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99 虹の旅人6

「歩きながら話そう。あんた達は馬に乗ってくれ。俺が先導する」

 シルヴァに苦笑し、立ち上がったクロードは散らばったロープを片付け、アイメの手綱を握った。

 わたしとシルヴァは、一番体力があるという理由でロキシーに相乗りした。そして、アイメも含めて身体強化の魔法をかける。

「身体強化の魔法か。大したもんだな。さすがニキの娘だ」

 クロードが軽口を叩きながら歩き出し、そのあとをついてロキシーを歩かせた。ガルダとシャンティは、あとからついて来る。


「『虹の旅人』で信用できるのは、ロイとレギーだ。ネンナは俺に惚れてる素振りを見せちゃいるが、いつ寝首をかかれるかわかったもんじゃない。あ、いや、そういう関係じゃない。言葉のあやだ!」

 クロードは自分でネンナという女性が恋人のように言っておきながら、そうじゃないと否定した。大人って難しい。じゃあ、どんな関係なの。


「ボス………カルタスは、教官だった男だ。厳しい訓練で散々俺たちをしごき、てめえにいいように使っていた。訓練所を卒業してやっとおさらばできると思ったら、今度はボスだもんな。ついてなくて、笑えてきたもんだ。レギーとは、訓練所からの腐れ縁だ」

「ロイとネンナは?」

「『虹の旅人』に入ってから知り合った。ロイはまだ若く、下働きをさせられている。ネンナは、対象に体で迫って情報を引き出すのが得意………って、こんな話、ガキに聞かせるもんじゃねえな」

「全くです。もっと有益な情報を話してください」

 わたしをちらりと見たシルヴァの視線が、こんな話をわたしに聞かせたくないと物語っていた。


「ったく。あんたらの味方になるとは、一言も言ってないんだぞ」

「でも、認めてくれたんだよね?」

 だから、色々と情報を話してくれているんだと思う。

 ニコニコしているわたしを見て、クロードはげんなりした表情をした。

「それで、どこまでついて来るつもりだ?あんまり長く一緒にいると、匂いがうつる。一座で飼っている犬に気づかれるぞ。そうなったら、俺でも誤魔化せない」

 へえ~。匂い探知犬?そんなのがいるんだ。

「清浄魔法でもごまかせないの?」

「おいおい、そんな魔法かけたら余計怪しまれるだろ」

 そっかぁ。匂いがすっかり消えて綺麗になってたら、逆に怪しいか。


「任務は失敗だったと報告するんだ。匂いひとつ、ちりひとつ見逃せない。報復にむち打ち5発で済めば軽いもんだ」

「えっ、そんなことされるの?!だったら、身体強化の魔法を………」

「だから、だめだって言ってんだろ!」

 う~む。ひどい目に遭うことがわかっていながら、なにもできないなんてもどかしい。

「セシル様が気に病むことはありません。あの男の問題です」

「そうさ。気にすんな」

 そう言ってニッと笑ったクロードは、魅力的に見えた。


 改めてクロードを見てみた。波打つ茶色の髪に、緑色の瞳。顔立ちは異国情緒が感じられるイケメン。年は25~26歳。筋肉質の体はほどよく引き締まっていて、背はとうさまと同じくらい。高いのだ。これでモテないわけがない。人目をひかないはずがない。

 女性は、危険な男に惹かれるという話を聞いたことがある。わたしは、安心できる人がいいけれど。とにかく、クロードが一声かければ、誘いを断る女性はいないだろうと思われた。

 なるほど。そうやって情報収集しているわけか。

「なんだよ、その目は!蔑むような目はやめてくれ!」

「くふふっ」

 シルヴァの嘲笑うような笑い声が響いた。


 そんな調子で夜まで過ごした。

 『虹の旅人』は総勢18名の集団で、ボスがカルタス、ナンバー2がプロンプト、そしてナンバー3がクロード。一目置かれる存在らしい。まぁ、王家の末席と言い聞かされていたのだから、そのくらいの地位があってもいいよね。ちなみに、さっき話に出て来たレギーがナンバー6で、アイメがナンバー7、ロイがナンバー18だそうだ。各地を巡りながら情報収集を行い、本国ア・ッカネンに届けるのが仕事だという。そのための隠れ蓑として、旅芸人の一座に扮しているとのこと。


 夜になり、森の開けた場所に着くと、クロードはようやく立ち止まった。

「………ここなら、野営地にぴったりだろう。セシル達は、ここで休んでから仲間と合流するんだな」

 言いながら、周りの木々を気にする様子のクロード。

 気配を隠していないので、わたしにも彼らが木々に隠れているのがわかる。

「ここまでありがとう、クロード」

 お礼を言うと、クロードは緊張した様子で答えた。 

「こちらこそ。セシルに会えてよかったよ」

「あなたにもセシル様の魅力が伝わったようでなによりです」

 シルヴァはいつも通りだ。


 クロードがアイメを連れていなくなると、木々の上から3つの人影が飛び降りて来た。とうさまにレイヴ、エステルだ。

 すぐさま、とうさまに抱きついた。

「怖い思いをさせてすまなかった。怪我はないな?」

 怪我の確認は、わたしではなくシルヴァに向けてされていた。わたしにシルヴァが付いているのがわかっていたんだね。

「ございません」

 シルヴァは、当たり前だと言わんばかりに頷いた。



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