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公爵家のお姫様の事情  作者: Sion
6/8

6.家族ピクニック1

 あれから、マテオ兄様が家族の皆に私がピクニックをしたいという話をすると、満場一致でピクニックの開催が決定された。日にちは2週間後となったが、全員来れるそうだ。


 そして遂にその日がやって来た。私はこの一ヶ月間で健康とも言える体が出来た。ご飯は普通に食べれるし、凄く白くて死人のようだった肌も健康的に。


「まぁメルティアお嬢様!可愛らしい♡」

「可愛いです♡」


 今はピクニックに行くために着替えをして貰っている。リナリーとローナが殆どやってくれた。他にも私の専属執事である2人も色々と手伝ってくれたけど、ドレスのこととなると、この2人に敵わなかったらしい。


 今日の私の格好はピンクのふわふわしたドレス。飾りのリボンと白いレースが付いているもの。髪は、サイドを三つ編みにして、後でまとめている。そこには、ドレスに合わせて大きなピンクの飾りを付けた。


…正直言うと、可愛い…と思う


「リナリー、ローナ。ありがとう」

「キャッー!可愛い♡可愛いですお嬢様!♡」

「私達は当然の事をしたまでです。お嬢様は世界一可愛らしいのでそこに少し手を加えただけです!」


 この2人、実は姉と妹逆なんじゃないかと思う時がある。リナリーは大事な時はとてもしっかりとしていて、頼りになる。それは、この過ごした中で分かる事だ。でも、普段は抜けがち。


 それに対して、妹のローナは普段もきちりとしている。性格は違うくても、仲がいいのは見ていれば分かるけどね。


「お嬢様、マテオ様とレオ様がお迎えに来ましたよ」

「はーい」


 執事の声に返事をすると、リナリーに抱っこして貰う。まだ、歩けないのでそうするしかないのだ。3.4歩なら歩けるんだけど……。いや、それは歩けないのと一緒か…。


「「おはようメルティア!今日も可愛い♡な!」」

「おはようマテオ兄様、レオ兄!」


 1ヶ月経った今でも私はレオ兄のことを一度もレオ兄様と呼んだことがない。レオ兄って言い慣れちゃったからだと思うけど…。本人曰く、他の兄弟よりも私と親密度を感じるからいいんだって。


 リナリーからマテオ兄様に抱っこをバトンパスされて廊下を進む。いつも思ってたけど、ここのメイドと執事は優秀過ぎる。私の部屋は常にピッカピカだし、この廊下も隅から隅まで磨かれている。窓が汚れてないのは勿論、飾られている花や絵画までこだわりが出ている。凄いなぁ。


「兄様、お母様とお父様とフランツ、エイデン兄様は?」

「ああ、玄関にいるよ。馬車に全員一緒に乗れないから誰がメルティアと一緒に乗るかジャンケンしてるんだ」


 えっ……そんなことでジャンケン?誰でもよくない?行きと帰りで交代したらいいじゃん。それにしても、馬車!!見たことはあっても乗ったことは一度もない!憧れの乗り物の1つかも!あれっそう言えば…


「マテオ兄様とレオ兄様はジャンケンしなくていいの?」

「ふふん!俺達はもうジャンケンに勝ったんだ!だから、行きは俺達と一緒だぜ!」


 レオ兄がドドンと自慢げに喋る。やっぱり行きと帰りで交代なんだ……。ジャンケンする意味は?


「メルティア!おはよう!」

「おはようエイデン兄様!」


 玄関に着くと家族の皆が挨拶をしてくれて、その後に必ず可愛いって言ってくれた。恥ずかしいけど嬉しい。


 エイデン兄様は始めこそ口数が少なかったけど、なんだかんだで一番リハビリに付き合ってくれたし、私から話しかけていたら、よく喋るようになった。


 フランツは、私の部屋が物で溢れかえるぐらいに沢山プレゼントをくれた。公爵家のお庭ってすっごく広いらしいけど、そこで摘んできた花とか。花冠を作っては私に被せて「姉上可愛い」と連呼する姿はいまや恒例。毎回違う花冠を作ってきてくれるので、私も実は毎日楽しみにしている。


