表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/282

39 少女救出作戦5

 ひょいっ


 ガロイアが大岩から降りて、こちらへやって来る。にこにこして嬉しそうだ。

「いや~、こんなに早くお嬢様を助けて来るのは思わなかったぜ。あんた達、大したもんだなぁ」

「…油を売っていていいのか。おまえが、魔物達に指示を出していたのだろう?早く、攻撃を止めるよう指示を出せ」

 とうさまに言われて、ガロイアは顔をしかめた。

「俺はなぁ、こう見えて仕事が早いんだ。そんなこと、とっくにやってるぜ。おまえには、森の空気が変わったのがわからないんだろう」

 言われてみれば、殺気だったさっきまでの空気と違って、今は穏やかになった気がする。言われて気づくなんて、わたしも未熟だな。

「そんなことより、セシル、俺の嫁にならないか?優しくするぞ」

 わたしに向かって、ウインクしてくるガロイア。

「「ダメだ!」」

 とうさまとレイヴの声が重なる。この2人、けっこう気が合うのかも。


「セシルは俺の嫁になるんだ」

「セシルはまともな男に嫁がせる

 とうさまにそう言われて、固まるレイヴとガロイア。

「「俺がまともじゃないってことかー!」」

 硬直が解けたと思ったら、同時に叫んだ。仲のよろしいことで。

「おまえ達のどこがまともなんだ。片方は人間も襲うドラゴンに、もう片方は獣と変わらん」

 いつになく、表情豊なとうさま。2人に蔑むような視線を向けている。

 たしかに、カー・ヴァイン国のデトラー領で、レイヴは好き勝手暴れていた。それも褒められないやり方で。デトラー領の人達には、かなり迷惑だったことは間違いない。なにしろ、討伐依頼が出ていたんだから。

 ガロイアは、サテュロスなだけあって、半人半獣。体の半分が山羊だ。立派な山羊の角も生えていて、毛深い。そして身長は、人と変わらない。しかし、これで妖精だというのだから、世の中わからないものである。


「俺は、セシルのおかげで心を入れ替えたんだ。もう暴れない。強いし、かっこいいし、いい夫になるぞ」

 自分でかっこいいって、言っちゃうんだ。たしかに、人間の基準で言ってもかっこいいと思うけど。

「セシルが、外見だけで相手を選ぶと思うのか」

「うぐっ」

 なにやらダメージを受けるレイヴ。大げさに苦しんでいる。


「俺は優しいぞ。妖精だから長生きだし、大切な者が一生大事にする。俺について来い」

 決めた!と思ったのか、再びウインクしてくるガロイア。

「優しさなど、演技でもどうとでもなる」

「え?」

「それにおまえが長生きでも、セシルはそうじゃない。セシルの老後を、おまえが看るのか?年老いて面倒看れなくなって捨てる気じゃないのか」

「うぐっ」

 あ、ガロイアもダメージを受けてる。

 それにしても、年老いた捨てられるって………姥捨て山?


 わたしが変なことを考えている間も、とうさまは得意げな顔をして2人を見下ろしていた。この中で、とうさまが1番背が高いの。

「「セシルはどう考えているんだ!」」

 レイヴとガロイアに詰め寄られた。

「えっと………レイヴは、わたしに懐いている大型犬みたいで可愛くて。ガロイヤはただの山羊っていう感じ」

 率直に答えました。ええ。心の中で思っていたことを吐きました。

「「え?」」

 明らかにダメージを受けている様子の2人。がっくりと膝をつき、うなだれている。

 とうさまは嬉しそうだ。口元が歪んでいる。


「さてと。ベンドロの町の様子もになるし、早く町の戻るよ。レイヴ立って!」

 レイヴの腕を掴んで立たせる。

「………ふふふっ。俺の魅力がわからないとは、セシルも子供だな………」

 ぶつぶつ呟いてるのは無視した。相手をすると面倒そうな気がして。

「ガロイア。今回はお世話になりました。色々動いてくれてありがとう」

「いや、俺なんてただの山羊だし………役に立てたなら良かっ………ぐおっ」

 ふらふらと立ち上がり、わたしに抱きつこうとしたガロイアをレイヴが蹴とばした。

「どさくさに紛れてなにしてんだ、このエロ山羊が!」

 どうやら、見た目以上に元気なようだ。

「ちっ」

レイヴに飛ばされたガロイアは、見事な身体能力を活かして、空中でバランスをとり綺麗に着地した。うん。山羊だもんね。岩場に住む山羊もいるし、身体能力は優れているんだろう。


 いつものように、とうさまがマジックバックから色々と道具や食材を出し、手際よく野営の準備をした。もちろん、わたしも手伝う。レイヴにも、テントの張り方を教えた。

「こんなことを覚えて、なんになるんだ」

「人間に紛れて暮らすなら、必要な知識だよ」

 レイヴなら草地で寝れば済む話かもしれないが、他に人間がいるときは、やはりテント生活は大事だと思う。

 ガロイアは一緒に食事をしていった。調味料をふんだんに使った料理に驚き、「こんな美味しいものは食べたことない!」と言って感激していた。妖精は空気中の魔素を取り込んで生きていけるので、食事は必要ないらしい。それでも、楽しむため森の実りを食べていたが、ちゃんと料理したものを食べたのは初めてのこと。少し、とうさまと打ち解けていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