょっとお話しできるかな?」

「……はい……」

「ちょっとお外に出ようか」


 優しいおばさんはあたしを外へと連れ出すと――リリのお父さんと、リリが待っていた。


「……ココ……」

(あっ……)


 リリがあたしの両手を握りしめた。久しぶりの交流だった。


「おば様……残念だったね」

「……癌だもん。……仕方ないよ」

「ココ……」

「ココちゃん、あのね、急な話なんだけど」


 おばさんがあたしに言った。


「うちに来ない?」


 ……思わずおばさんとおじさんを見た。おじさんも、あたしを強く見つめていた。


「ココちゃんのお母さんとはね、当時から仲良くさせてもらってたから、本当に残念でね」

「……」

「それで……訳ありとは聞いてたけど……、その……お父さん? ……あんな人に、正直ね、……ココちゃんを任せられないっていうのが、おばさん達の個人的な意見なのね? それで……」


 リリがあたしの両手を強く握った。


「どうかな? ココちゃん」

「……」

「急がなくてもいいよ。良かったら……今夜リリがここに宿泊したいって言うから……ちょっと考えてみてくれる?」


 宿泊スペースに布団を並べて、久しぶりにリリの隣で眠る。蝋燭の匂いがする。綺麗な天井を見つめる。


 何時間経っただろう。

 眠くならない。

 ずっと泣いていたから疲れているはずなのに、

 全く眠くならない。


 ――突然、声をかけられた。


「眠れないの?」


 隣を見ると、リリがあたしを見ていた。


「おばさんの側に行く?」

「……」

「行こう?」


 リリが起き上がり、無気力なあたしを起こした。二人で暗い部屋に置かれた棺桶の前に座り、手を合わせる。目を瞑ると、まだお母さんがいるみたいで、まだお母さんが生きているようで、あたしは俯き、気がつくと、大量の涙を落としてた。


 リリがあたしに寄り添い、あたしの背中を撫でていた。


「……ココ、うちにおいで」


 優しい声で、リリが言った。


「私ね、ココが悲しんでるの見て……ココのお父さんの姿見て……お父さんとお母さんに相談したら……二人とも、構わないって。だから……」

「……養子になるってこと?」

「ううん。ココがそうしたいっていうなら、手続きするけど……あくまで、生活の支援者って形になるんじゃないかな?」

「高校とか……」

「心配ないよ」

「制服代とか……教科書代もかかる……」

「ココ、お父さんとお母さんね、そういうのも覚悟の上でココを引き取るって言ってくれてるの。だから……」

「家から出なきゃいけない」


 リリが口を閉じた。


「お母さんと過ごした家から、出ていかないといけない」


 あたしはただ泣くことしかできない。


「お父さん……家くれるって言ってた。使う必要がないからって。……生活費も、高校までは出してくれるって」

「ココ」

「こういう状況だからこそ、あたし、強くならないと」


 袖で顔を拭う。


「甘えられない」

「ココ」

「あたし、頑張らないと……」

「頑張らなくていいよ。ココ、まだ中学生なんだよ?」

「家から出たくない……」


 手を伸ばせば、お母さんのいる棺桶に触れられる。


「お母さんとの思い出……忘れたくない……」

「……」

「あたし、家にいたい……」

「……ココ……」

「一人で暮らす……」


 希望はない。涙しか出てこない。この先のことが考えられない。どうしていいか歩くべき道がわからない。不安しかない。お母さんはもういない。怖い。未来が見えない。


 あたし、怖い。


「ココ」


 リリがあたしを抱きしめた。


「私が側にいるから」


 リリの優しい声が、あたしの耳に流れた。


「ずっとココの側にいる。だから泣かないで。ココ」


 一人で泣いて震えるあたしの体を、リリが優しい手で撫でた。


「ココ、大好き。私が側にいる。絶対ココに寂しい思いなんてさせないから」

「だから……」

「ココ」

「家においで?」


 あたしは首を振った。


「……家から出たくない」

「……」

「でも……ありがとう」


 リリの手の上に手を重ね、久しぶりにリリに向き合った。リリは、見ないうちに美しい星に成長していた。みんながリリを好きになる理由が分かった。美人で、可愛くて、明るくて、優しくて――。


