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81 ル・スウェル国の王都への道のり

 わたし達はレ・スタット国を出て、ル・スウェル国の王都を目指していた。

 今頃、チャールズ王はどうしているだろう?召喚の儀式を失敗した宰相や術者達に怒り狂っているだろうか?

 それはともかく、チャールズ王は悪魔召喚に失敗した理由を見つけるまで、次の召喚の儀式は行えないと思う。そもそも、なにを召喚したのかわかっていないだろうし、儀式に参加した術者達は魔力が空っぽになって、次の儀式が行えるまで時間がかかるはずだ。ついでに、兵士達も解放してもらえたらいいのに。

「あの魔法陣は、黒の眷属を召喚するものでした。ただ、大した悪魔は召喚できなかったでしょうね」

 そう断言するシルヴァに聞き返した。

「どうしてそんなことがわかるの?」

「私が黒の眷属だからですよ。黒の王に使える者は、おもしろい人間が好きでして。自分の好みの人間以外には、力を貸そうとしないんですよ。私も、こう見えてわがままなんですよ」


 シルヴァがこちらの世界に来たのは、わたしがイヴェントラの血を引いているからだよね。イヴェントラの気を引くために、わたしとの関係を利用しようとしているって前に言っていた。

 イヴェントラはなんの眷属なんだろう?

「あの娘は、赤の眷属ですよ。とても情が深いんです」

 だから、シッセル女王に出会ったとき、彼女が亡くなるまでそばを離れなかったのかな。

「たしか、いまもイヴェントラはシッセル女王を想っているって言っていたよね?」

「えぇ、実に興味深い。それだけの想いを寄せる人物に会ってみたいものです」

 でも、すでにシッセル女王は亡くなっている。だから、その子孫のわたしが気になるということかな。

 さっき、シルヴァは「おもしろい人間が好き」と言っていたけれど、わたしにそんな面白味があるのは思えない。こうしてロキシーに相乗りしたり、優しくしてくれる理由がいまでもわからない。


 シッセル女王の子孫というなら、チャールズ王でもいいはず。

「私は、チャールズ王のような傲慢な人間は好みません。それに。あなたがいなければ、こんな世界なんの興味もありませんよ。あなたがいるから、こんな世界でも私には興味深いものへと変わるんです。くふふっ」

 ふ~ん。シルヴァなりの考えがあることはわかった。その対象がどうしてわたしなのかはわからないけれど。

 やがて、シルヴァの腕の中で眠気に襲われ、その胸に体を預けることになった。

「………おやすみなさい、セシル様」


 レ・スタット国の西に位置するル・スウェル国は、宗教国だ。王都にはエウレカ教の総本山たる大聖堂があるノヴァク自治区があり、人々は信心深い。

 エウレカ教では、トップ10人は決まった名前で呼ばれている。教会トップに君臨するアインス教皇、そしてナンバー2のツヴァイ御子、3位以下は8人の枢機卿で、順番にドライ、フィーア、フュンフ、ゼクス、ズィーベン、アハト、ノイン、ツェーンとなっている。ちなみに、今代のアインス教皇とツヴァイ御子は夫婦だ。16年前に正式に結婚をしている。

 そしてとうさまは、このル・スウェル国の王家直属の暗部クロウの一員だった。10歳から正式に引退する31歳までクロウに所属していた、ベテラン元暗部だ。 

 子供がなんの役に立つの?と思われるかもしれないけれど、子供だからこそ紛れ込める場所というものはあるし、子供相手だから情報をしゃべってくれる人間というのもいるのだ。


 とうさまにとって、6歳から31歳まで過ごしたル・スウェル国の王都は、第2の故郷とも言える場所だ。もちろん、知り合いも多い。と言いたいところだけど、暗部として活躍していた頃の知り合いがそんなに多いわけがない。知り合いが多かったり、顔を覚えられたりしていては暗部失格だ。暗部が身に着ける服には、認識阻害の魔法がかかっているんだから。

 認識阻害の魔法を衣類やアクセサリーにかけておくと、とっても便利だよ。それだけで、人から注目されなくなるからね。

 ただし、永続的に効果があるマジックアイテムは数が少ない上にとても高価だ。普通は、その貴重品を手に入れるのは困難だ。

 特にとうさまが身に着けているマジックバックは、とてもお金には変えられない貴重な品なんだよ。マジックバックには、空間拡張と時間停止の魔法がかけられているの。


 わたしも空間拡張と時間停止の魔法を使えないか試しているんだけど、これが難しいの。わずかな時間だけならできるんだけど、長い時間は無理。

 それより、時間が停止した異空間をマジックバックの代わりに使えないか考えているんだけど、これもいまのところは難しい。空間を切り開くことはできるんだけど、すぐに閉じてしまうの。膨大な魔力が必要なのかもしれない。

 ル・スウェル国の王宮では、マジックアイテムを作る技術が優れているの。だから、クロウ全員の衣類に認識阻害の魔法をかけることができるんだよ。

 わたしも、物に魔法を定着させる技術を学びたいな。そうしたら、色々とおもしろいことができそうじゃない?



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