 お母様とお父様の溺愛は激しい。3年間娘に出来なかったことを発散するかのごとく、私に甘い。もう、デレッデレ!ドレスも家具も一級品ばかりで、私が貰ってもどうしようもないような馬やメルティア専用の庭園までくれた。どちらもまだ見に行けてないけど…。お父様はお母様と違ってあまり顔に出なくてわかりにくいけど、可愛いがってくれてるみたい。たまにちらっと私の所を見に来るのだ。本人はバレていないと思っているようだけど。あんなに熱い視線を感じればね。


「さっメルティア行こう」

「うん!」


 マテオ兄様からお父様に抱っこが変わると馬車へと皆で歩いていく。ちなみにだが、荷物は騎士の方々が。今日はメイドや執事は誰もこず、騎士の人達だけ。家族みんなだけで楽しみたいからだと。


 あっそう言えば騎士の人達だけど、この公爵家の専属団で、お父様が鍛えているらしい。お父様に初めて会ったとき騎士の服着てたし格好いいって思ったけど、騎士団を指導するほどだとは思って無かった。その仕事と平行して公爵としての仕事も果たすんだから自慢のお父様だ。


 結局、行きの馬車にはお父様、マテオ兄様、レオ兄が一緒だった。馬車の中ではお父様にずっと膝の上に乗せて貰ってたけどね。






・・・






「とうちゃーく!」


 レオ兄が馬車から飛び出して、外で大きく伸びをする。馬車にのって丸一時間。いや、それ以上かも。


「メルティア、体しんどくない?」

「うん、大丈夫。ありがとうマテオ兄様」


 私達が来ているこの場所は湖だった。


 ここまでの道中、外の世界が新鮮過ぎて、食い入るように馬車の外をずっと眺めていた。賑やかな町や自然豊かな農地を見て分かった。


 この領地は盛えてる!


 ほんの一部しか見ていないけど、人々の笑顔が溢れる場所だ。前世と比べるとやはり田舎感が拭えないし、技術も乏しい。けど、楽しそうな雰囲気が沢山感じれた。


「メルティア、準備があるから少し散歩しようか」


 お父様の提案に頷く。お母様達の馬車もうしろに到着し、3人が降りてきた。


「お父様、あの花が沢山咲いている所に行きたいです」

「ああ。お姫様のお望みとあらば、何処へでも」


 『お姫様』たまに家族のみんなは私のことをそう呼ぶ。いくら公爵家の1人娘でもお姫様はちょっと……。そう思って辞めて貰えないかと言ったところ、正真正銘、公爵家のお姫様だから。と言われてしまった。なら、もういっかってなった訳です。


 そして、私が指さした場所は、湖と反対側の森の方。多くの花が群集で咲いている所だ。何故なら、フランツの花冠のプレゼントが欲しいから。まだ見たことのない、綺麗な花も咲いてることだし、新しいものが期待出来るだろう。


 フランツとエイデン兄様、お父様とその場所へ向かう。マテオ兄様とレオ兄はというと、お母様に呼び止められピクニックの準備だそうだ。名前を呼ばれた時のあの2人の顔は面白かったな。


「姉上、可愛い冠作ってあげるね!」

「ええ!期待してる!」


 私の返事を聞いて、目を光らせ花を探しに行ってしまった。お父様は私を花の絨毯の上に座らせてくれた。「下に引くものを持ってくるよ」というお父様を止めて、「花の絨毯に座りたいの!」と少し駄々をこねれば、考えた末許可をくれた。


 エイデン兄様はフランツと共に花を摘みに行っているため不在。周りには数人の騎士の人が立っていた。


「お父様、お父様は強いの?」

「ふっ……強いぞ」


 えっ、何今の「ふっ」って!何で一瞬笑ったの?それに自信満々に強いぞ…って。本当だよね?でも、細く見えても筋肉は凄いから疑い切れない。


「メルティア!」

「マテオ兄様?……キャッ…!」


 遠くから手を振るマテオ兄様とレオ兄に不思議に首を傾げると、急にお父様に持ち上げられた。咄嗟のことに驚いてお父様にがしっと掴まる。


「急なことで驚いたか!?すまない。以後気をつけよう。ピクニックの準備が出来たようだから行こう。」


 あっ……あれピクニックの準備が出来たって意味だったんだ…。フランツとエイデン兄様も一旦花摘みを辞めて戻ってきた。4人揃ってマテオ兄様達のいる湖の側までいくと、ピクニックの定番…レジャーシートがひかれていた。


