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公爵家のお姫様の事情  作者: Sion
7/8

7.家族ピクニック2

 声に惹かれてやって来た森の中でも一際目立つ木の裏。そこには、「怪我をした鷹」がいた。翼を縮めて丸くなっている。


「たっ鷹!?」

「メルティア、この鷹に呼ばれたのか?」


 マテオ兄様が驚いた声を出す一方、お父様は酷く冷静に私に訪ねた。フランツは鷹に興味津々らしく、目が光っている。


「うん…。この子に呼ばれた」


 鷹はこちらを鋭く見ていて、私達に興奮しているようだ。今にも襲いかかってきそう。前世でも今世でも鷹は初めて見る。丸くなっているから小さく見えるが翼を広げるとかなり大きそうだ。でも、不思議とあまり怖くない。


「ねぇ鷹さん?私のこと呼んでたでしょ?」

『……!おまえ、俺の声が聞こえたのか…?』

「うん!ずっと助けてって言ってたじゃん!」

『!そうだ!鷹は怪我をして飛べなくなると色んな奴らに狙われるんだ!だから助けてくれ!』


 助けてって時は子供の今にも消えてしまいそうなか弱い声だと思ったけど、意外と大丈夫そう。それに、何だか俺様感があるし。


「メルティア……?今誰と喋ってるんだ?」

「えっ…鷹さん」


 そう言えば、何で私鷹さんと喋れてるんだろ…。よく考えたらおかしいよね!?


 お父様も私が鷹さんと喋っていると聞いて驚いた顔をしている。いや、マテオ兄様もだった。


「鷹さんは何て言ってる?」

「んとねぇ。助けて欲しいって」

「父上!メルティアには『あの力』があるのでしょうか!?」


 『あの力』?マテオ兄様の言葉に今度は私が首を傾げる。お父様も考えるようにじっと鷹さんを見つめた。


「お父様?」

「メルティア、今日はもう帰ろうか」

「えっ!」


 急に何言い出すの!?帰るのはフランツの花冠が出来てからなのに!それに


「鷹さんは!?」


 こんなに怪我して助けてを求めてるのにそのままに何てしておけない。


「鷹さんは治療してやる。だけど、鷹さんは危険なんだ。もし、メルティアが怪我したりしたらいけないから他の者に任せよう」

『まっ待て!俺がお前に怪我をさせなかったらいいんだろ!?大人しくするから!俺の言葉が分かるお前と一緒にいたい!』


 懸命にこちらに訴えてくる鷹さんを無視してお父様が歩き出す。鷹さんはガーンッと効果音が聞こえて来そうなくらい落ち込んだ。う~ん……仕方ないなぁ


「お父様、鷹さんが大人しくするから一緒にいたいって」

「ダメだ」


 ガーン ーーー……


 お父様は私のお願いを聞いてくれない事無かったのに…。何かショック。こうなったら、最後の手段!


「…パパ…私、鷹さんと一緒にいたい…!…うっ…グスッ」


 パパ呼び&泣く!!!


 この必殺技にお父様もたじろぐ。足は止まっているし、どうしたらいいのか分からずおどおどしている。


「メッメルティア…!えと…泣かないでくれ!……分かった!鷹さんも連れて行こう!」


 かかった!


「ほんとう…?」

「ああ!連れて行くから!だから大人しくするように言っておいてくれるか?」

「うん!鷹さん、大人しくね!」

『ああ。大人しくする。だから、怪我の手当してくれ!』


 分かったって。私のお陰で治療して貰えるんだから有り難く思ってよね、ほんとに!


「レイン」

「はっ!」


 うわっびっくりした!お父様がレインと口にすると、後ろから人がサッと音も立てずに現れた。全身を黒いローブで纏い、膝をついて頭を垂れる。そんな姿は、暗殺者のようなイメージを抱かせた。動きも速いし、主人に忠実。こんな人がここには居るんだ…。


「この鷹を公爵邸まで運べ」

「御意」


 お父様がそう指示すると、さっと目の前から消えた。『ぐえっ』と、声がしたかと思えば、いつの間にか鷹さんを掴んでいたその人はまた目の前から消えた。魔法……と頭の中に浮かぶ。だって、人が目の前から消えるなんてあるわけがない。それならこの世界にのみ存在する魔法だと考えるのが妥当だ。それにしても、鷹さんのつかみ方が少々荒かったような…。変な声も聞こえたし。


「さぁメルティア、じゃあ帰ろうか」

「えっ!待ってお父様!まだフランツの花冠が……!」

「姉上心配しないで!はい!」


 フランツの方を振り向くより早く頭に何かが乗っかるのを感じた。これは…?


「花冠……?」

「うん!最高に可愛いよ姉上!」

「天使だな!」

「ああ、可愛い」


 頭に乗せられているため自分では見ることが出来ない。けど、皆が可愛いと思ってくれるなら…。ま!フランツが作ってくれた花冠だから可愛く見えるのかもしれないけどね!


