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77 招待状

 1階の食堂で早めの昼食をとり(話過ぎて、朝食は間に合わなかった)、全員で孤児院へ向かった。

 わたし達はココちゃんに見つかり、すぐに院長室へと案内された。予想はしていたけれど、応接室よりひどかった。

 院長先生は立ち上がり、驚いた顔でわたし達を見回した。

「まだ、なにか?」

「こんにちは、院長先生。今日は食材の寄付に来ました」

「えっ?」

 その驚きっぷりに、わたしが驚いた。

「余計なことでしたか?それなら………」

「いいえ!ありがたくいただきます!」

 辞退しようとしたところを、勢い込んで止められた。


 そして厨房に案内してもらい、とうさまがマジックバックから次々と食材を出して行った。オーク丸々1頭は食べきれないだろうから、半分だけ。あとはホーンラビットや鹿、鳥、野菜に果物、チーズもある。魚は調理の仕方がわからないとのことで、やめておいた。

 レ・スタット国に海はないから、魚介類は食べ方を知らないんだね。

「じつは、フォタリから花火大会の招待状をもらったんですが、孤児院の子供達を全員連れて行くことはできないので、辞退しようと思っていたんですよ。よろしければ、受け取ってもらえませんか?」

 食材の山に倒れそうになっていた院長先生が、ポケットから封筒を取り出してそう言った。

 少しよれた封筒を受け取った。中には、たしかに招待状が入っていた。招待人数は6人までとなっている。わたし達のパーティーは4人なので、全員参加できる。

 やった!これで、王宮に潜入できる。


 どうやってわたしとレイヴが王宮に潜入するか、それが問題だったの。わたし達はとうさまみたいに、こっそり潜入なんてできないから。シルヴァは、なんとかできそうな気がするけどね。

 正々堂々と正面入口から入って、あとは姿を隠す魔法で身を隠し、ひっそり召喚の儀式が行われる場所まで行けばいいのだ。

「院長先生、こんな貴重な物をありがとうございます」

「とんでもないです。私達のほうこそ、こんなに沢山の食材をありがとうございます」

「食べきれない分は、売ってかまいませんからね。売ったお金で、必要な物を揃えてください」

「本当にありがとうございます!」

 生き物は食べ物がないと生きていけない。そして、人は食べ物だけでは生きていけないのだ。


 人が生きるために必要な物を、衣食住っていうよね。ここの孤児院はかろうじてボロボロの住まいと、わずかな畑があるかぎりで、衣食住のどれも足りていないように見える。

 そして、財政難にあえいでいて、いつ潰れるかわからない。

 おそらく、貴族も以前ほど余裕がないのだろう。余裕があれば、慈善活動をして自分達の承認欲求を満たそうとするだろうから。

 院長先生と子供達総出で見送られて、わたし達は孤児院をあとにした。と言っても、子供達の多くは仕事を求めて街に散らばっているらしく、見送ってくれたのは小さい子がほとんどだった。

 一緒に昼食を、と誘われたけれど、ここへ来る前に食べたばかりなので、そんなに食べられない。丁重にお断りした。


 今日はもう宿屋へ戻り、休むことになった。

 宿屋の部屋に入ってすぐ、とうさまが結界を張った。

 いよいよ、明日は氷の精霊フェンリルを召喚する日だ。それまでにしっかり打合せをしておかないとね。

「…招待状が手に入ったのはよかったな」

「そうだね。精霊召喚だったら、生贄に用意された5人は助かるよね?」

 悪魔なら実体を用意するため生贄が必要だろうけど、精霊には生贄は必要ないよね?これまで色々とお世話になってきたフォタリは助けたい。招待状が手に入ったのも、フォタリのおかげだもの。

「セシル様は、フォタリを心配しておいでなんですね?大丈夫ですよ。精霊召喚に魔力は必要ですが、生贄は必要ありませんから。あの少年は助かりますよ」


 魔力と言えば、チャールズ王が用意した15人の術者の魔力でフェンリルを召喚できるのだろうか?下位ならまだしも、上位精霊となると、膨大な魔力が必要じゃないのかな?

「そうですね。ですから、召喚の儀式では、セシル様にご助力いただきたいと思います」

「というと?」

「悪魔召喚の儀式が始まったら、私が魔法陣を書き換えます。大丈夫。少しづつ行いますから、誰にも気づかれることはないでしょう。その新たな魔法陣を描くのに、セシル様の魔力を頂戴したく思います。その際に、魔法陣とセシル様を繋ぐ道を作りますので、術師共の力不足であった場合には、セシル様がさらに魔力を注ぎ込むことができます」

「そうすると?」

「セシル様が、魔法陣と術師共の魔力を奪い取ることができます」

 シルヴァがいい笑顔で微笑んだ。


 それはつまり、わたしがフェンリル召喚の儀式を行うということだ。

 せっかくフェンリルを召喚するのだから、女の子がいいな。だって、レイヴもシルヴァも男なんだもの。わたしにだって、女同士で話したいことだってあるよ。

「えっ、雌のフェンリルがいいんですか?普通は、そこまで細かい設定はしませんが、セシル様のお望みです。やってみましょう」

「ありがとう、シルヴァ。お願いね」

「はい。かしこまりました」


書き溜めが少なくなったので、今日から1日1話投稿にします。

よろしくお願いいたします。

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