 あたしとは、正反対の女の子。


「あたしは一人で大丈夫だから」


 リリがあたしを見つめた。あたしは微笑んだ。リリが真顔になった。あたしはそれを見て、そっと近づいた。


「大丈夫だよ」


 リリが目を見開いた。


 ――あたしの唇が、リリの頬にキスをした。


「ありがとう。リリ。励ましてくれて」


 ほのかな蝋燭だけが灯る部屋の中で、リリの耳に囁いた。


「でもね、思うんだ。あたしにはあたしの人生があって、リリにはリリの人生がある。リリの人生の中に……あたしは……やっぱり入れないよ」


 リリの耳から離れた。リリの青い目があたしを見つめてくる。


「リリのことは嫌いじゃないの。でも……正直、昔と比べて……あたし達、随分と離れたよね」

「……私は離れたなんて思ってない」

「リリは優しいから。でも……」


 あたしは首を振った。


「あたしは……そこまでの関係じゃないと思う」

「……何言ってるの? ココ」

「だから……リリがそんなに気を遣う必要ない」


 あたしの手の力が緩む。


「お互いの人生を精いっぱい生きよう?」


 リリがあたしの手を強く掴んだ。


「あたしは大丈夫だから。リリ」

「駄目」

「リリ」

「そんなの駄目」

「おじさんとおばさんに……あたしがありがとうって言ってたって、言ってもらっていい?」

「一緒に住もう? 一人で住むなんて無理だよ」

「ううん。あたしやってみる」

「無理だってば」

「やってみなきゃわからないでしょ」

「無理だよ。ココ、鈍くさいもん」

「……酷いこと言わないでよ。……冗談でも……傷付くよ」

「だから、ココは誰かに頼らないと生きていけないの。私が側にいる。家にいてもいいから、週に一回は私の家で過ごすとか……」

「リリ」

「ココ」

「……懐かしいな。リリはそうだった。自分の思い通りにならないと、そうやってすぐに怒り出す」

「……」

「子供の時は……それでどうにかなった。でも、もう中学生で、ちゃんと、これからのことを考えないといけない。思い通りになんていかない。お母さんは死んじゃうし……あたしは一人」

「だから」

「でも、だからこそ……しっかり自立しないと」


 リリがあたしを睨む。


「睨んでも駄目だよ。リリ」

「……やだ」

「リリは優しいね」

「ココの側にいる」

「リリ」

「絶対離れない」


 リリが勢いよくあたしを抱きしめてきた。


「私、絶対ココから離れない」

「……うん。ありがとう」


 昔なら――きっと、承諾したのだろう。

 だけど、今と昔は違いすぎる。

 リリは【昔は】親友だった。

 でも、今は――ただの――顔の知ってる――幼馴染。


 赤の他人のリリの家族の元に行って、邪魔者扱いされたくない。

 邪魔者扱いされるなら――惨めな思いするくらいなら……一人の方が良い。


 お母さんと暮らした家で、生きていきたい。


「……リリ、本当にありがとう」


 情に熱いリリは、あたしの背中に爪を立てる。


「大好きだよ。リリ」


 なんだか、別れの言葉みたいだね。


「……私も大好きだよ」


 リリの腕に力が入った。


「ココ」


 そして、強く――あたしを抱きしめた。















 ――目が覚めると、空気が冷たかった。


 体がぶるりと震えて、シーツの中で丸くなる。そして、何も着ていないことに気づいた。


「……っ……!」


 辺りを見回すと、地面に下着が落ちていて、あたしは慌てて拾って着替え始める。


(……そうだ。あたし……昨日……リリに……なんか……変なことされて……)


 ベッドに振り向く。


(あ……)


 ――ベッドが血で染まっていた。


(え……うわ……これ……血……生理……? あれ……どうしよう……えっと……洗濯……)


 シーツの中がもぞもぞと動き始める。二つの白い手が中から伸びて、青い顔でベッドを眺めるあたしを背後から捕まえた。


(……あ……)

