表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/282

62 エ・ルヴァスティへ

 アビー達が知っている話は以上だったので、アビーの両親がいる飲食スペースへ行ってもらった。

 それにしても、子供ならレ・スタット国にもいるのに、どうしてわざわざカー・ヴァイン国まで攫いに来たんだろう?

 攫われた子供達の共通点はなに?男の子と女の子の両方いることから、性別は関係ない。年は、8~10歳。………10歳以下ということに意味が?身体的な特徴はどうだろう。3人とも、黒っぽい髪に黒っぽい目をしている。うん?黒………?たしか、レ・スタット国の国民は髪も目の色も比較的明るい色のはず。だから、他国の子供を攫ったのかもしれない。

 今回は無事にアビー達を助けられたけれど。チャールズがそう簡単に諦めるとは思えない。また新たな子供達を攫って、召喚の儀式を行うのかもしれない。

 でも、なんのために?

 いまは兵士を増やして軍を強化しようとしているし、やっぱり戦争をする気なのかもしれない。

 相手はどこだろう?ル・スウェル国?それともカー・ヴァイン国?もしかして、ヨナス山脈を超えてア・ッカネン国へ行くつもり?

 あ~っ、わからない!情報が足りない!


 アビー達が退出してから、とうさまがこれまでの経緯を説明することになった。

「…子供達を攫ったのは盗賊だが、盗賊達はオルランコスの命を受けていた」

「なんだと?」

 ギルドマスターの表情が変わった。無理もない。オルランコスを知っているということは、その危険性も知っているということだから。

「知ってのとおり、オルランコスはレ・スタット国に拠点を置く犯罪組織だ」

 以前はル・スウェル国にも拠点を作ったけれど、その拠点を潰されたことで、レ・スタット国の拠点を強化することにしたらしい。

 オルランコスは裏社会では有名で、総帥のことは公然の秘密と言われている。つまり、オルランコスを率いているのがレ・スタット国のチャールズ国王だという話は、皆が知っているということだ。それが、表社会に広まっているかは別にしても、オルランコスを知っている人間には推察できる事実だ。


「…つまり、レ・スタット国が関わっていると言いたいのか」

 ギルドマスター………ミルバレンは、渋面を作った。年の功か、オルランコスのことを知っていたらしい。 

「盗賊は、国境で子供達を別の男達に引き渡している。連中がオルランコスの一味なのは間違いない。そして、そのあとで子供達が連れて行かれたのが、レ・スタット国の王都にあるグレン伯爵の館だ。一貴族が、単独でこんな大がかりなことをしでかしたとは考えにくい。背後にチャールズ王がいるだろう」

「なんてこった!こいつは、国際問題になるぞ!それだけじゃねえ。下手すると………」

「戦争になるだろうな」

 実際、レ・スタット国は戦争に準備をしているのだろう。そのための軍の強化であり、召喚の儀式なのだ。


「生贄には、なにか条件があるのだろう。アビー達は外見が似ているしな。アビー達を取り戻した以上、同じ条件の子供達を集めるにはまだ時間がかかるだろう。召喚の儀式までは、まだ余裕があるはずだ」

「そ、そうだな。レ・スタット国がなにか行動を起こすにしても、おそらく召喚の儀式を行ってからだろう。それまでに調査を進めるよう、俺から王宮に進言する」

「頼む。それがあんたの仕事だ」

 カー・ヴァイン国が大々的に動けば、これ以上、カー・ヴァイン国内で子供達が攫われる事件はなくなるかもしれない。

 でもそれは、召喚の儀式が行われなくなる、ということではない。

 どうにかして、チャールズ王の目論見を知ることはできないかな?


 それから、とうさまはレ・スタット国で集めた情報をミルバレンに告げた。レ・スタット国で何度も兵士の募集が行われ、軍の強化がされていること。アビー達の世話係に、元孤児の少年が選ばれていたこと。アビー達の監視に兵士が駆り出されていたこと等々。

 そしてミルバレンは、ケビンとエイダの保護者が迎えに来るまで、2人をハンターギルドで保護することを約束してくれた。

 子供達の誘拐事件に関しては、一件落着と言えなくもない。


 それにしても、チャールズ王の動向が気になる。

「…とうさま、またレ・スタット国に行くの?」

「いや、エ・ルヴァスティへ行く」

 きっぱりと言い切られて頭が混乱する。 

 このタイミングで、エ・ルヴァスティの名前が出てくるとは思わなかった。

「天空の都市になにかあるのか?」

「そうだ。あそこに、今回の騒動のヒントがあるはずなんだ」

 とうさまの言葉に、なにか、決意のようなものを感じる。


「そうか。できれば、今回の件ではあんた達に協力してもらいたかったが、他に目的があるならしかたない」

 ギルドマスターとして、ハンターを引き留めることはできないのだろう。ミルバレンが悔しそうにしている。

「疲れを癒すために、3日はこの王都に滞在する。なにかあれば声をかけてくれ」

「わかった。なにか思い出したことがあれば、いつでも言ってくれ」

 報告が一通り終わり、わたし達は宿屋へ引き上げることになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