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公爵家のお姫様の事情  作者: Sion
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4.メルティアと藤谷連

「ー……ん……れ……ん…ちゃ…れんちゃん!」


 パチッ


「連ちゃん!良かった!全然起きないんだから…もう!」


?????? !!!!!!!!!


「えっメルティア!?!?」


 ガバッと体を起こして目の前にいるその少女、メルティアを凝視する。正真正銘のメルティアだ。自分の体を確認するとメルティアではなく、藤谷連に戻っていた。一体どういうことなのか…。状況が読み込めずに周りをキョロキョロと見回す。


「ここは……?」


 真っ白い…。終わりなどない、世界の狭間のような空間。そして、私とメルティアの2人。メルティアの姿は白いワンピースに血色のいい肌。7歳ぐらいだろう。かという私も何故か7歳の姿で白いワンピースを着ていた。


「混乱するよね。まずは初めましてメルティアです」

「えっあっ藤谷連です……?」

「ふふ、なんで疑問形なの?面白いわ!」


 かっ可愛い♡

ふふふ、と笑い終えると私の奥を指さした。


「ほっほっほっ。君が藤谷連だね?ようこそ。そして初めまして、2つの世界の神じゃ」


 指の指された方を振り返ると、さっきまでは確かに誰もいなかったはずの場所にアニメや小説で見たことのあるような、いかにも神様って感じのおじいちゃんがいた。白い服に髭を長く生やして、神々しく佇む。雰囲気は優しく、眼差しは慈悲深い。なんだか、頭を下げたほうが言い気がして正座に座り直し丁寧に頭を下げた。隣でメルティアがひゅっとと息をのむ音が聞こえた気がした。


「ほっほっほっ。流石は礼儀正しい日本人だ。このように綺麗な礼は初めてされたわい。ありがとう、面を上げたまえ。」


 「はい」と、短く答え頭を上げて神様と目を合わせる。普通なら混乱する場面でも敬うべき相手を前に冷静になれた。この方が嘘をつくような方には到底思えないから、本当の神様みたい。何とも不思議だ。神を崇めたくなるのは人間の本能だろうか。それにしても私なんぞの一般ピーポーが会っていい人なのかな。


「時間が限られ取るでの。さっさと本題へ入ろうか。先も言うた通りわしはの、2つの世界の神。それぞれの世界の管理をしておる。」


 2つの世界が次元を、空間を越えて存在している。その事に驚く。もしかすれば、この2つ以外にも世界は存在するのかもしれない。メルティアはこの話しをもうすでに聞いているようで隣でうんうん頷いている。


 可愛い♡っていやいや、神様の話しに集中しなきゃ!


「そこでの、少し可哀想な2人をそれぞれの世界で見つけたでの。1人は幼くして魔力枯渇病という大病を患い家族と思い出を多く作る事無く世を去った子よ。もう1人は、次の日に胸を膨らませながらも、自覚なく病気が進行し突然の死を迎えた子よ。」

「えっ!!」


 神様の言葉に動揺が抑えられず声を上げる。だって…だって…だって!!どうして…!!!??私が死……んだ……?そんなの…信じられるわけが……


「混乱するのも無理はない。自分が死んだことも分からなかっただろう。ゆっくり時間をかけてでもよい。現実を受けとめよ。」


 メルティアとして過ごしていた中でも、いつかは元の藤谷連に戻れるはずだと心の中で思っていた。けれど、もう戻る体もない……?私は健康そのものだったはず…。最近は少し熱が出ることもあったけど、そんなの普通でしょ……?


「連ちゃん……。大丈夫よ。心の中に溜めないで吐き出して…!苦しいでしょう……!」


 メルティアを見る目は自分でも曇り曇っているのが分かる。それでも、手を差し出して胸を貸してくれるメルティアに私は顔を埋めた。


「………ふっ……うっ…うぅっ……」


 喘ぎながら、多くの涙を流す。


 高校は楽しみだったし、家族は好きだった。友達は少なかったけど親友は本当に心の許せる、最高の相棒。それなのに、別れの挨拶も出来なかった。悔しいし、悲しい。





・・・




 自分の心の内が晴れるまで泣きまくった。その間ずっとメルティアは背中をさすり、服がぐちょぐちょになるぐらいまで胸を貸してくれたし、神様は怒ることなく、優しい眼差しで見守ってくれていた。


