表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

〜想い〜


「「「ーーぼく兄様にいさま居場所いばしょに……ひとつだけ、心当こころあたりがあるんです!」」」


 炎光えんこう言葉ことばに、オレとオカメインコ同時どうじこえげる!


『それは何処どこだ!? たのむ! おしえてくれ!!』


 鳥は鬼気迫ききせまかおで炎光へとり、う。


 そんな鳥の様子ようすに、炎光はちいさくうなずくとはなしをつづけた……。


「………………このむらはずれに『封怨山ふうえんざん』という御山おやまがあるのですが……その御山の洞穴どうけつに……おそらくですが、兄様は居ます」


『ーー馬鹿な!? 封怨山の、それも洞穴にだと!? 何故なぜあのような場所ばしょに炎陽が!?』


 そう鳥は怒鳴どなるが……ふむ、『封怨山』か。いきなりったてきたな……。


 ーー『封怨山』とは、現代げんだいでは禁足地きんそくちとしてられている御山おやまであり……妖達あやかしたちでさえ、『あのやまあぶない場所』だとおそけっして近寄ちかよらない場所だ。


「それは……多分たぶんすべてに絶望ぜつぼう』したから、ぼく父様とうさま所為せいです……」


 炎光はちいさな声でこたえる。


『それはどういうーーモガッ!?』


 オレは、大声おおごえで怒鳴る鳥のくちばし強引ごういんざすと……わりに炎光に問う。


「ーーそれはどういう事なのか、いてもいいか?」


 ……このバカ鳥、オレ達がいまとらわれのだってわすれてるだろ? 不審ふしんおもった兵士へいして話しの邪魔じゃまをされるのは御免ごめんだからな。わるいがだまっていてもらう。


「は、はい……大丈夫だいじょうぶです。炎陽兄様には不思議ふしぎな力があったんですけど……父様はその力をとても気味きみわるがっておられてーー『アイツはあやかし魅入みいられている』と、いつも兄様につらたっていました」


 ほぅ、妖に魅入られている……ねぇ?


「ーーですが、母様かあさま……陽光ようこう母様はいつも、そんな父様をいさめ、兄様の事をかばっておられました」


 ……ふむふむ、母親ははおやは炎陽の味方みかただったって事だな。


「しかし、母様はやまいわずらい……このられてーーそれからというもの、父様はより兄様につらく当たるようになられ……家来けらいたちにも、兄様にきびしくせっするようにとめいじられたのです。勿論もちろん、僕にも……」


 炎光はくら口調くちょうげる。


 う〜ん……自分じぶんめる人間にんげんなくなったから、炎陽により辛く当たるようになったのかーーそれとも……。


「ーーそれで? 父親ちちおやに厳しく接するように命令めいれいされて……それで『きみ』はどうしたの?」


 口をざしてしまった炎光に、オレは問う。


 その問いに、炎光は「……へ?」とこえらすが……オレは問うのをやめない。


「へ? ……っじゃないよ、それで『君』はどうしたの? 大人おとなしく父親のそんな命令にしたがったの?」


 オレの言葉に、炎光はおもく口をひらく。


「ーー僕は……に、兄様の事を敬愛けいあいしていました。だから、父様が命じられたように厳しく接するなど……僕には…できません、でした」


 ……なるほど。でも、それなら……。


「……それならどうして、炎陽が全てに絶望した理由りゆうが父親だけじゃくて、きみの所為にもなるの?」


 父親のあたまのおかしな命令にさからった炎光。そんなかれが、何故、自分自身じぶんじしんめているのだろうか……?


「ーーッ……僕は、くなった母様から……おねがいされていたんです……。父様が兄様に辛く当たっていたのなら、それをめてあげてって! 父のは、自身じしんの子を『まもる』ためのモノであり……だんじて、自身の子を『傷付きずつける』為のモノではないのだから……と、母様が……ッ!」


 炎光は言葉とともに、ポロポロとなみだこぼす。


「それなのにッ……ぼく、こわくって……! ただ、見ていることしか……できなくてッ!! ごめんなさい! ごめんなさい!! にいさまッ!!」


 ーーそういう事だったのか……母親から兄貴あにきの事をたのまれていたのに、父親にたいする恐怖きょうふ結局けっきょく何もできなかった。だから、ずっと自分をめているというワケだ。