 レジャーシートの上にはお昼ご飯のサンドイッチやお菓子などが置かれている。この世界って地面に座ったり、物を置いたら下品だー!とか、言われると思ってたのに……。実は私がピクニックでしたいことを伝えたのだが本当にその通りになっている。靴を脱いでシートに上がり降ろして貰う。


「みんな、本当にありがとう!」

「メルティアがしたいことをするのに遠慮なんかいらないわ!もっともっと我が儘言っていいのよ!」


 お母様の言葉にこくこくと頷く皆にまた嬉しくなる。これじゃ私は世界一の幸せ者になっちゃった。


「さっ、お昼にしましょう」


 お母様に勧められて口にしたサンドイッチは本当に美味しかった。






・・・







 お昼を食べ終え、今は花の上で休憩している。お母様とエイデン兄様は読者中。レオ兄はお昼寝タイムでマテオ兄様とお父様は何やら喋っている。どうやら政治に関するお話しのようなので、邪魔にならないように私は1人でいる。ここに来てまでお仕事の話をするということはそれほど忙しいということ。国を支える1人だし。あっ支えてるのは国民か!国を動かす人!


 それにしても和むなぁ。この頃忙しかったというか、過保護が凄くて外に出られなかったというか…。自然の力はやっぱり偉大だ。心が洗われる気がする。


『…た……て…たす………け…』

「えっ!」


 突然聞こえたか弱い声。今にも消えてしまいそうな、そんな声。私の驚いた声にマテオ兄様が首を傾げる。


「どうしたメルティア?」

「まっマテオ兄様は声が…!声が聞こえましたか!?」

「声?誰の声だ?」

「えっ……こっ子供のか弱い声!」


 私の言葉にふるふると首を振る。お父様にも聞いてみたけど答えは同じだった。


 私だけ聞こえるってこと?なっ何それ!?怖い…。でも、あの声は確実に助けを求めてた。


『…たす……て……助けて!』


 はっ!はっきりと聞こえた!やっぱりマテオ兄様やお父様には聞こえてないみたいだけど、私には聞こえる。森の方からした。


 どうにかして行きたい!その気持ちを一心にはいはいを開始する。まだ歩けないんだもん…。いくら恥ずかしくても声が…誰の声なのかを知りたい!!お父様たちはまたお話しに戻ってる。私がいかなきゃ!


 花達を踏んでしまって悪いけど、声のする方へ進む。手やドレスが汚れようがそんなこと気にもならないほどあの声に吸い寄せられてしまう。


「姉上!」

「えっ…フランツ?」


 いつの間にかフランツが隣に来ていたらしい。全然気が付かなかった。


「どっどうし……」

「父上ー!!!」


 私が言い終えるよりも早くフランツから今までに聞いたことが無いくらいの大きな声が出た。フランツの声で私がいないことに気が付いたお父様とマテオ兄様はこちらに走ってくる。


「姉上ダメ!」

「えっ…」


 フランツは私が森の方へ進めないように前に両手を広げて立ち塞がった。


「フランツ、メルティア!!」

「メルティア!」

「あっ…お父様、マテオ兄様……」


 あっという間に私の所まで追いついてしまったらしい。ぱっとお父様に抱えられてしまった。


「メルティア!何処へ行こうとしてたんだ!1人は危ない!」

「あ…えと…声が。声が私を呼んでいて……」

「声?」


 ああもう!信じて貰える訳がない!だってお父様とマテオ兄様には聞こえないんでしょう!!?


「はぁ…。よく分からないが、メルティアにだけ聞こえる声だったのかもしれないな。手もドレスもこんなに汚れてしまって…。」

「あっ…ごめんなさい」

「もう危ないことはしないでくれ。約束」


 差し出されたお父様の小指に自分の小指を重ね、「約束」をした。


「それで、何処から声がしたんだ?」


 えっ!もう行っちゃダメだって言われると思ったのに…!


「あっち!」


 森の方を指さすと連れて行ってくれるお父様。フランツはマテオ兄様に抱えられてうしろから着いてきた。


『助けて!』


 待ってて、今行くから!


「お父様、この木の裏!」


 一際大きな木の裏に行くといたのが……

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