実家が学校からあんまり離れていなかった件 #4
応接室では、テーブルを挟んで父と女性が話をしていた。
クララは部屋に入ると父の隣に行き、ソファにそっと腰を下ろした。
「おまたせしました。うちの娘のクララです」
そう紹介され、父と一緒に立ちあがった。
向かいの女性も立ちあがり、ぺこりと会釈をする。
「クララさん、こんにちは。霊媒師のヴァレンタインです」
「ク、クララです。よろしくお願いします」
少し緊張しながらも、クララも頭を下げる。
ヴァレンタインと名乗った女性は、父よりも少し若く見えた。
ウエーブのかかったブロンドの長い髪を後ろで一つに束ね、チャコールグレーのスーツをきりっと着こなしている。ジャケットの下の白いブラウスは、ふたつの大きな膨らみをやや窮屈そうに包んでいた。
クララは思わず自分と見比べ、視線を落とした。
足元が実によく見える。
「さて、立っていてもしょうがないので、座ってゆっくり話しましょう」
父がそう言うと、ヴァレンタインも再び腰を下ろした。
クララは座りながら女性の左手に目をやった。薬指にキラリと光る指輪がある。
(結婚、してるんだ)
それを確認すると、心の奥で燻っていた不安が少し和らいだ。
「クララ、まずはヴァレンタイン先生を呼んだ経緯を説明するね」
父がこちらを向き言う。
そういえば、なぜこの人に会わなければならないのか詳しいことは聞いていなかった。
「今回の学園でのお化け騒動についてだけど、まずはクララの言うリジーって子から詳しい話を聞きたかった。それで霊媒師のヴァレンタイン先生に相談したら、降霊術で呼んでみてはどうかって提案されてね。クララが今朝言ってた『先生には姿は見えなかったし声も聞こえなかった』が本当なら、おそらくパパも見ることも話すこともできないだろうから……」
「うん」
「それに、リジーに色々とお願いしたいこともあってね」
「えっと……それは私が直接伝えるんじゃダメなの?」
「クララ」
ガシッと両肩を掴まれた。
「パパはクララのことは信じている。信じているからこそ心配なんだ」
真剣な顔で真っ直ぐ見つめられる。
「あ、ありがとう、パパ。でも、大丈——」
「大丈夫じゃないんだ!」
突然の大声に、クララはビクッと肩をすくめた。
「クララ、大丈夫じゃないんだよ。パパはお化けと付き合っては行けませんって言ってるわけじゃないんだ。ただ、クララに何かあってからでは遅いんだよ。それこそ天国にいるママに顔向けできなくなってしまう」
「で、でも……」
「いいかい。パパにとってクララはこの世で一番大切なんだ。そのクララの友達がお化けだと聞けば、やはり心配になる。でもね、クララの選んだ友達だから、きっと大丈夫だとも思ってる」
「う、うん」
「だから、一度でもいいからその友達に会って、直接話が聞ければ安心して学校に送り出せると思ったんだよ」
「……わかった」
クララを想う父の葛藤。その答えは、リジーを自分の目で見極めるということだった。
二人はヴァレンタインの方に向き直ると、父は改めて彼女を紹介した。
「ヴァレンタイン先生は、この町でも有名な霊媒師だ。今日はクララのカウンセリングのために来てもらったよ」
「よ、よろしくお願いします」
「こちらこそ。では、さっそく本題に入りましょう。まず、クララさんはどのようにリジーさんと知り合ったのですか?」
「えっと、私が音楽室でピアノの練習をしていて——」




