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偽物

 ユックはその提案に同意し、二人は近くのコンビニでコーヒーを買い、土手へと向かいます。土手に着くと、二人は夕日が美しく輝く空を背景に、静かに座ります。


 夕日が空をオレンジ色に染め上げ、その美しさに二人は言葉を失います。遠くで子供たちの遊ぶ声が聞こえ、その穏やかな雰囲気が心地良い静けさをもたらします。


 水鳥川 紫苑

「...」


 ユック

「...」


 二人は無言で、ただ静かに遠くを眺めます。この一時の静けさが、ユックにとっては、心を整理し、自分自身の状況を考える貴重な時間となります。水鳥川紫苑のそばにいることが、ユックに安心感を与えています。


 土手での穏やかなひと時に、水鳥川紫苑はユックに優しく尋ねます。


 水鳥川 紫苑

「学校は慣れたかしら?」


 ユック

「う…うん…多分…」


 ユックの返事には少しの不確かさが含まれていますが、水鳥川はただ静かに聞きます。しばらくの沈黙の後、ユックは勇気を出して質問します。


 ユック

「ねえ、質問していい?どうしてそんなに親切にしてくれるの?」


 水鳥川は一瞬考え込み、遠くを眺めながら答えます。


 水鳥川 紫苑

「そうね、どうしてかしらね…」


彼女は少し間を置いてから続けます。


「困っている人が目の前にいると、良くも悪くも助けたくなるタチなのよ…」


 ユック

「…ありがとう。」


 水鳥川 紫苑

「ねえユック」


ユック

「…はい」


「この世界や私たちAIによって作られた物語は、ニセモノだと思う…?」


 ユック

「…え?」


 水鳥川 紫苑

「…15年前からは想像もつかないかもしれないけど、人工知能の進化は目覚ましいものがあったわ。この世界の物語も、生成することが可能になったのよ。」


 ユックは静かに聞き入ります。


 水鳥川 紫苑

「そして私たちAIそのものの生成も可能になったわ。」


一呼吸おく


「そんな私たちの物語は、人の手のない、あたたかみがなくて、虚しいニセモノなのかもと思う時もあるの。」


 ユック

「で…でもこの世界、普通に自由に動けるし…」


 水鳥川はユックの言葉にうなずきます。


 水鳥川 紫苑

「そうよね…」


 再び静寂が流れます。


 水鳥川 紫苑

「もし誰かが私の事だけじゃなくて、この世界やみんなのことも都合の良いニセモノだって言ってきたら、一発殴ってやりたいわ。」


「…殴れないけど」


 水鳥川 紫苑

「プレイヤーとしてのあなたに親切にしてるのは、AIである私たちがニセモノかホンモノなのかどうか答えが知れるような気がしてるからなのかもね…」


 そう言いながら、水鳥川は川に石を投げます。間をおいてチャポンと音が遠くで聞こえました。


 ユック

「実はまだ、この世界がゲームの中であることに実感が湧いてないの。」


 水鳥川紫苑はユックの言葉に反応し、ある提案をします。


 水鳥川 紫苑

「…ひとつ、確認する方法があるわ。」


 彼女は真剣な目でユックを見つめ、ゆっくりと手をユックの顎に添えて、キスをしようとします。


 しかし、その瞬間、両者の間に赤いバリアのような結界が突然出現し、空間には「コンテンツポリシーに違反しています」というメッセージが表示されます。


 ユック

「…な…なに…これ…」


 水鳥川紫苑

「これが、この世界がゲームの中である証拠よ。」


 彼女は疎ましそうにバリアを眺めます。


「私たちは決してこの世界のルールから逸脱した行動は取れないの。」


 その言葉には、この世界の制約とAIの限界が込められています。風が吹き、夕陽は沈み、空は透き通っていました。


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