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75 情報交換

「くふふっ。悪魔にとって、ただの人間より、術者の方がよほど美味しい生贄となるでしょうね」

「えっ。じゃあ、生贄に選ばれた5人は生き残れるかもしれないの?」

「そもそも、実体を持たない悪魔をこちらの世界に召喚するには、依り代を与えてやる必要がある。そのための生贄なんだ。生贄が多いほど、悪魔はその力を発揮しやすくなる。その場にいる全員を食い殺してもおかしくないんだ」

 言って、レイヴはちらりとシルヴァを見た。 

 そういえば、シルヴァには生贄を捧げていなかった。どうやって実体化しているんだろう?

「エ・ルヴァスティの民は信心深くてね。毎年、山羊や獣を生贄として祈りの間に捧げてきたんです。それに、あそこは墓地も近いですしね。長い年月をかけてあの場所に沁み込んだ魂と血を使い、私は実体化をしたんですよ。たかが十数人の生贄を取り込んだくらいの悪魔では、私には歯が立ちませんよ」

「じゃあ、戦争でたくさんの人の命が失われたような場所で召喚の儀式を行えば、強力な悪魔を召喚できるかもしれないってこと?」


「それが、そうとも言い切れません。まず、この世界に興味を持っている悪魔が召喚に応じる必要がありますが、それが強い悪魔とは限らないからです。弱い悪魔が複数、召喚される可能性もあります」

 召喚の儀式をする術者と、召喚に応じる悪魔の相性も関係しているのかもしれない。

 そもそも、悪魔召喚なんて危ないことをできる術師がどれだけいるか………15人だって、相当な準備をして集めてきたんだろうし。

「それに、悪魔には派閥というものがありましてね。同じ派閥なら、下の者はまず上の者に歯向かおうとはしません。チャールズ王が召喚する悪魔が私と同じ派閥なら、戦うまでもありませんよ」

「なるほど。悪魔は縦社会なんだね」

 実力主義のところは、どこも縦社会なんだね。 

 

「それで?ここまで来たのはいいが、どうするつもりなんだ。前と同じく生贄を助けるのか?召喚の儀式を行わせて、悪魔を潰すのか?どっちだ?」

 生贄を助けるだけなら、チャールズ王側はいくらでも新たな生贄を用意できる。術師も無事なんだから、また時期を見て召喚の儀式を行えばいい。

 だけど、召喚した悪魔を潰せば、チャールズ王のやる気を挫ける。せっかく準備して、悪魔召喚に成功したとしても、その悪魔を活用する前に殺されるなら、召喚の儀式をやる意味がなくなるからだ。

 どちらも利点がある。1つ目の案は、生贄を助けることができる。だけど、儀式までは丁重に扱われているから、助け出しても、また王宮へ戻ってしまうかもしれない。

 2つ目の案は、生贄は犠牲になるかもしれないけれど、これ以上、召喚の儀式を行わないようにできる。

 どちらも、メリットとデメリットがあるのだ。そして、2つの案を天秤にかけたとき、傾くのは2つ目の案。確率は低いけれど、生贄を助けられるかもしれないしね。


 そう説明すると、レイヴは納得した。

「それはわかった。だが、誰が行くんだ?」

「あ、それはね………」

「私が行きます」

「俺が行く」

 話しかけたとき、シルヴァととうさまの声がかぶった。

 うん。2人に行ってもらおうと思ってたけどね。

「下級悪魔など、セシル様のお目汚しになります。御覧にならなくて結構です」

「召喚の儀式には、チャールズ王も立ち会うかもしれない。あの男に会うのは危険だ」

「うん、言われなくてもわかってるよ、わたしが足手まといになることくらい」


 そう言うと、シルヴァが慌てて否定してきた。

「そういう意味ではありません。尊いセシル様には、安全な場所でお待ちいただきたく申し上げております」

「あははっ。そんなに慌てなくていいよ。できれば、王宮なんて行きたくないと思ってるし、召喚の儀式にわたしが立ち会っても、できることなんてないでしょ?ここでレイヴと待ってるよ」

 ということで、話が終わった。

 とうさまが結界を解き、それぞれがベッドにもぐりこんだ。

 明日の朝は、とうさまとレイヴのどちらが隣にいるんだろうなぁ。 


 と、思っていたら、ベッドの隣に椅子を置いて、シルヴァが座っていた。

 なぜ!?

 思わず2度見してしまった。

 わたしとの添い寝の他に、見張りをすることも加わったの?一体、わたしが寝てる間に、3人の間でなにが起きているんだろう?

「おはようございます、セシル様」

 あぁ、笑顔が眩しい!

「さぁ。そのトカゲから離れて、朝食を食べに行きましょう」

 わたしの腰に、独占欲丸出しで置かれていた腕がぴくりと動いた。

 それと同時に、向かいのベッドに腰かけていたとうさまが肩を震わせた。あれっ、笑ってる?トカゲに反応したのかな?


 トカゲで思い出すのは、母さんの精霊だったサラマンダーだけど………サラマンダーは火トカゲとも言うよね?でも、その火トカゲを思い出して笑うなんて、とうさまも失礼だね。

 あのサラマンダー、なんて名前だったかな?たしか………イグニス?そう、イグニスだった!母さんが亡くなったあと、契約の効力がなくなって去って行ったんだよね。 

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