スプーンって、実は重たいんですよ#3
草むしりを一通り終えたクララは、父の待つ切り株の元へ戻った。
わらわらと小さな人だかりができている。
どうやら目的のものを無事に掘り出せたらしい。
こちらに気がついた父が、手を上げてクララを呼んでいる。
「おかえり、クララ。リジーが言っていたものが見つかったよ」
地面には大きなガラス瓶がどんと置かれていた。
クララはしゃがみ込み、つんつんと指で突く。
ガラス瓶は念入りに封がされていて、表面をよく見るとカビのようなものが所々に付着していた。汚れの隙間から、布袋や封筒らしきものがいくつか見える。
「クララ。早速これを家に持ち帰って、中身を確認しようか」
「うん。わかっ……たじゃなくて、リジーからの伝言で『六十日間』は保管だけして、絶対に開けないでって。なんか、呪いがどうのとか言ってた」
「呪い?」
訝しげな表情を浮かべる父。
クララもリジーから話を聞いた時、きっと同じ顔をしていたに違いない。
「うん、呪い。なんでも、一族が死に絶えるとか言ってた」
「……パパはともかく、クララに実害が及ぶならリジーの言葉に従おう」
父はガラス瓶を片手で抱え上げると、正門に向かって歩きだした。
その後をクララも追う。
「ねぇ、パパ」
歩きながらクララは聞いた。
「なんだい」
父は歩を止めることなく聞き返す。
「手伝ってくれて……ありがとう」
照れくさくて、つい言い淀む。
父は足を止めて振り返ると、クララの頭をぽんぽんと撫ではじめた。
「パパはいつだってクララの味方だよ」
汗と土の匂いがした。
白いシャツが、ところどころ薄黒く滲んでいる。
きっと必死になってつるはしを振ってくれたのだろう。
「ってパパ! 服だけじゃなくて手も泥だらけ!」
クララはガシッと父の腕を掴んだ。
掌を見ると、豆が潰れて血と土が混り、 赤黒くなっていた。
「パパ、怪我してるじゃん! だいじょ……ん? 今この手で私の頭触ったよね?」
クララは自分の髪の毛に触れた。もれなく小さな土粒が手に付着した。
「パパー!」
声を荒げ、父に抗議するクララ。
たじろぎながらも申し訳なさそうに笑う父。
「ああ、すまない。普段やらないことをしたものだから気がつかなかったよ」
「もう! 帰ったら手当てしなきゃ。早く消毒しないとバイ菌入っちゃう」
微笑を浮かべ、呆れたように言うクララ。
「そうだな」
釣られて父も笑う。
「よし! 帰ろう!」
クララが元気よく言うと、二人は並んで歩きだした。
「帰ったらお風呂入らなきゃ!」
「たまにはパパと一緒に入るかい?」
「絶対に嫌!」
「そ、即答されると、さすがのパパも傷つくな……」
しょんぼりする父を尻目に、楽しそうに笑うクララの声が寒空に吸い込まれていった。




