表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

皇帝の過去

短いです。

飛ばしても問題ありません。

あるかな?話しは通じると思われます。


いつからだろうか。

弟と距離が開いてしまったのは。

いつからだろうか。

皇帝という職務に嫌気がさしてしまったのは。



生まれた時から皇太子としての教育を受けてきた。

皇帝になるのが当たり前だから。

疑問も持たずに。


次期皇后としてふさわしい令嬢は、多かった。


名門のオールディーシャ学院を卒業する時までに決めてよい、と父王に言われていた。

だから焦っていなかったのだ。


しかし、学院に入学前出会ってしまった。彼女に。


紫金の美しい髪をなびかせ、空よりも空らしいスカイブルーの瞳。

色白で赤くなったり、怒ったりするとすぐにわかる。


彼女は私の心にスッと入ってきた。彼女は帝国の中でも古参の貴族と言われるほど歴史のある名門、アローシェン家の令嬢であった。


父王にすぐ、フィルリアの話をした。

そして、婚約した。


知らなかったのだ。弟と恋仲だったなど。


私は何も知らず。いや、気付こうともせず彼女を婚約者にした。


彼女は根っからの帝国貴族。きちんと皇太子妃を理解していた。


真面目に妃教育を受け、皇太子妃教育を受けていた。

民にも、父王にもとても気に入られていた。


しかし学院に入学して、17歳のころ。隣国からある噂が流れてきた。


皇太子が婚約者との婚約を破棄し、しがない男爵令嬢と婚約した、と。

しかし、男爵令嬢には妃としての機能は全くなかった。そのため、生贄として側妃にもと婚約者の令嬢をあてがった、と。


帝国民はその話に心酔した。

男爵令嬢は、男爵家でも格が低くほぼ平民とは変わらなかったから。


帝国内で小説や演劇に取り入れられるようになる。

それは学院でも同じだった。


私に近づく下級貴族が増えた。ハニートラップも。

しかし、私はフィルリアを愛していた。

だからこそ、そんなものは効かなかった。


が・・・。


数日たって、平民の編入生が来た。

それがエリスだ。


エリスは私を皇太子だと知らず知り合いとなった。

あの時気づけばよかったのだ。それも全て計算だったと。


聞き上手なエリスは、よく私の話を聞きアドバイスをしてくれた。


しかし、エリスは私を誰だか知らない体でいたため、フィルリアのある噂を話しだした。


「そういえば聞きました?今の皇太子さまの婚約者の方のはなし。」


「・・・婚約者の話・・・」


「そうです!どうやらその婚約者様、皇太子殿下の弟君と恋仲だったそうですよ。それなのに、皇太子殿下が奪ったんですって!」


そこから先は何も入ってこなかった。


確かに二人は仲が良さ下だった。


しかし、兄の婚約者だから。婚約者の弟だから。そう思っていた。

いや、そう思おうとしていた?


思考がぐちゃぐちゃになりながらフィルリアのいる図書室へと向かった。


図書室の奥の窓辺にある机でいつも勉強していた。

フィルリアを探して奥へ進むと・・・


机に突っ伏して寝るフィルリアと、その後ろに窓辺の棚によしかかって本を読む弟の姿があった。

絵にかいたような恋人同士。


私は動けなかった。


弟のミカエルは私に気付き微笑みながら近づいてきた。

「兄上。フィルリア嬢に言ってくれ。このようなところで無防備に寝るな、と。今侍従に、兄上を呼びに・・・」


「わかっている」


ぶっきらぼうになってしまったが、それ以上何も言えなかった。

弟に憎しみを覚えたのだ。

仲の良い弟に。


優秀なのに、私を上げてくれる弟。

信頼してくれる弟。


なのに憎しみを覚えたのだ。


私はそのまま、フィルリアを起こして恥ずかしがる彼女を強引に連れて帰った。

馬車の中で強引にキスしたが嫌がることもせず、恥ずかしそうにしていた。


それでも、気がはれなかった。



その日以来、私はフィルリアをそばから離さなかった。

しかし、反面一人の時間の時にエリスというようになる。


自分の胸の内を全て知っているから。


まさか学院内でエリスと恋仲になり、フィルリアに付きまとわれている、という噂になっていたことなど、気づかなかった。



フィルリアからはそれとなく注意されるも、やきもちか、と嬉しく思ってしまい、聞き流していた。しかも、ミカエルまで苦言を呈するものだから、嫉妬の炎が自分を蝕み、フィルリアにいろいろと無理強いしてしまうようになる。



しかし、エリスに惹かれる自分もまた、否定しきれないでいた。

一緒にいると、愛おしい、その気持ちが先走った。


そして気づけばエリスに心を奪われていた。

そして、フィルリアにも執着していた。


今にして思うのは、フィルリアへの愛が捨てきれず、エリスに幻覚魔法をかけられながらも、彼女に執着していたのだ。


私はエリスに言われるままフィルリアを断罪した。

しかし、側室にもしようとした。


自分は隣国の皇太子のようになりたくない、そう思っていた。しかし、同じになってしまった。


だが、それは実現しなかった。

父王によって、ミカエルとフィルリアの婚姻が決まったと言われた。

悔しく、辛く、身を焦がした。


結局、二人は結婚し、私はエリスを側室にする代わりに、エリスの親友でもあった侯爵令嬢のロディエンヌと結婚した。

しかし、子ができずエリスに子ができてしまった。すぐに隣国からシェヘレザードを娶った。見た目はフィルリアに似ていた。だから寵愛した。


しかし、フィルリアが妊娠し、エリスが彼女に毒をもった。

国同士の争いになるのを避けるため、全て秘密裏に処理した。

そのせいか、エリスの言動は日増しに大きくなり、自分が皇后のようにふるまった。


そんな時皇后に懐妊の兆しが出た。

エリスは発狂し、怒り狂った。


そして私はふと我に返った。

頭がすっきりした感覚だ。

皇后が子供を無事生めれば自由になれる、なぜかそう思った。


皇后が皇子を産み、これで後継者は万全。

そして私はフィルリアに会いに行った。


愛を告白するため。


しかし、もちろん。

彼女は小さなオリバーを抱き、夫となったミカエルと楽しそうに話していた。


嫉妬した。

絶望した。

だから私は最後に彼女を自分のものにした。


ジョスエル侯爵家の舞踏会に出席した際、別室にフィルリアを連れ込み、強引にことに及んだ。


彼女は泣いていた。


そして10か月後。

彼女は女児を産んだ。

フィルリアに似たかわいい女児だった。



弟であるミカエルは、もう私に笑いかけることはなくなった。

フィルリアは命令で呼び出さない限り、私の前に現れることはなかった。


エリザベスの出生の秘密をジョスエル侯爵に握られ、私は傀儡となる道を選んだ。


あのかわいい子を、国の駒とされないように。

あのかわいい子がこの先も幸せに暮らしていけるように。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