表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/282

49 盗賊を退治せよ

 残念だけど、カー・ヴァイン国の王都行きの護衛依頼はなかった。

 でも、とうさまが気になる情報を見つけた。

「…カー・ヴァイン国で、盗賊団の動きが活発化。旅人は気を付けられたし。だと?」  

 基本的に、盗賊は弱い。兵士になれる強さがあれば、捕まれば犯罪奴隷になる盗賊などやっていない。そして農民や商人になれる勤勉さもないから、普段から自分を鍛えることをしない。それで集団となって、弱い者を襲うのだ。ただし大規模な被害が出るようになれば、当然、領地軍が出て討伐される。だから、集団と言っても大規模ではなく、せいぜい10人程度だ。

 その盗賊が活発化して、こうやって告知が出るほどとなれば、今すぐにでも領地軍が出る状態だ。というか、領地軍が出ていない方がおかしい。とすると、まだ捕まっていないということは、よほど賢い盗賊達なのだろう。


 もう少し、情報をもらえないかな?そう思って、受付嬢に聞いてみた。

「あの、もう少し詳しい話を聞かせてもらえますか?」

「あ、はい。情報量として銀貨1枚いただきますが、いいですか?」

 そうか。情報料がかかるのか。どうしようかな。

「お願いします」

 そう言って、とうさまが横から腕を伸ばして、受付カウンターに銀貨1枚を置いた。

「とうさま、いいの?」

「あぁ、情報は知っておくに越したことはない」

 情報は金なり。そんな言葉もあるよね。


「こちらへどうぞ。部屋へご案内いたします」 

 受付嬢に2階の一室へ案内されて、その中で説明を受けた。

 話はこうだ。カー・ヴァイン国の各地で盗賊被害が増えている。小隊や徒歩の旅人が片っ端から狙われ、子供は攫われている。そして子供を守ろうとした親や大人達は、容赦なく殺されている。中・大規模な商隊が襲われないことから、商人達は仲間達で商隊を組み対策をしているが、お金のない旅人はそうもいかない。それで、旅人に対する注意が出ていたそうだ。各地で領地軍が出ているが、領地軍が出ると盗賊が出ない。被害報告が出てからでは、すでに盗賊が逃げていて捕まえられない。という事態に陥っていた。

 盗賊被害は各地で出ているものの、特に王都とベンドロの町との間での被害が大きく、両国間での行き来に支障をきたしているそうだ。

 なるほど。中・大規模商隊ともなれば、お抱えの護衛がいるだろうし、それで護衛依頼がないんだね。

 話はわかったけれど、これで銀貨1枚は高いよ。


 乗合馬車は、盗賊退治されるまで運休となっていた。これではカー・ヴァイン国の王都へ行けないし、その先のレ・スタット国へ行くにも徒歩になってしまう。

「で、どうすんだ?盗賊退治するのか?」

「う~ん。盗賊退治しないと乗合馬車に乗れないし、皆困ってるみたいだし、やろうか」

「…そうだな。邪魔者は排除するに限る」

 というわけで、盗賊退治をしつつ、まずはカー・ヴァイン国の王都を目指すことになった。

 考えてみると、護衛依頼より盗賊討伐の方がお金が稼げる。それも、徒歩ならほぼ確実に盗賊が現れるとなれば、効率よく稼げる。うん。いいかもしれない。


「止まれ!言うことを聞かないと、容赦しないぞ!」

  はい~出ました、盗賊。数は7人。楽勝だ。

 いやいや、どんなときも油断は禁物だよね。油断して隙をつかれたら、笑い話にもならない。

 見たところ、盗賊に魔術師はいない。貴重な魔術師はハンターのほか、商人等でも需要があるので、わざわざ危険な盗賊を選ぶ馬鹿はいないのだ。ぼろぼろの装備に、なん日もお風呂に入っていないようで汚い。間違いなく盗賊だ。

 言われたとおり立ち止まると、盗賊達が一定の距離を保ったまま近くまで来た。

「武器と金目の物、それとそのガキを置いていけ。そうすれば、おまえ達は助けてやる」

「断る」

 剣も抜かずに、一言で提案を断ったとうさまに、盗賊の頭領が怒りを露わにした。

「なにぃっ?痛い目に会いたいようだな」

 いやいや。初めから、攻撃するつもりだったでしょう?


 「おまえら、やってしまえ!」


 ばきっ


 どかっ


 きんきんっ


「えっ?」

 一瞬で手下達を倒され、呆然とする頭領。

 わたしは短剣を使ったけれど、とうさまとレイヴは素手で盗賊達を殴り倒していった。

「…落ちろ」

 頭領の背後に回り込んだとうさまが、頭領の首の後ろに手刀を振り下ろし………。

「だめ!」

 慌ててとうさまを止め、頭領の鳩尾にパンチをお見舞いした。

「ぐおっ」

 頭領がお腹を抱えて、地面を転げまわっている。

 それを見ながら、とうさまに注意をした。

「気絶させたら、町まで連れて行くのが大変でしょ!盗賊達に抱えさせる気?そんなことが、あの盗賊達にできると思ってるの?」


 とうさまとレイヴに叩きのめされて、6人の盗賊達は地面にへたり込んでいた。元々、屈強な男はいない。ろくに訓練もせず、集団で旅人を襲って金目の物を巻き上げる生活をしている連中だもの。気絶した男を運ぶ力なんてない。意識がない人間は重いのよ。

「………セシルを置いていけと言われて、つい………俺は、そんなことはしない」

 あぁ。脅せば、子供を置いていくような男に見られて、腹が立ったってこと?そんなことで怒るなんて、冷静なとうさまらしくない。なにか、他に気に障ることがあったのかな?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