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67 じいさんズ2

「そうか!おまえさんティナの息子か!でかくなりおったな」

「なんじゃと?ティナの息子だと?」

「もう1人も生きておったか!」

 じいさんズはすっかり殺気を引っ込め、好々爺という感じになってしまった。

 しかし、ティナって誰だろう?また知らない名前が出て来た。

「母親のあとばかりついて回っていた小僧が、大きくなりおって」

「やめてくれ。昔の話だ」

 あれ、とうさまが照れている。珍しいなぁ。ふふっ。

「兄さんは、母さんが大好きだったからね」

 え、オルランディ伯爵、いまなんて言ったの?その言い方じゃ、とうさまがオルランディ伯爵の兄さんみたい………。

「おまえのほうこそ、母さんにべったりだったじゃないか」

 そうか、2人は兄弟なのね!だから、さっきとうさまはリアム・エ・ルヴァスティ名乗ったのね。そして、2人の母親がティナ。うん。ようやくわかってきたよ。


「さて。そっちの2人は何者じゃ?」

「俺の娘だ。名前はセシル。そっちはレイヴ。ハンター仲間だ」

 とうさまが簡単に紹介してくれた。

「ふむ。似ておらんの」

 そういえば、わたし、とうさまと似てるって言われたことないかも。目の色は似ているけど、それくらいで親子とは判断されないよね。

「だがまぁ、よかろう。話してやるから座れ」

 室内に椅子はなく、居間は床に敷物を敷いただけの場所だ。わたし達は、じいさんズと向かい合う形で敷物の上に座った。


「………さて、イヴェントラじゃったな。かつて、このアステラ大陸が戦争に明け暮れていた頃の話じゃ。人々は力を求めていた。平和を求める力、争いに打ち勝つ力、他者より優れた力を、な。そしてその力をいくら神に願っても手に入らぬと悟った一部の者達が、凶悪な者に願いを抱くようになった。それが悪魔じゃ。悪魔は、神と違って代償を求める。大きな願いには、より大きな代償が伴う。ある日、エ・ルヴァスティの王が神に願いを捧げていた。このエ・ルヴァスティの地に、長く平穏が訪れるようにと。そこに現れたのは、波打つ金色の髪に輝く金色の瞳をした、1人の美しい女じゃった。その美貌は、神と見紛うばかりで、王は咄嗟に女にかしずいた。その行動は間違いではなかった。女は神ではなく、悪魔だったのじゃ。恐るべき力を秘めた、美しき悪魔イヴェントラ。あの悪魔は、王の後方に魔力弾を撃ち、山頂を吹き飛ばした。目障りだったという理由で。しかし、イヴェントラもまた、王の美しさに魅了された。王がその忠誠をイヴェントラに尽くすなら、この地に平穏を約束すると言ったのじゃ。そうして、我らの祖先はこの地に都を作り暮らすようになったというわけじゃ。これが、国の始まりの物語じゃよ」


 え、ええと。エ・ルヴァスティの王が神ではなく悪魔を召喚してしまったけれど、なんとか穏便にすませることができた、という話かな?

「悪魔を召喚して平穏に済んだという話は、これ以外に聞いたことがない」

 そうか!レ・スタット国が、この話を参考にして召喚の儀式を行おうとしたかもしれないってことね?

 悪魔を召喚することは、危険を伴うもの。その危険が少なく、召喚者の要求を通す方法があるとしたら………あのチャールズ王が飛びつかないわけがない。つまり、チャールズ王もイヴェントラの話を知っているということだ。

「王がイヴェントラを召喚したときの宝物が伝わっているはずだな。いま、どこにある?」

「おほっ。それも知っていたか。残念ながら、宝物は先の戦争のときにレ・スタット国に奪われておる」

「そうか。あの国は、王の代理を立ててイヴェントラを召喚するつもりなんだな」

「「「なんと!」」」

 とうさまのつぶやきをじいさんズが拾った。耳がいいね。


「レ・スタット国の王が、イヴェントラを召喚するとな!?」

「なんと恐れ知らずな!」

「世界と戦争をする気なのか!」

 じいさんズが色めき立った。

 悪魔は、長く生きるほど力が増すという。もし、戦乱時代の悪魔がいまも生きていたら、その力はどれほどのものだろう。当時でさえ、一撃で山頂を吹き飛ばす力を持っていたんだもの。人間の国なら、簡単に滅ぼせるほどの力じゃないのかな。

「しかし、イヴェントラは気まぐれで王に協力したにすぎん」

「そうじゃ。言うことを聞かせるなどできぬ相談じゃぞ」

「いや、待て。王と似た容姿の者がいれば、話は違ってくるかもしれんぞ」

「王は、どんな容姿だったんだ?」

  そうだね。どれだけかっこいい王様だったんだろう?

「漆黒の髪に、夜露に濡れたような黒い瞳と言われておる」

 なるほど。それで、黒髪黒目の子供が生贄として攫われたのかもしれない。

「胸は小ぶりで、スレンダーな体型だったそうじゃ」


「「「「………えっ?」」」」

 王様って、男じゃないの?そういえば、じいさんズは一度も男とは言っていない。でも、女の悪魔を魅了したんでしょ?イヴェントラは女が好きなの?

「なんじゃその顔は………って、あぁ、そうか。王が男と勘違いしたな?すまんすまん。王は絶世の美女だったと言われておる。イヴェントラ自身は女じゃが、男も女もイケる口らしいぞ。ふぉっふぉっふぉ」

 へぇ~。悪魔も色々なんだね。



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