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51 オルランコスとお母さん

「………というわけです」

 盗賊から聞き出した情報を、ギルドマスターに報告した。

 警史に引き渡された盗賊達は、これから厳しい取り調べが待っている。これらの情報はすぐにわかることだけど、先に知っているのとあとで知るのとでは、対応が違ってくる。

「そうか。オルランコスが動いているのか………」

 一般にはオルランコスの存在は知られていないけれど、ギルドマスターなら知っていてあたりまえだよね。

「わかった。ギルドで情報を共有して、対策を考えよう。君達の協力は感謝する」

 そう言って、ギルドマスターは報奨金を出してくれた。ありがたい。


 報奨金を受け取ったあと、とりあえず宿をとった。盗賊を引き連れての徒歩の旅は疲れたからね。 

「…しかし、参ったな」

 とうさまが呟き、ベッドに腰かけた。

 さっきも言ったけれど、オルランコスはレ・スタット国を拠点にしている。今回の子供誘拐事件を解決するには、早くレ・スタット国に行くのが重要だと思う。

 今は、盗賊が活発化しているので、警戒した乗合馬車が動いていない。

 こういうとき、馬が欲しいと思う。馬があれば、好きなときに好きな場所へ行けるから。

「…馬を借りて、レ・スタット国へ向かうか?」

 どうやら、とうさまも同じことを考えていたらしい。

 でも、攫われた子供達のことは心配だけど、このままオルランコスに関わっていいのかな?


 じつは、わたしはオルランコスと因縁がある。わたしのお母さんが、オルランコスに命を狙われていたのだ。指示をしたのは、チャールズ・レ・スタット国王。

 わたしのお母さんは、愛称レナ、本名をセレスティナ・レ・スタットという。レ・スタット国の前女王を務めていた。けれど、それは正式な後継者であるチャールズが成人するまでの、中継ぎの女王にすぎなかった。チャールズが成人し、セレスティナが不要になったとき、あっけなく捨てられた。本来は王座に就くはずのなかった、地位の低い王女だったから、当然とも言える所業だ。


 問題は、セレスティナが善政を布いたのに対して、チャールズは悪政を布いたこと。欲望の赴くまま好き勝手にするチャールズと、その母、王太后アシュリーは国民に人気がなく、セレスティナの復位を望む声が絶えなかった。

 そして、レ・スタット国の王位に就く者は「死者の呪い」を受けて、退位後に体が急激に衰えて死に至る。セレスティナは密かに「死者の呪い」を解き、その代わりに記憶を失ってレナとなった。

 レナは自由に生きられる地を求めて旅に出たけれど、そこをチャールズの命を受けたオルランコスが執拗に追い続けたの。レナが死ぬまで。

 お母さんは死んだ。わたしを産むときに出血が多く、体がもたなかったの。

 そのときとうさまが、わたしも一緒に死んだことにしてオルランコスの目を誤魔化した。だから、わたしは自由に生きられるの。

 わたしが生きていることがチャールズに知られたら、今度はわたしが狙われるかもしれない。お母さんの命と引き換えに繋いだわたしの命を、危険に晒していいのかわからない。


 もちろん、オルランコスのことは憎い。でも、あの巨大な組織を相手にするのは怖い。いくら手下を倒しても、すぐに補充される。首領を倒さないかぎり、オルランコスは壊滅できない。

 だけど………攫われた子供達を放っておくこともできない。

 なんのために集めているのか知らないけれど、今頃はきっと不安で震えているはず。助けなきゃ!


「とうさま。わたしは、攫われた子供達を助けたい」

「わかった。まずはレ・スタット国へ向かい、状況を調べよう。なにかあるはずだ」

「どうしてレ・スタット国なんだ?」

「あの国が、オルランコスの本拠地だからだ」

「オルランコス?」

 オルランコスがなんだかわかっていないレイヴに、わたしとの関係は省略して説明をした。レイヴを信用していないわけじゃないけれど、いまはまだ、話さなくてもいいと思うう。あまり巻き込みたくない、と思う。 


「俺が馬を調達して来る。おまえ達は先に宿屋へ行っていろ」

「「わかった」」

 レイヴと声が揃い、思わず顔を見合わせて笑ってしまった。

「あははっ」

「おっかしー」

「おとなしくしているんだぞ」 

 とうさまはわたしの頭をぽんぽんと叩き、部屋を出て行った。


 夕食までまだ時間があるけれど、なんだが疲れを感じた。盗賊を連れて、徒歩で旅をしたせいかな。

「ふわぁ~っ」

 思わず、欠伸が出た。

 本当に疲れているらしい。

「セシル、少し寝た方がいいぞ」

「うん。そうする」

 靴と鎧を脱ぎ、ベッドに横になった。


「セシル、そのままでいいから聞いてくれ」

 レイヴの声が、子守歌のように心地いい。

 大きな手が、優しくわたしの頭を撫でている。

「俺には、セシルがなにを隠しているのかわからない。だが、悩んでいることはわかる。だから、俺でできることがあれば、なんでも言ってほしい。セシルに力になりたいんだ」

「うん。ありがとう」

 オ・フェリス国へ着いたら、レイヴにお母さんのことを話そう。そう決めて、眠りに落ちた。


少し書き溜めができたので、今日から5月10まで、3日ごとに2話投稿しますね。


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