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57 孤児院

「こんにちは。ここにフォタリという人はいる?」

「うん。いるよ。お姉ちゃんは誰?」

「わたしはセシルっていうの。ハンターなんだよ」

「フォタリお兄ちゃんと一緒だね!ちょっと待ってて。いま呼んでくるね」

 そう言って少女はバケツを下に置き、孤児院の中に走って行った。


 少しして出て来たのは、15~16歳の少年と、さっきの少女だった。

 少年は使い古した皮鎧を身に着けていた。腰に佩いた剣は、どう見ても安物の鉄剣。グレーの髪に、茶色の目をしている。栄養が足りないのか細身で、身長はレイヴより低かった。

「俺に用があるっていうのは、あんた達か?」

「はじめまして。わたしはセシル。こっちはレイヴ。見てのとおりハンターよ。あなたに話が聞きたくて来たの」 

「あんた達がハンターなのは、見てわかる。腕のいいハンターなんだろうな。いい装備を身に着けてるもんな」 


「え、わたしはFランクだよ」

「Fランクぅ~?それで、そんな装備ってことは、どこかのお嬢様とか?」

 普通のFランクは、初心者らしく安い装備だもんね。そりゃあ、ドラゴンの鱗からできた鎧や剣を身に着けていたら驚くよね。

 ハンターの装備は、それなりに高い。装備にお金がかけられるということは、お金に余裕があることを示す。勘違いされてもしかたない。

「ええと………」

「まぁいいや。俺に話ってなに?」

 話を元に戻してもらえて、心からほっとした。


「できれば、中で話したいんだけど、いいかな?」

「いいよ。院長に言って、応接室を借りよう。ココ、この人達を応接室へ案内してくれる?」

「うん!いいよ。お姉ちゃん達、ついて来て」

 ココちゃんに案内されて、孤児院の中に入った。中も外と同じくぼろぼろで、床は1か所大きな穴が空いていた。

 応接室には、テーブルを挟んで背もたれのない椅子が置かれていた。う~ん。本当に財政難なんだなぁ。応接室も質素だなぁ。


 応接室についてまもなくフォタリがやってきた。ココちゃんの頭を撫でで、お礼を言うと仕事に戻るように言った。

 ココちゃんはにこやかに返事をして、部屋から出て行った。

「それで。どういう話なんだ?」

「じつは、あなたが軍に入って世話係になるという話を聞いたの。それで………」

「えっ?どうしてそれを知ってるんだ?」

「宿屋の食堂で、ハンター達が話しているのを聞いたの」

「ってことは、けっこう話が広まってるのか?誰が話したんだ?」

 フォタリが考え込むようにうずくまった。


「わたし達は、フォタリが誰の世話係になったのか知りたくてここまで来たの。教えてもらえる?」

「あ、あぁ。保護されてきた子供達の世話だよ」

 

 ぴくっ


 思わず、体が「子供達」という言葉に反応した。探していた子供達の手がかりが見つかるかもしれない。嬉しさと期待で顔がほころぶ。

 フォタリの言葉を遮らないよう、余計なことをしゃべらないようにぐっと口元に力を入れる。

「可哀そうに、どうやらひどい目にあったらしくてすごく怯えてるんだ。全然しゃべらなくてさ。ご飯もなかなか食べようとしない。だから、すっかり弱っちゃって」

 そこで言葉を切り、わたし達を見つめてくるフォタリ。

「もしかして君達は、あの子達の兄弟とか?」

「兄弟じゃないよ。わたし達は、いなくなった子供達を探しているの。もしたしたら、フォタリが世話をしている子供達は、わたし達が探している子供達かもしれない。もう少し、詳しく聞かせてもらえる?」

「いいよ」


 フォタリが教えてくれたのは、こういうことだ。4日前、フォタリはハンターギルドで例の王国軍募集の張り紙を見て、王宮へ出かけた。そこで追い返されそうになったが、フォタリを知っていた兵士が助けてくれ、あれよあれよという間に子供達が保護されている館へ連れて行かれた。館は貴族街にあり、グラン伯爵の持ち物だという。その一室に子供が3人まとめられていて、四六時中、兵士に警護されているとのこと。

 3人の子供達は、魔物に襲われているところをそれぞれ保護してきたそうだ。保護者は魔物にやられて亡くなっており、目の前で大人が殺されるところを見たせいか、怯えて心を開かないらしい。

 本来は孤児院へ送られる子供達を、哀れに思ったグラン伯爵が保護しているそうだ。警護の兵士は、子供達を安心させるための人員であり、グラン伯爵の要望で王宮から出しているらしい。


 この話を聞いて思ったのは、怪しいな、ということ。まず、3人の子供が別々に魔物に襲われ、子供だけ生き残るなんてありえない。大人を殺せる魔物が、子供だけ見逃す理由がないからだ。そして、3回も魔物が人を襲う事件が起きたら、魔物退治のため王都軍が派遣されておかしくないし、ハンターギルドで情報共有されるはずだ。それらがないことが、この情報の信憑性を下げている。

 そして、グラン伯爵が福祉に心を砕く人のいい貴族だったとして、同じ境遇の子供を3人も保護するということは、王都の近くで魔物に襲われる事件があったということだけど、そんな話は広まっていない。1度、人間の味を覚えた魔物は再び人間を襲うため危険であるにも関わらず、である。

 そもそも、なぜ子供を兵士に警護させるのか?監視の間違いではないのか?



評価100ptありがとうございます(^^♪

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