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48 オ・フェリス国へ向けて

「オ・フェリス国?今度はそこへ行くのか。いいぞ」

 朝食の席でオ・フェリス国へ行くことを話すと、レイヴはオ・フェリス国を知らない様子ながらも賛成してくれた。………反対することはあるのかな。

 オ・フェリス国は、アステラ大陸の西北にあるの。このグ・ランヴィル国からだと、カー・ヴァイン国を経由して、レ・スタット国、ル・スウェル国を通過し、ようやくオ・フェリス国の南端にたどり着く。そこから王都までが、また遠いのだ。

「ふぅん。俺がセシルを乗せて飛んでもいいんだぞ」

 旅程を説明すると、レイヴはぽつりと呟いた。

 たしかに、レイヴに乗せて飛んでもらえばあっという間に着けるに違いない。でも………。

「ううん。急ぐ旅じゃないから、これでいいの」

「わかった」


朝食のあと、部屋でレイヴからもらった装備を確認した。短剣は今まで使っていた物と同じく、刃渡り40センチ。少し重いが、よく手に馴染む。刀身は怪しく輝く赤で、中心にある黒いなにかの素材が透けて見えるようだ。部分鎧は落ち着いた赤で、たしか緋色というはず。わたしには少し派手な気がしたけれど、着けてみると馴染んだ。

「セシル、短剣と鎧の両方に魔力を流すんだ。それで両方とも、他の物には使えない、おまえの物になる」

「え、うん」

 意味がわからなかったけれど、言われたとおり魔力を込めた。すると、短剣と鎧の両方が命を与えられたように光輝いた。祝福の光が収まると、それらは不思議なほど体に馴染んだ気がした。まるで長年愛用し、使い込んだ品のように。

「短剣と鎧が、セシルを主と認めたんだ。魔鉱石を装備にはこういうことができる。これで、万が一、誰かに盗まれても、そいつはこの装備を使えない」

「魔鉱石ってすごいのね」

 

「たしかに素材もいいが、鍛冶師の腕がいいんだ。ケンデルというドワーフの男だ」

「へぇ~。腕のいい鍛冶師は、どこへ行ってもドワーフなのね」

「そうだな。力があって、手先が器用な種族だから重宝されるんだろう」

 魔大陸って、どんな場所なんだろう?魔王が支配していて、魔族がいて、それから獣人もいる。魔物が強く、争いも激しいというイメージだ。アステラ大陸と魔大陸は交流がないので、よくわからない。

 そういえば。レイヴが魔大陸て行ったついでにご両親にわたしのことを話したということは、レッドドラゴンの里は魔大陸にあるに違いない。アステラ大陸にレッドドラゴンの里があると聞いたことがないし、たぶん間違いないだろう。赤い鱗の美しいドラゴンがいっぱいいる、レッドドラゴンの里………いつか行ってみたいな。

 その前に、オ・フェリス国へ行かなきゃ。あれがどうなっているか、気になるもの。


 かららん


 ドアベルの音でわかるよね。ハンターギルドにやって来ました。

「カー・ヴァイン国方面の護衛依頼があるといいんだけど………」

 そう言いながら、依頼ボードを眺める。

 ………なかった。なにもなかった。

 オ・フェリス国は遠いのだ。旅をするには旅費がそれなりにかかる。できれば、依頼を受けながら、お金を稼ぎながら旅するのがいいのだ。それなのに、なにもないとは………がっかりだ。

 まぁ、ないものはしかたない。途中で狩りをしながら行く………のも、ちょっと無理があるな。何度も言うけど、オ・フェリス国は遠いの。徒歩で行ったら、たどり着くのはいつになることかわからない。

 徒歩で行くくらいなら、レイヴに頼んで運んでもらうよ。


「………ないものはしかたない。途中のギルドで情報収集しながら行こう」

「はい、とうさま」

 クラーケン退治やドラゴン追い払い、ベンドロの町の危機回避で、報奨金はたっぷり溜まっている。お金に余裕はあるのだ。がんがん使うのがもったいない、というだけで。

 じつは、オ・フェリス国からア・ムリス国へ旅したときは、依頼をこなしながらで半年以上かかった。ハンターになったばかりのわたしに経験を積ませるために、とうさまが様々な依頼を引き受けたのだ。

 今度は寄り道などしないでオ・フェリス国へ行く予定なので、もっと早く着けるはず。というか、早くしないとオ・フェリス国が冬を迎えてしまう。王都が雪と氷に包まれてからでは、旅をするのも一苦労なのだ。

 乗合馬車に乗り、まずはカー・ヴァイン国との国境の町ベンドロへ向かうことになった。そこでカー・ヴァイン国の王都へ向かう護衛依頼を探す。なければ、また乗合馬車だ。


 ベンドロの町は、魔物の恐怖から解き放たれて、すっかり穏やかな町へ戻っていた。先日、来たときは怯えて速足で歩いていたのが、今は楽しそうにおしゃべりしながら歩いている。この町の人達が無事でよかったと、心から思う。エントのリリムちゃんを助けるのがもう少し遅ければ、手遅れになっていたかもしれないのだ。間に合ってよかった。

 

 かららん


 ハンターギルドへ行くと、わたし達を覚えてくれていたハンター達が歓迎してくれた。

「おぉっ。よく来たな」

「元気だったか?」

「なんか、装備がレベルアップしてないか?」

「あははっ」

 愛想笑いで誤魔化す。まさか、レッドドラゴンの鱗で装備を揃えたとは言えない。




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