実家が学校からあんまり離れていなかった件 #2
クララの自宅は、古代ギリシャ建築を模した「グリークリバイバル様式」の邸宅だった。白亜の円柱が並ぶ外観は、朝の光を受けて輝き、まるで現代に甦った神殿のように見える。広さは二三〇〇スクエアフィートの二階建。控えめに言っても大きい。
一階にはキッチン、食堂、応接室、トイレがあり、二階にはクララの部屋、父の書斎、客間がある。
「なるほど。そのリジーという女の子が、クララにお願いをしてきたということだね」
かちゃかちゃと食器が擦れ合う音を響かせながら、二人は大きなテーブルで向かい合って食事をしていた。
「そうなの。お人形さんみたいですっごく可愛い女の子なんだよ! 髪はサラサラで、目はぱっちりと大きくて。でも、八歳だと思えないくらいしっかりしてて。この間なんて、寝てるところを脅かしたら『ひょえー』って言いながら飛び上がって——」
リジーのことを楽しそうに話すクララ。
父はそんな愛娘を微笑ましく見守っている。
「ところで、そのお願いとはどんなことなのかな?」
「えっと……ちょっと発掘的なことなんだけど、最後には私がそれを一人でやらなくちゃいけなくて、それのサポート? 的なことをパパにお願いできたら……」
もじもじと少し言いにくそうに話すクララ。
本当は他言無用とリジーに言われていたが、さすがに一人で掘り出すのには無理がある。父の手伝いならば、多少は大目に見てくれるだろう。
「わかった。クララの思うように準備させよう」
「本当! ありがとう、パパ‼︎」
嬉しそうにパンを頬張る愛娘を優しく見つめる父。
「ところで、そのリジーという女の子は学校に行けば会えるのかい?」
「うん! いつも音楽室でおしゃべりしてる!」
「私が会って話すことはできるかな?」
食べる手を止め、クララはしばし考え込んだ。
「うーん……さすがにパパでも無理だと思う。前に私たちが話をしているところをブーン先生が見てたんだけど、リジーの姿は見えてなかったし、私の声以外はガラガラって音しか聞こえなかったて言ってた」
今度は父が考え込む。
「なるほど……おっと、そうだ。今日はパパ、仕事で出かけなくちゃならない。クララは家で大人しく遊んでなさい」
それを聞いて、明らかに不満そうな顔をするクララ。頬をぷくーと膨らませている。
「えー! 今日はどこか連れて行ってくれると思ってたのに」
「なるべく早く帰ってくるよ。時間があったら、公園まで散歩でもしよう」
「えー‼︎ 散歩だけ?」
「帰りに美味しいものを買ってこよう」
「やったー‼︎」
さっきまでの不満顔が嘘のように笑顔に変わる。
美味しいものが食べたいのもそうだが、久しぶりの父とのお出かけで、一緒にいられることが嬉しかった。
「じゃあ、パパはもう行くよ」
父は椅子から立ち上がると、食堂の出口に向かった。
「うん! パパ、お仕事頑張って。いってらっしゃい!」
その後ろ姿に元気に声をかける。
父親は振り返りニコリと微笑むと、ガチャンと扉を開けて食堂から出て行った。




