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92 プロポーズ

 あ、しまった!人を利用するなんて考え方はよくないよね。反省しなきゃ。

 図書館に着くと、昨日と同じ受付嬢が2人いた。1人は、例のメルだ。

 メルは、シルヴァを見ると顔を嬉しそうにほころばせた。

 もう1人の受付嬢と賭けでもしていたのかな?メルが彼女を見ると、彼女は悔しそうにコインをメルに手渡した。けれど、とうさまとレイヴを見た瞬間、目が輝いた。

 えっ、まさか、メルに対抗して、とうさまかレイヴのどちらかと仲良くなろうとしてるの?


 受付嬢の色目に気づいたとうさまは、一瞬で氷のように冷たい気配を纏った。全身で、「近づくな」とアピールしている。鋭く睨みつけると、受付嬢は諦めたように肩を落とした。ここまで拒絶されて、近づこうとは思わないよね。

 そして受付嬢は、標的をレイヴに決めたらしい。胸元のボタンをさりげなく外し、受付から身を乗り出した。シャツから、大きな胸がはみ出しそうになっている。ちょっと、やり過ぎである。

 レイヴはため息をつくと、わたしの肩に腕を回した。

 受付嬢のアピールを見ていたとうさま達は、誰もレイヴを止めようとはしなかった。レイヴの心情を察したのだと思う。


「メル、今日も昨日と同じ部屋を利用したいのですが、お願いできますか?」

「ええ、もちろん。ですが、これ以上、人を増やさないでくださいね」

 メルは、言っているほど気にした素振りもない。ただ、人数が増えたことを責めているのは事実だと思う。

 人数が増えると、それだけ秘密が漏れやすくなる。故意がそうじゃないかに関わらず、ね。

「大丈夫です。個室に入るのは、昨日と同じく私とセシル様だけです。他の者は、一般の書物を読んで過ごしますよ」


 とうさまは暗部時代に王宮図書館に出入りできたから、今さら、一般向けの図書館で読みたい本などないらしい。レイヴとエステルは、本自体にあまり興味がないみたい。

 それで、禁書コーナーにはシルヴァとわたしだけが行くことになった。

 わたしとレイヴが離れることを聞いた受付嬢の目が、キラリと光ったような気がした。

 全員分の入館料をとうさまが払い、中に入った。

 2時間後に受付に集まることを約束し、それぞれが散って行った。

 もし受付嬢に絡まれることがあっても、とうさまとレイヴなら、うまくあしらえるでしょう。うんうん。


 シルヴァとわたしはメルに案内してもらい、禁書コーナーへ向かった。

 今回も、禁書コーナーの部屋にいられる時間は2時間だけ。

 どんな本を読もうかな?

「セシル様、少しよろしいでしょうか?」

 突然、声をかけられてびっくりした。

「うん、いいよ。どうしたの?シルヴァ」

「私がかの国を挫いたら、私を信用してくださるという話を覚えていらっしゃいますか?」

「そういえば、そうだったね」

 あの時は、こちらから呼びもしないのに突然現れたシルヴァを信用できなくて、エ・ルヴァスティ領の祈りの間でそんな申し出を受けたんだったね。


 今はもう、シルヴァのことを信用している。それはわたしの態度でわかっているはずなのに、わざわざ確認するなんて、律儀というか、なんというか………。

「その話をするために、2人きりになるのを待っていたの?」

「ええ。セシル様だけにお話しておきたいことがございましたので」

 なんだろう?わたしだけに話したいこと?

 シルヴァはわたしに椅子に座るよう促すと、自分も向かいの席に座った。どこか、うきうきした雰囲気を感じる。

 嫌な予感しかしない。


「短い間でしたが、セシル様と過ごす時間は私にとってかけがえのないものとなりました。まさに至福の時間と言えるでしょう」

 なにが言いたいんだろう?もしかして、別れの挨拶とか?

「セシル様の温もりを感じ、そのお姿をお傍で拝見できる幸せ………まさに至福!」

 いや、だから、なにが言いたいの?

 次第に興奮していくシルヴァとは対照的に、わたしの心は冷めていく。

「つまり………」

「………??」

 シルヴァは席を立つと、優雅にテーブルを回ってきてわたしの前に跪いた。わたしの左手を取り、美しい顔に魅力的な笑みを浮かべながら、わたしの手の甲に口づけをした。

「私の妻になってください」

「………」


 プロポーズされた!?


「あ、あの………」

「お返事は、いますぐでなくてかまいません。よくお考え下さい」

 シルヴァは真剣な表情の中に、柔和な笑顔を浮かべている。

「本気なの?」

 シルヴァは跪いたまま、いまもわたしの左手を優しく握りしめている。不思議と、その手を振りほどくことができない。

「ええ。本気です。私はセシル様に恋をしています。この心をお見せできなくて残念です」

「でも、イヴェントラは?彼女が好きだったんじゃないの?」 

「そうですね………いまなら、あの娘がシッセルに執着した気持ちがわかります。以前の私は、ただ興味深い対象に執着していたに過ぎません。セシル様のいう、好きとは違います。セシル様になら、セシル様だけが、私が心を捧げることができる相手なのです」


お休みしたおかげで、また書けそうです。今度は、本当にゆっくりやっていくつもりですので、よろしくお願いします。

次は14日に投稿します。

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