76 4大精霊とは
精霊って、どうやって仲間にするんだろう?召喚したのかな?………そうか!チャールズ王が行おうとしている召喚のエネルギーを、他の対象に変えることはできれば………あるいは。
「ねぇ、とうさま。チャールズ王が召喚しようとしているのは、悪魔に間違いないの?」
「あぁ、そうだ。準備している魔法陣は、悪魔召喚に関するものだった」
とうさまは、結界を張ってから答えた。怪訝な表情をしている。
「シルヴァ、魔法陣を書き換えることはできる?」
「できますよ」
シルヴァは、ためらうことなく答えた。まるで、手紙を書き換えることができる、というときのような気安さだ。手紙を書き換えるのだって、それなりに大変なのに。
「悪魔を召喚しても、その悪魔は退治して悪魔界に戻すんでしょう?」
悪魔は肉体を失うと、その魂が悪魔界に戻るの。魂が消滅しないかぎり、不死の存在なんだよ。
「せっかく召喚のエネルギーがあるのだから、それを使って上位精霊を召喚できないかな」
3人の男達がはっとした顔をした。
「なるほど。敵の戦力を潰すだけではなく、こちらの戦力を増すのもまた一興」
「その手があったか」
「精霊を召喚するとなると、契約主となるセシルも行ったほうがいいな」
レイヴの言葉に、慌てて断ろうとした。
「えっ、わたしじゃなくても………」
「いえ、ニキではだめです。セシル様こそ、精霊を使役するに相応しいですよ」
どうして、そんなに自信満々かな………。
「それで、セシル様はどの精霊をご所望ですか?」
どのと言われても、わたしはサラマンダーくらいしか知らない。そのことをシルヴァに言うと、丁寧に教えてくれた。
まず、精霊には4大精霊がいて、下位と上位に分かれているそうだ。
火の上位精霊はイフリート。火の魔人だ。それと、不死鳥のフェニックス。
風の上位精霊はジン。風の女王。
水の上位精霊はクラーケン。クラーケンて精霊だったんだね。美味しく食べちゃったよ。
土の上位精霊はベヒモス。大地の巨獣。
そして氷の上位精霊がフェンリル。
この中で言うと、イフリートかジン、フェンリルだよね。だけど、どれも連れて歩くには目立ちすぎる。
「それなら、下位の精霊はいかがですか?」
と言って、再び、シルヴァが説明を始めた。
火の下位精霊はサラマンダー。火とかげ。
風の下位精霊はシルフ。風の乙女。
水の下位精霊はウンディーネ。水の乙女。
土の下位精霊はノーム。大地の子。
他にも、勇気の精霊バルキリー、戦乙女がいるそうだ。
だけどバルキリーは男しか使役できないそうで、わたしにはおすすめできないと言われた。
う~ん。そうなると、母さんと同じサラマンダーか、シルフ、ノームだね。わたし達にはレッドドラゴンのレイヴがいるから、水の精霊であるウンディーネとは相性が悪いもんね。
レイヴと相性がいいのは、風の精霊シルフだよね。
そう言うと、シルヴァが渋い顔をして首を左右に振った。
「精霊の主となるのはセシル様です。レイヴではなく、セシル様との相性をお考えください。まず、人型と獣型のどちらがよいかお考えになってみてはどうです?」
なるほど。それはいい考え方だね。
人型では、イフリート、シルフ、ジン、ウンディーネ、ノームがいる。
獣型では、サラマンダー、フェニックス、ベヒモス、フェンリルだ。
「そういえば。連れ歩くことを前提に考えていたけれど、必要になったらその都度、呼び出すことはできないのかな?」
「できますよ。サイズも変えられますから、フェニックスを小鳥サイズにして肩に乗せることも、フェンリルを子犬サイズにして抱きかかえることもできます」
「へぇ~、便利なんだね」
「ちなみに、ベヒモスは巨大な水牛の姿をしていますよ」
そっか。水牛はちょっと嫌だな。
フェンリルはいいな。子犬サイズだと犬と見分けがつかないだろうし、大きくなったらかっこいいよね。
ジンはレイヴの火とも相性がいいから、うまくやってくれそうな気がする。
どうしよう。迷うなぁ。
だけど………ううぅぅっ。もふもふの誘惑に抗えない!
「フェンリルにする!」
そう宣言すると、3人は嬉しそうにした。
「それでは、さっそく準備にかかりましょう」
「そうだな。セシルも連れて行くとなると、少々、計画の変更が必要だな」
「俺も行くぞ!」
置いて行かれてはたまらないと、レイヴが焦って言った。
それにしても、嫌悪しかなかった召喚の儀式が楽しみになってきた。早くフェンリルに会いたい。
わくわくするわたしとは対照的に、シルヴァととうさまは難しい顔をして打合せしている。
そうだよね。魔法陣を書き換えないといけないのに、事前に書き換えたらチャールズ王側に気づかれるかもしれない。そして術者達の召喚エネルギーを使うためには、悪魔召喚が始まってから、瞬時に魔法陣を書き換えないといけない。
先に魔法陣を組んでおいて、そのときになったら出現させるのかな?それとも、その場で魔法陣を組むのかな?どちらにしても、大仕事だね。