 でも、それはーー。


◆◆◆


「……では、僕はこれで……」


 丁寧ていねいあたまを下げ、その場をろうとする炎光に、


「なぁ……明日あすおこなわれるオレ達の尋問じんもんに、君もってくれないか?」


 オレは告げる。


「ーーえ?」


 おどろきの声を上げる炎光に、オレは笑いながら、


「ちょっと君のお父さんに物申ものもうしたい事があってさ……君にもぜひ、聞いてほしいんだ」


 ……そう話す。


「は、はぁ。分かりました……」


 そう炎光はオレに言葉を返すと、今度こんどこそ、その場を去った。


「……痛ッ!?」


 チクッ、としたいたみがオレの手にはしり、オレはおもわず鳥から手をはなす。


『まったく、一体いったいいつまでワシの口をふさぐつもりだ!?』


 ーーあ〜、どうやらさっきの痛みは……この凶暴きょうぼう鳥がつめしてきたらしいな。


 鳥はつばさ半開はんびらきにし、姿勢しせいひくくしておこっている。


仕方しかたいだろ? あのままお前をさわがせていたら、だれかしらてしまうかもしれなかったし」


 オレの言葉に、鳥は『ぅう……』とうなる。


「ーーそれで、どうする? 炎光の話しによれば、炎陽は『封怨山』の洞穴に居るかもしれないって事だけど?」


 その問いに、鳥は言葉を返す。


『……それは今、このろうからしてさがしに行かないか? ーーという事か?』


「いや、オレはサイズてきかんがえて、牢から抜け出すのはむずかしい。でも、お前なら普通ふつうに抜け出せるだろ? 炎陽が居るかもしれないのに……行かなくていいのか?」


 ーーずっと捜していた友人ゆうじんが居るかもしれないんだ……これをてだなんてこくな事を言うつもりはない。


『…………成る程な……。その気持きもちは素直すなおっておくが、だが、おそらくもとときもどらなければ……炎陽を見つける事はできんだろうな……』


 鳥はかなしそうに告げる。


「えっと……それはどういう事だ?」


『ーーこのままワシが炎陽にいに行っても、ワシが炎陽を見つけられなかった『四百年』の時がえるワケでは無いからな……ワシはどう足掻あがいても、炎陽が居なくなってから『四百年』のあいだはーー炎陽を見つける事ができんのだ』


 ……それはアレか? 『時がゆがんでいる』からその場に行っても逢えないって事か? むずかしいな。


「……それならーーもと時代じだいもどるか? 当初とうしょ目的もくてきたせたワケだし」


 オレの言葉に、鳥は苦笑くしょうする。


『ククッ、つかわずともい。……元の時代へと戻るには相当そうとうな力が必要ひつようなのだが、生憎あいにくとまだそこまでワシの力は回復かいふくしておらん』


 ーー『明日の尋問が終わるまでは、戻らんだろう』、そう鳥は続ける。


 あ〜、なるほどね……?


「そっかーーありがとな……凶暴鳥」


『気にするな……お節介せっかい人間』


◆◆◆翌日◆◆◆


 ふたたなわ拘束こうそくされ、昨日きのうおなじ場所までれてかれた。


 ーーあ、今回こんかいは鳥にもちいさな足枷あしかせが付けられているな。足枷からほそい縄がびていて、地面じめん穿うがたれているくいへとつづいている。


 そして昨日よりずっと物々しい雰囲気ふんいきだ。私兵しへいっぽい人も棍棒こんぼうみたいなのをっているし。


 ……ただ、そう悪い変化へんかばかりでは無い。えらそうにすわっている炎翔えんしょうとなりには、炎光がちょこんと小さく座っていた。


 良かった……どうやら、ちゃんと来てくれたようだ。


「ではこれより、詰問きつもん開始かいしする! 貴様きさまら、覚悟かくごしてこたえるがいい!」


 へいへい、偉そうにどうも。


「ーーすいませ〜ん、その前に一つ……オレも炎翔様におたずねしたい事があるんですけど?」


 いやぁ、ホントにすいませんね〜?? そんなこわかおにらまないで下さいよ〜。


「なんと無礼な!! ほどわきまえんか!!」


 そう、なんか炎翔のおきみたいなオッちゃんが怒鳴ってくるが……テメェはだまってな☆ と、言わんばかりにオレは口を開ける。


「ーーあのぉ、炎翔様ぁ? 貴方あなたにとって自分の『』って一体どういう存在そんざいなんですかぁ?」


 オレの腹立はらたつ問いに、炎光はビクッ……と、かたふるわせる。


「……ふん、そんなものまっておろう? わしにとって、自身の『子』とは『たから』だ!」


 ーーほぉ〜、『宝』ですか〜。


「へぇ〜、それじゃあ炎翔様はご自身じしんの『宝』を……ご自身の手で傷付けるのがご趣味しゅみなんですねぇ?」


 そんなオレの言葉に、炎翔は「なに……?」とオレをにらみつける。


 お〜、怖い怖い。でも、事実じじつじゃん?


「あれ、違いました? あぁ、それとも……ご自分の『子』は炎光くん一人ひとりであり、炎陽は自分の『子』では無いとか言っちゃいます?」


「ーーッ黙れ!! おい! はやく、そのものを黙らせんか!!!」


 炎翔の声と共に、オレの頭にすさまじい激痛げきつうはしるがーーそんなモンにひるんでたまるか!!!


『おい貴様! 大丈夫か!?』


 そう鳥が心配しんぱいしてくれるが、問題無もんだいない! メッッッチャいたいけど!!!