 連の体が病気に蝕まれていたことは気づけなかった私自身にも責任があるし、誰が悪いと言うこともない。だから、もう仕方ないよと、心の中でそう落ち着いた。


「……メルティアちゃん、ありがとう…」

「いいのよ。もう落ち着いた?」


 こくんと首を縦に振って答えると、優しく頭を撫でてくれた。優しい…。私は神様の方へ向き直った。


「現実を受けとめたかの…。それじゃあ、話しの続きをするぞ。2人の可哀想な子を見つけたわしは、2人にもう一度『いのち』を与えることにした。だがの、同じ世界でもう一度生きることは、許されぬ。故、2人の魂を交換する事で目覚めさせたのじゃ」


 もう一度生きるチャンスをくれたんだ。でも、同じ世界には行けない。だから、私はメルティアとして、メルティアは私として生きてるってこと…?


「メルティアは私、連になったんですよね?」

「ええ。私は藤谷連、あなたとして目を覚ましたわ。始めは本当に驚いたのよ!白い『病室』って所で目が覚めたんだけど…もう文明も生活も家族でさえも変わっていてどうしたらいいのか分からなくて不安だったの!」 


 やっぱりそうよね…。私は小説やゲームであんな感じの転生ものを知っていたからそこまで混乱せずに……いや、したけど…。とにかく、少しは適性があったけど、メルティアは丸っきり分からなくて。そりゃあ、不安だったでしょうね。


「神様にサポートして貰ったから良かったけどね!」

「サポート?」

「ええ!毎日少しずつ、貴方の記憶を見せてくれたわ。そのお陰で少しは早く馴染めたと思うの!」


 毎日、少しずつ私の記憶を見た!!?そんなこと出来るんだ!待って…どんなこと見られたのぉっ!!?


「ほっほっほっ。安心せい。そこまでプライバシーの侵害されるようなものは見せておらん。ただ、生活に必要な記憶な大切な思い出のみだよ。」


 あっ安心したぁぁっ!もし私の記憶から削除した黒歴史が見られてたらと思って焦った~。


「藤谷連、君にもメルティアの記憶を少しずつ返そう。そうだね、思い出の場所に行ったり、行動を取ると思い出すようにしよう。出来るだけ早く馴染めるようにね」


 メルティアの思い出の場所…それから思い出の行動…?記憶を取り戻したければ動けという事ですね…。


「分かりました。ありがとうございます。」

「うむ。それじゃあわしはいくでの。あと数分もすればこの空間も終わる。3か月に1回、30分だけ2人が会える機会を作ろう。満月が青くなる日にの。後は2人で別れの挨拶でもするといい。」


「「(本当に)ありがとうございました!!」」

「ああ。2度目の人生は楽しく生きたまえ」


 そう言い残してしゅっと、目の前から消えた。本当に不思議な人だ。神様がいなくなると、メルティアと私は向き直った。


「連ちゃん。私の体って弱いでしょ?直ぐに倒れちゃうかもだけど、ごめんね」

「うんうん!大丈夫!それにこんな可愛いメルティアちゃんに私なんかが恐れ多いと言うか…!」

「ふふっ、何言ってるの?連ちゃんも可愛いじゃない。これからよろしくね」


 私が可愛いとは思え無いけど…。外見的にも性格的にも。


「よろしくね!」


 まっ、いっか!こんなに可愛いお姫様に会えたんだから。


「連ちゃん、家族の事よろしくね。私の大切な人達なの。そして、愛されてね」

「っ!メルティアちゃんこそ!愛されてね!私の家族や友達はうるさい人が多いけど、それでも優しい人達だから…!」

「うん、分かってる。ありがとうね」

「私こそ!」


 白い空間が段々と私達を飲み込んで輝き出す。


「さよなら!またね!」

「うん、またね。連ちゃん!」


 そして、光は私達を包みこんだ。目を閉じる瞬間に笑顔一杯のメルティアが見えた。生きることに大きな喜びを見せるような。






・・・







「おはようございますお嬢様」

「おはよう」


 私は、メルティア。本当にそう思える。これからよろしくね。


 そう心の中で思って今日から頑張るぞ~という思いのもと、体を起こした

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