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73 聞き取り

「お兄ちゃんすごい!魔法が仕えるの?」

「くふふっ。もっと褒め称えてもいいんですよ」

 ココちゃんに褒められて、シルヴァは満足そうだ。美しい顔が、嬉しそうに微笑んでいる。

「ココちゃん、院長先生に話を聞けるかな?」

「うん、いいよ。院長先生に聞いて来るね!」

 そう言って、ココちゃんは孤児院の中へ駆けて行った。そしてすぐに戻って来て、応接室へ案内してくれた。

 中は相変わらずボロボロで、床の穴が1つから2つに増えていた。

 応接室に入ると、やはりボロをまとった、白髪の男性がいた。わたし達を見ると立ち上がり、優しそうな笑みを浮かべた。


「初めまして、院長先生。わたしはセシルと言います」

 3人の中で1番年下のわたしが挨拶を始めたことに驚いたのか、院長先生は少し目を細めた。

 レイヴもシルヴァもわたしを優先するから、とうさまがいないときは、わたしが代表して話すことになるの。

「こちらはレイヴ、そしてこちらがシルヴァです」

「そうですか。わたしはこの孤児院の院長イコラです。どうぞおかけください」

 全員が座ったところで、イコラ院長が切り出した。

「ところで。私になんの御用ですか?」

「さっきココちゃんから、フォタリが王宮の兵士になったと聞きました」

「あぁ、そのことですか。あなた達も王宮の兵士になりたいのですね」

 合点がいった、という様子でイコラ院長が頷いた。

 他にも、フォタリの話を聞きに来た人がいたんだろう。


「お話するのはかまいませんが、その代わり、私共にもなにか見返りをいただけないでしょうか。見てのとおり、この孤児院は財政難でして。少しでかまいませんので、寄付をお願いします」

「いいで………」

「それは、ずいぶんと足元を見た提案ですね。お聞きする内容によっては、私共にはまったく価値がない可能性もあります。慈善家として、その発言はいかがなものでしょうか」

 あっさり承諾しようとしたわたしの言葉を、シルヴァが遮った。

 わたしは話を聞けなくても寄付するつもりだったけれど、たしかにシルヴァの言うことももっともだ。イコラ院長が、さらに寄付金をせびろうと話を出し渋る可能性もあるしね。

「シルヴァさんのおっしゃるとおりだ。気持ちが焦ってしまい申し訳ない」

 しかたない。いい人でも、追い詰められたら豹変することがあるんだから。


「フォタリは、この孤児院出身のハンターでした。不器用でしたが、少しでもこの孤児院に恩返しがしたいと言ってハンターになったんです。いつも生傷が絶えず、心配していたんですが、兵士に採用されて安心したんですよ。ようやく、あの子を評価してくれる人が現れたのだ、と。初めは、グラン伯爵館で他の兵士と同じように務めていましたが、やがて王宮からお声がかかりましてね。そう、あれは………グラン伯爵館で盗難騒ぎがあった頃です。なにか大切な物がなくなったとかで大騒ぎになったんですが、幸い、フォタリが休みの日の出来事で、フォタリが責められることはありませんでした」

 そっか。子供達を攫ったことで、フォタリが責められることはなかったんだ。よかった。

「いまは、王宮に泊まり込みで兵士の新人訓練を受けていますよ。他にも仲間がいるらしくて、楽しそうに過ごしているそうです」

「えっ、王宮に泊まり込みなんでしょう?どうしてフォタリの様子がわかるの?」

「それは、手紙をくれるからですよ」

 なるほど。検閲はされているだろうけど、手紙は出せるんだね。


「仲間は何人なんですか?」

「5人ですよ。皆、偶然にも黒髪に黒い目だったそうで、すぐに意気投合したそうです」

 あ、それ、生贄だよね。

 じゃあ、オルランコスや盗賊に命じて子供達を攫ってくる必要なかったじゃない。それとも、子供達が集まらなかった場合に備えて、黒目の兵士を集めたのかな。

「2日後に、王宮でなにか催される予定はありませんか?」

「あぁ、花火大会のことですか?暮らしに疲れた民衆のために王様が企画してくださったんですよ。ありがたいですねぇ」

 あ、目が死んでる。台詞も棒読みだし。花火大会なんかする予算があるなら、施しをしてくれって目が言ってる。


 とりあえず。ろくでもないことばかり言い出すチャールズ王のことを、イコラ院長は嫌いなんだということはわかった。

 2日後の満月の日に花火大会を行うということは、大きな音を誤魔化す狙いがあるのかもしれない。つまり、召喚の儀式で騒ぎが起きても、それを花火の音で誤魔化すつもりなのだ。

 召喚の儀式は、王宮のどこで行うつもりだろう?さすがにイコラ院長は知らないだろうなぁ。それは、とうさまが調べてそう。前も、グラン伯爵の館を調べて来たしね。

「そうだ。フォタリの仲間って、女性もいるんですか?」

「いいえ。男ばかりで、一緒の部屋で共同生活をしているそうですよ。王宮の兵舎に住んでいて、日中は訓練に明け暮れているそうです。ご飯もしっかり食べられているそうで、なによりです」

「そうですか。よくわかりました。お話ありがとうございます」


1万PVありがとうございます。


ついでに、ぽちっと評価よろしくおねがいします(^^♪

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