「ん」


 ――何も着てないリリが、あたしを大切に抱きしめながら目を覚ます。あたしの肩に顎を乗せて、微笑んだ。


「……ココ……おはよ……」

「……おはよう……」

「……どうしたの?」

「血が……」

「……あー……」


 リリが血を眺め、嬉しそうに笑い、あたしを引っ張った。


「うわっ!」

「後から洗えばいいじゃん」

「いや、あれ、多分、あたしの、血だよね? なんか、昨日、血が出てたから……!」


 そこであたしははっとして、下着を見下ろした。


「生理になったかも!」

「んーとね、生理じゃないんだな」

「え? でも……血……」

「ぱんつは脱いだら?」

「ベッド汚れちゃう……」

「ナプキンしないとね。大丈夫だよ。4日くらいで止まるから」

「……そうなの?」

「うん」

「……あの……」

「うん」

「昨日の……あれ、なんだったの?」

「えっち」

「……」

「セックス」

「……えっ」


 あたしの顔が――一気に熱くなった。


「え、せ、せっく、って、え、え?」

「あははははは!!」

「や、だ、だって……」

「もー! ココー!」


 リリがあたしを抱きしめ、頬にキスしてきた。


「んっ」

「……っんとに……可愛いんだから……」

「ぁぅ……」


 顔中にリリの唇が降ってくる。


「リリ……んっ……待って……」

「やだ」

「あっ、り、リリ……!」


 リリがあたしのキャミソールに手を入れ込んだ。


「な、ま、待ってって……!」

「ココの匂いがする」


 リリがあたしの首筋に鼻を添わせた。


「同じシャンプー使ってるのに、おかしいね。ココ、すごく良い匂いする」

「……臭くない?」

「全然。すごく良い匂い。安心する」

(……リリは優しいな……。……あ……リリ……良い匂い……)


 リリがあたしの肌に鼻をなぞらせ、匂いを嗅ぐ。恥ずかしい。絶対汗で臭いのに。


「ココも……抱きしめて……?」

「あっ……ごめん……」

「うふふっ! いいよ……あっ……」


 頭を撫でると、リリが嬉しそうに笑った。


「それ気持ちいい……」

「……気持ちいい?」

「うん。気持ちいい……」

「……なら、……良かった」


 リリを撫でる。リリがあたしの胸に顔を埋めたまま動かなくなる。……あたしの手が止まる。リリがあたしを見上げてきた。


「……ココ?」

「……もし……カナダに行くなら……」


 お母さん。


「置いていかないと……駄目かな……」

「……遺骨だけ持っていけば?」

「……」

「飛行機、いけるよ。遺骨」

「……本当?」

「うん。大丈夫。持っていこう」

「……良かった……」


 リリを抱きしめると、リリがきゅっと身を縮こませて、……静かになった。


「あのね……、……お母さんの……お葬式の時の夢見てた」

「……そっか」

「あの時……ほら、おばさんが……家に来ないかって誘ってくれたでしょ?」


 あたしはリリに微笑んだ。


「行かないで正解だったね」


 リリがあたしを見上げた。


「行ってたら……あたし、もっと早い段階で……おかしくなってたと思う。……もっと早いうちに……リリを殴ってたかも。ううん。殴るどころじゃなくて……もっと……包丁で刺すとか……」


 リリが笑みを浮かべ、あたしの顔に近づいた。


「……やってたかもね。……あたし……本当……馬鹿だから。……先が……いつも見えてないくせに……一人で進もうとして……空回るから……」


 リリがあたしに覆いかぶさった。


「リリ……」


 リリの唇と、あたしの唇が重なった。唇が離れたら、お互いを見つめ合う。リリの髪の毛があたしに垂れた。きらきら光る金の髪。本当に――リリは、妖精みたい。どうしてこんなに綺麗なんだろう。


 恥ずかしいな。寝起きの顔、見られたくない。


 ――ふっ、と顔を逸らした。

 ――リリがあたしの顎を掴み、中心に戻した。


「どこ見てるの?」


 そこには、透き通って美しい青い瞳。


「私がここにいるんだから、私を見ないと駄目でしょ?」

「……ごめん……リリ……」


 リリが再び下りてきた。


「リリしか……見ないから……」





 ココの口を塞ぐ。

 虚ろな黒い目が私を見つめる。

 ココ、愛してる。

 ココ、愛して。

 ココ、キスしよう?

