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59 救出作戦

 ロキシー達3頭の馬は、東門近くの馬屋へ預けている。

 とうさまとわかれた後、わたしとレイヴはロキシー達を引き取りに向かった。

『お、いよいよ俺達の出番か?』

『わくわくするな』

『ご褒美あるんだろうな?』

 わたし達を見るなり大興奮でぶひぶひ言い出したロキシー達を見て、馬屋の人が驚いた様子で立ち尽くした。口がぽかんと開いている。ちょっと、驚きすぎじゃないかな。

『活躍してもらうから、もう少しおとなしくしててね。頑張ってくれたら、ご褒美をあげるからね』

 わたしが言うと、3頭の馬は大喜びでまたぶひぶひ言い始めた。


 今回の脱出劇に重要なのは、ロキシー達だ。少しでも早く王都を離れることが大事だからだ。だから、王都脱出時には、ロキシー達に身体強化の魔法をかける。そうすれば、風のように駆けることができるだろう。

 東門は、なんの問題もなく出ることができた。仕事のため、夜に街を出る者も一定数いるからだろう。

 東門の外には、カー・ヴァイン国へ繋がる街道が続いている。その街道から少し外れたところに、小さな森がある。

 わたし達は、その森の入口でとうさまを待つことにした。



*  *  *



 夜の闇に紛れて貴族の館や邸宅の屋根を伝い、グラン伯爵の館へやって来た。

 いまの俺は、身体強化の魔法の他、結界と認識阻害の魔法を重ね掛けしている。これで、誰にも見つかることなく館内へ侵入できるだろう。

 探知魔法を使い、子供達が囚われている部屋を探す。

 子供達はすぐに見つかった。3階の奥の一室に集められている。部屋の外には見張りが2人付き、館内を巡回している者もいる。外からの侵入を警戒しているのか、庭にも2人。

 幸い、この館は3階建てなので、屋根から侵入するには、子供達が3階にいるのは都合がいい。

 問題は、救出対象が子供3人であることだろうか。2人なら抱えて逃げられるが、3人となると、手が足りない。


 深夜になるまで待って、そろりと窓へ近づく。遮音の魔法を使いつつ、窓ガラスを割って割れた部分から手を入れ鍵を開ける。窓を開けて室内に入ると、3つのベッドが並んでいるのが見えた。それぞれのベッドには、寝入った子供達がいる。

 部屋全体に遮音の魔法を広げる。

 そして、1人目の子供に近づいた。肩を叩くと、子供はびくりっと体を震わせて、目を大きく見開いた。

「ひっ。誰?なにをするの?」

 自分の外見が魅力的なことは知っている。使えるときに、それを有効に使わなくてどうするというのか。

 俺は少女を安心させるように、優しい笑みを浮かべた。

「俺はニキだ。君達を助けに来た」


 少女は8歳ぐらいだった。利発そうな目をしている。

「君、名前は?」

「わたし………アビー」

 少女は恐怖で震えている。

「いい子だ、アビー。他の子も起こそう。ここから逃げるんだ」

 アビーの手をとり、落ち着かせるように頭を撫でる。

「本当に助けに来てくれたの?パパやママのところに帰れるの?」

 俺の手の下で震えていた少女が、少しづつ落ち着いてきたのがわかった。

「そうだ。帰ろう」

 アビーの目に大粒の涙が現れた。それを、少女は袖で乱暴に拭って気丈に笑った。強い子だ。


 アビーと手分けして、残りの子供2人を起こした。ケビンとエイダだ。2人とも最初は怯えていたが、状況がわかるにつれて落ち着いた。

 庭の兵士が立ち去るのを待って、子供達を連れてテラスへと出る。

「まずはケビン、俺にしがみついて」

 ケビンが俺の首にしがみつき、腰に足を巻きつけて来た。

「次はアビーとエイダだ。おいで」

 2人を両腕に抱き締め、ケビンが落ちないように上から抑える。子供達3人が団子状になった。

 再び、再び身体強化と認識阻害の魔法をかける。今度は子供達も一緒だ。これで、ケビンも俺にしがみついていられるだろう。

 次に飛行魔法を使い、空に浮かび上がった。俺は飛行魔法は得意じゃないので、あまり時間がもたない。セシル達が待っている東門を目指して一気に飛んだ。

 


  *  *  *



 月明りの中で、わたしとレイヴはとうさまを待っていた。

「なぁ、あれってニキじゃないか?」

「え、どこ?」

 レイヴに言われて、王都の空を見る。一瞬、空の一部が揺らいだように見えた。


 すとんっ


 空気がふわりと揺らいだ。

「………とうさま?」

「ここにいる」

 魔法が解けて、とうさまが姿を現した。隠蔽の魔法なんてあったっけ?

 とうさまは3人の子供を両手いっぱいに抱き締めていて、中央にいる男の子がとうさまの首にしがみついていた。

 とうさまが子供達を地面に降ろすと、子供達は気が抜けたように地面にへたり込んだ。

「本当に逃げられたんだ………!」

「追いかけて来ないかな?」

「おじさん、助けてくれてありがとう」


「安心するのはまだ早い。これから夜通し馬を走らせて逃げるぞ」

 そう言って、とうさまは1人の女の子の頭を撫でた。普段はしない、優しい顔をしている。

 子供達を安心させるために、無理して笑顔を作っているんだろう。ちょっぴり、顔が疲れたように見える。とうさまは、あんまり表情筋使わないからね。 





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