「……は、誰が黙るか! 人とは少し違うだけで……少し不思議な力を持って産まれただけで、何故、理不尽りふじんな目にわなければならない!? どうして、実の父親に……迫害はくがいされる!? 本当に『子』を『宝』だと思っているのなら、そんな事できるはずがねぇだろうが!!」


 オレは声をあらげ怒鳴る!!!


 ……オレにも、炎陽と同じ力がある。それでも、オレの周囲まわりの人達は……オレを普通に受け入れてくれた。誰一人だれひとりとして気味きみわるがる奴なんていなかった。


 だから知っているーー本当ほんとうに自分の子を『宝』だと思ってくれているおや姿すがたを……そのり方を!!!


「ーー『妖』が見える? だから何だ!? 『妖』を見て、話しをした事でいったい誰の迷惑めいわくになった!? 誰かに『炎陽』が迷惑をけたか!? 炎翔、アンタに炎陽が迷惑を掛けたのかよ!?」


「「「ーー黙れッッッ!!!」」」


 オレの言葉に、炎翔はついにその場を立ち上がり……オレに直接ちょくせつつかみかかる!!


「ーー何も、何も知らぬクセに!!! 炎陽が儂に迷惑を掛けたかだとッ!? 迷惑などという言葉ではなまぬるいわ!!!」


 炎翔はいかりにまかせて言葉をはなつ!!


「「「ーーヤツは、炎陽めはな……儂の最愛さいあいの人をうばったのだ!!! 儂のもっと大切たいせつな存在であったーー陽光をな!!!」」」


 ………………チッ、やっぱりか!


 オレは内心で舌打したうつ。


「父様! 何を言っておられるのです!? 母様は病でーーッ!?」


「ーー炎光は黙っておれ!! 陽光が病でこの世を去ったのは、炎陽めが儂への報復ほうふくとして陽光をのろったからに決まっておる!!!」


 ……陽光が死んだ後、炎翔はより炎陽につらく当たるようになったーーその理由は、自身を止める陽光が消えたからではなく……『炎陽が陽光を奪った』と思っているから!!


 炎陽には不思議な力があった……だからこそ、陽光が病によって亡くなった事をーー炎陽が不思議な力を使って陽光をのろころしたと思い込みやがったんだ。この大馬鹿おおばかは!!!


 ーーその結果、炎陽はより酷く迫害され……絶望し、姿を消した。そして、母親の最期の願いを叶えられなかった炎光も自分を責め、今尚いまなお、苦しんでいる……。


 全てはーーこの大馬鹿野郎おおばかやろうの思い込み……勘違かんちがいによって!!


「「「ーーふざけんなッッッ!!!」」」


 オレは怒鳴り、炎翔の顔面へとこぶしたたむ!!


 ……もう我慢の限界げんかいだわ! それに、さっきオレも一撃いちげきもらったからコレでおあいこだ!


「おい貴様ッッッ!?!?」


 兵士共があわててオレに掴みかかるが、オレはおかましに言葉を続ける!!


「テメェまじいい加減かげんにしろよ!? 炎陽が陽光を呪った? どうせ呪うんなら散々(さんざん)自分をいじめてきたテメェを呪うわ!! どう考えたら自分を庇ってくれた恩人おんじんを呪うって発想はっそうになるんだよバカかテメェは!?」


 オレの有無うむゆるさない罵詈雑言ばりぞうごんに、炎翔、炎光、そして鳥は呆然ぼうぜんとしているが、こんなモンで終わるとは思うなよ!?


◆◆◆


「ーー良いとししたオッサンが、自分の子が少し他の人とちがってたからって気味悪がってんじゃねぇよビビりがよぉ!! 『子』は『宝』なんだろ!? じゃあその『宝』を自分で傷付けてんじゃねぇよ!!! ……あと、炎光!」


「はいッッッ!?」


 きゅうにターゲットを自分に移され、炎光は声を裏返うらがえし、跳び上がる!!


「ーーお前もお前だよ!! 当の本人ほんにんが目の前に居ねぇのに『ごめんなさい』なんて言っても伝わるワケねぇだろうが!!! それとな、だい大人おとな相手にビビっちまう気持きもちは分かるが、いつまでもその言葉をーー気持ちをさなかったら自分が苦しいままだぞ!? お前はそれで良いのかよ!? 言っておくがな、このオッサンにはちゃんと言わねぇと伝わんねぇよ……お前の母親の本当の願いをーーお前は、気付いてんだろ? それをちゃんと伝えてやれ! そんで存分ぞんぶんに反省しろオッサン!!」


 オレは呆然としている兵士を振りほどき、鳥の足枷に繋がれた縄を力ずくで引き千切ちぎる!


「なんか思ってた展開てんかいとは違うが……言いたい事は言えたから、サッサと元の時代にもどって『封怨山』の洞穴に行くぞ。余計よけいみちをさせて悪かったな」


『ーーふぇ? あ、ああ!』


 テンプレ? 王道おうどう?? 知らんわそんなモン!!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