 ココ、愛し合おう?

 ココ、ずっと一緒にいよう?


「……はっ……リリ……」


 おばさんが死んで、チャンスが来たと思った。ココを家に呼ぶことができれば、ずっとココと一緒にいられると思った。

 距離が離れた私達は、元の関係に戻れると思った。

 なのに、戻ることは出来なかった。


 ココは私に呪いをかけた。

 頬にキスをされたあの瞬間、私はココへの想いに気づいてしまった。


 ずっと不思議だった。どうしてココのモノが欲しくなるんだろうって。

 どうしてココの邪魔をしたくなるんだろうって。


 欲しかったわけじゃない。邪魔をしたかったわけじゃない。


 私は、ココが欲しかった。

 幼馴染じゃない。

 私は、ココを愛していた。

 いつからかは、わからない。

 ココのキスで全てがわかった。

 ココの好きな人を好きでもないのに奪ったのも、ココの点数よりも上の点数を取るよう頑張っていたのも、皆にいい顔していたのも、全部、私が、ココを、愛して、ココに――構ってほしかったから。


 ココの手を強く掴んだ。なのに、ココはそれを振りほどいた。必要ないと言って。

 私はココを愛してる。

 でもココは、私を愛してなかった。

 私から離れようとした。


 そんなの、絶対許せるはずない。


「あっ」


 だから奪ってやった。


「やっ……リリ……」


 自尊心も、男も、成績も、評価も、


「あっ……ぁっ……!」


 ココに必要なのは私だけ。


「待って、あ、朝だし、ベッドも……血が……」


 それ以外いらないの。ココは私を愛してくれたらいい。それでいい。


「リリ」


 ――黒くて、強い眼差しに、真っ直ぐ見つめられると――息ができなくなってしまう。


 なんて……綺麗な瞳なの……。


「……駄目だよ……。……今は……」

「……」

「その、な、中も……ヒリヒリ、するの。だから……駄目……」

(……昨日、やり過ぎちゃったか……)


 仕方ないよね。だって、ココが可愛かったんだもの。ココの頬にキスをする。ココの肩が揺れた。あ、可愛い。きゅんって、心臓が鳴っちゃった。


「……わかったよ。ココ」


 一言言えば、ココがホッとした顔をして……起き上がった。


「ベッドのシーツ、取り替えないと」

「殺人現場みたい」

「……嫌なこと言わないでよ……」

「ココだったらいいよ」

「何が?」

「私を殺しても」


 ――ココが私を見た。


「ココになら、殺されてもいい」


 ココに抱きつけば、温かい熱が私に移る。


「殺されたら、ココの頭の中にずっと私が残される。逆に、殺されなければ、私はココと一緒にいられる」

「……そんなこと……言っちゃだめだよ……。死人には口がないんだよ。あたしが……リリを忘れちゃったら……終わりじゃん」

「ココは私を忘れることなんて出来ないでしょ」


 責任感強いもんね。

 悪い奴になんかなりたくないもんね。

 罪悪感でいっぱいになるんだろうなぁ。

 なんであんなことしちゃったんだろうって気持ちでいっぱいになるんだろうなぁ。


 私、きっと、ずっとココの中で、生き続けるんだろうな。忘れられないココは、永遠に苦しむんだろうな。


「……」


 背中がぞくりとした。少し想像しただけで興奮してきた。


 あはは。私、駄目だな。

 ココに夢中で、ココのことばかり。


「……殺さないよ」


 ココが私の手の上に手を重ねた。


「リリと話せなくなったら……寂しいよ」


 ――ぞくぞくぞく、と興奮が体中を駆け巡った。


 ココが私を求めてる!

 ココが……! 私が死んだら……寂しいって、言ってくれた!!!


「冗談だよ」

「んっ」


 ココに甘いキスをする。


「ずっと一緒にいよう。ココ」


 指を絡ませて、笑みを浮かべる。


「洗濯手伝うね」

「……リリ……」

「あっ、待って。もうちょっとだけ……」


 ココが目を見開く。


「くっつこう? ココ」


 私は我慢できなくなって、ココを再びベッドに引っ張った。

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