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8 王女殿下2

 だから、ガーラムを捕まえたり、繁殖させたりして少しづつ数を増やしている。ガーラムの生息域は、外洋。危険な魔物が住む外洋まで行くだけでも大変なのに、そこでガーラムを探して捕獲するとなれば、どれほどの危険が伴うかしれない。そうやって手に入れ、長い時間をかけて調教した大事なガーラムに乱暴を働くなどもってのほかだ。

「…なるほど。よくわかりました。メリス島から、ガーラムを取り上げましょう。わたくしから王様にお伝えします」

「そうしてもらえると助かります」

「では、ニキ様はわたくし専属の護衛としてこの王宮に………」

「それはお断りします。しばらく港町の宿屋に泊まり、問題が片付いたらこの国を出ます」

「なっ、なっ、なんですってぇ~~~!!」

「元々、この国は休暇のために立ち寄ったとお話したはず。休暇が終われば立ち去ります」

「だ、だめよ!ずっと傍にいて。わたくしを守って。そう、そのためなら、爵位もあげるわ!」

 王様でもないのに、そんな約束していいのかな?王様に泣きつく気かな?でも、そんなことしたら、交換条件で政略結婚とかさせられそう。


 王位を継ぐのは、ア・ムリス国では男子のみと決まっている。そして、優秀な第1王子がいて、予備となる第2王子もいる以上、王女殿下は嫁ぐしか道がない。それが王家と言うもの。他国か、国内の有力貴族に嫁いで相手の家との繋がりを作り、ア・ムリス王家をより強固なものとすべく使われる道具。

 どんなに嫌でも、王女殿下は道具として他所へ嫁ぐしかない。婿を取ることは不可能なの。

 とうさまを傍に置いておきたいなら、今までのように護衛にするしかない。爵位なんて与えても、せいぜいが男爵でしょう?とても王女殿下とは釣り合わないから結婚はできないし、男爵家当主を護衛にすることはできない。傍にはいられないということ。


「爵位など必要ない。この国に残るつもりがないんだ」

「嫌よ。そんなこと認めない。出ていくんだったら、ガーラムの件は放置しますわ。それでもよろしくて?」

 そんな子供みたいなこと言って………って、あぁ、そうか。子供なのか。見た目が大人なだけで、中身は子供なんだ、このお姫様は。だから18歳にもなって婚約者もいないし、夢ばかり見ているんだわ。


「…アリッサ姫、君にもわかっているはずだ。ガーラムはア・ムリス国の宝だと。決して、乱暴に扱われていいわけではない。そんなことを放置していたら、困るのは国民であり、現状を知っていて放置した責任を取らされるのは現場の人間だけじゃない。君もだ」

「どうして…」

「なぜなら、今のやりとりも含めて、王様に報告するからだ。いいのか?責任を取る覚悟はあるのか?」

「うわあ~~ん!!」

 大声で泣き出した王女殿下。本当に子供みたいな人だな。


 ばんっ!!


「王女様、どうしました!?」

 扉が開いて、侍女が駆け込んできた。

「ニキ様!王女様になにをされたんですか!」

 怒っている侍女達に、今までの経緯を説明した。もちろん、とうさまが。怒っていた侍女達の表情が、次第に曇っていく。王女殿下がとんでもないことを言って、とうさまを困らせているということわかったからだ。

 いくら王女殿下とはいえ…ううん、王女殿下という立場だからこそ、己を律して国民に尽くさなきゃいけないというのに。これでは、まったく逆のことをしている。


「明日、また来ます」

「わかりました。今のお話は、王様へ伝わるように致します」

 とうさまは侍女の1人に頭を下げて、わたしと一緒に部屋を出た。

 さて。これからどうしようか。ウルンサとエレクはお腹を空かせているだろうから、ガーラム便の乗り場へ戻ってご飯をあげようかな。ううん。乗り場の人が気を使ってご飯をあげているから大丈夫だ。オッサムさんとは違うからね。


「…セシル、観光でもするか?」

「え、うん!行く!」

 わたしはア・ムリス国に来て観光する間もなくメリス島へ渡ったから、もっとこの国のことを知りたいと思っていたの。ああ、どうしよう。どこへ行こうかな?森もいいな。森とか、森で遊ぶとか!いいなぁ~。

 だって森には、この島特有の動植物がいっぱいいるんだよ?仲良くなって………って、ダメだ!大陸の森と違って、本島の森は観光客で溢れている。ツアーガイドが、特別料金を貰って貴族や学者達を案内しているの。そんな所へのこのこ行って、わたしが魔獣と仲良くできるわけがない。ただでさえ珍しい魔物使いだもの。魔法に慣れていない人達から見たら、神の使いに見えるかもしれない。うわー、ないわぁ。うん。森へ行くのは止めて、普通に王都を観光しよう。


 ア・ムリス国の王都ディドラは、旧市街と新市街に分かれている。旧市街は建物が低く、ほとんどが平屋だった。湿気がこもらないようにするためか、窓が大きく風通しが良さそう。小さいながらも、ほとんどの家に庭がついている。さすがに貴族が住むには小さいが、上級商人などの地元の有力者が住んでいる。新市街は建物の高さが4階建てに統一されていて、1階が店舗、2階~3階が住居となっている所が多い。大陸の街みたい。

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