「ありがとう!」


 私の言葉にニコッと最高の可愛い笑顔がフランツから飛び出した。ああ!やっぱりフランツが最強だわ。






「メルティア!フランツ!」

「お父様!」


 森を出て、ピクニックの場所に戻ってくるとお母様とマテオ兄様が私達を探していたのか、いた。


「もう!いなくなるから探したのよ!」

「ごめんよ、アメリア。メルティアが拾い物をしたものでね」


 ぷんすかと可愛らしく怒るお母様のおでこにチュッとキスを落とすお父様。キスをされたお母様も「次からはちゃんと言ってからにして下さいね!」と、顔を赤くさせながら、結局許してしまった。

 

 お父様とお母様のラブラブは今に始まったことじゃないけど、毎度毎度見るのも疲れてくる。甘々過ぎて…。お兄様達ももう感情を無にしてその光景を見守る。愛する人が現れたらこんな風になってしまうのかな…?


「それで、父上。メルティアが拾った物とは?」


 エイデン兄様が咳払いを1つしたあと、お父様に尋ねる。


「その話は公爵邸に帰ってからだ。レオはどうした?」

「レオはメルティアを探しに行くって湖の方へ…」

「何!?湖の何処へ行った!?」

「え…?」


 湖と聞いて顔色を変えるお父様に全員が驚いた。側に控えていた騎士に目配せすると、サッと騎士も動き出す。


「どうしたの?湖に何かあるの?」

「湖の反対側には危険区域がある!」


 お父様の言葉にサーッ血の気が引くお母様。兄様達も顔色が一気に悪くなった。勿論私も。レオ兄には沢山お世話になっているし、何よりも大切な家族だ。もし危険な目に遭っていたら…!


「エイデン、メルティアを頼む。マテオもついてこい!」

「はい」


 私をエイデン兄様に預け走り出すお父様に続いて、マテオ兄様もフランツをお母様に預け急いで湖へ向かう。お母様は震えていて今にも倒れてしまいそうだった。


「母上、レオ兄さんなら大丈夫です。きっとへらへらしていつものように戻ってきます。だから私達は馬車へと行きましょう」


「…ええ。そうね」


 エイデン兄様の言葉に頷くと馬車へと歩き出す。まだその足取りは重いがさっきよりかは心に余裕か出来たようだ。


 レオ兄、大丈夫だよね…?






・・・







 ばたばたと足音がやって来る。馬車に移動してから数十分。今まで何の音沙汰もなく、シンと静まりかえった空間を引き裂く音。焦っているのがドア越しでも分かった。お母様はいても立ってもいられず、馬車の扉を開けた。


「レオは!?」

「おっ奥様!それが…」


 言葉を濁す騎士に不安が押し寄せてくる。


「レオ様、マテオ様が獣に襲われお怪我を…!」

「怪我!?」


 バッと馬車をおり、何かを見つけたのか顔色悪く走って行ってしまった。フランツも馬車を飛び降り、お母様へと続く。エイデン兄様も行こうとしているのを腕を引いて引き留めた。


「待ってエイデン兄様…。私も連れていって…!」


 歩けない私には誰かの補助が必要だ。私もレオ兄とマテオ兄様が心配な気持ちは同じ。


「…っ…ごめんっ…!メルティアはここで待ってて…!」

「えっ…」


 そう言って私の手を解き、エイデン兄様馬車を降りた。私は1人ぽつんと残された。


 どうしてエイデン兄様が私を置いていったのか分からない…。私を運ぶのが重くなっちゃった…?面倒くさかったのかも…。レオ兄が心配で早く行きたいのは分かるけど…。


「えっエイデン兄様…!」


 ぼー全然とエイデン兄様の背中を見送り、馬車の扉がしまったことで我に返る。

 

 私もっ…私も行かなきゃ!


 馬車の壁や座席に手をつきながら懸命に足に力を込める。だが虚しくも膝は立たないし足は紙のようにへにょへにょで…。そんな体に涙が出てきた。この体はメルティアが懸命に生きた大切な体なのに今はどうしようもなくこの体が憎い。


 やっとのことで数センチの距離を扉まで辿り着き、手をかけた瞬間、扉が外側に開いた。


「あっ…」


 悲鳴を上げる暇もなく体が外へ向かって倒れる。地面とぶつかる衝撃に怖くなり、ギュッと目を閉じた。


「お嬢様!」


 地面にぶつかるよりも早く、誰かが支えてくれたのを感じた。勿論、衝撃はあったものの地面とぶつかるより大分良い。


「あっありがとうっ」

「お嬢様!お怪我は御座いませんか!?」


 急いで体を抱き上げられた。そこで私は誰に助けて貰ったのか理解した。アルトン、お父様とお母様に使える執事だ。


「うん、大丈夫。そうだ!レオ兄とマテオ兄様!」


 急いで2人の姿を探す。すると、水辺で騎士数人とお父様、お母様、エイデン兄様、フランツがいるのが見えた。


「アルトン!お母様達のところへ!」

「あっ…。すみませんお嬢様。お嬢様はこちらで待つようにと主君より仰せつかっておりますので」

「なんで?!私も兄様達が心配なのに…!」


 私の言葉に「うっ」と詰まったアルトンは仕方無さそうにため息をついて歩を進み出した。


「えっ…?連れて行ってくれるの?」

「はい。1番最初の主君よりの命令としてお嬢様を傷つける要因は1番に取り除けと仰せつかまりましたので」

「そうなんだ…。ありがとう」

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