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267 とうさまからの手紙

「とうさま達はどんな様子だった?」

 わざと明るい声を出すと、シルヴァは気づいていますよ、と言いたげな意味ありげな微笑みを浮かべた。

「ニキ達は動揺していました。セシル様のお手紙を渡しましたが、心配していましたよ」

 うん。まぁ、そうだろうね。

 魔大陸に囚われていると言ったら、心配せずにはいられないよね。

「そこで、レイヴとエステル、フィーがセシル様の元に馳せ参じることになりました」

「え!?3人とも来るの?」

「はい。レイヴが背におふたりを乗せて、こちらに向かっている最中です。明日には到着するでしょう。我々はセシル様にお仕えする身ですから、セシル様がいらっしゃる所ならどこへでも参ります」

「そっか。皆がいてくれたら心強いよ。ありがとう」


 レイヴことレイヴネルは、レットドラゴンの少年。見た目は16歳くらいで、赤い髪に黒い瞳をしているの。ドラゴンの討伐依頼を引き受けて行ったら、出会ったんだよね。

 エステルは、エステルレンという名前のフェンリルの少女。シルヴァの助けを借りて召喚したの。人型のときは14歳くらいに見えるけれど、フェンリル化した姿は8メートルほどの狼になるよ。

 フィー・フィリアは怪鳥ツァラの子供。わたしが卵から孵化させたの。両性具有で、人型のときはわたしに合わせて16歳くらいになっているの。フィーは10歳から大人まで自在に年齢を変えることができるの。便利だよね。


「ニキからは手紙を預かってきました」

 と言って手渡された手紙をわくわくしながら開くと、一言だけ『惑わされるな』と書いてあった。

 惑わす?誘惑されるなじゃなくて?もう、とうさまったら、もう少し説明してくれないとわからないのに。

「シルヴァ、他にとうさまはなにか言ってなかった?」

「ええ。特にお伝えすることはなにも」

「え??」

 おかしいな?あのとうさまが、わたしを心配するような言葉も、この境遇に対するアドバイスもなにもかもないっていうこと?あるのは、『惑わされるな』の一言だけ。

 

 シルヴァが、故意に隠しているとも思えない。だって隠していても、明日にはレイヴ達が到着するというんだから、レイヴ達に聞けばバレることだもの。

 だいたい、なにに対して『惑わされるな』と言っているんだろう?う~ん。もしかして、特定のなにかじゃない?ということは、いまの境遇に対して言っているのかな?難しいな………。

 わたしがうんうん唸っている間、クロヴィスとシルヴァは静かに睨み合っていた。それに気づいたとき、まずいと思った。

 だって、クロヴィスは魔王ベアテだし、シルヴァは王に継ぐ実力を持つ公爵級悪魔だもの。本気でやり合えばお互いに無事ではすまないし、周りの被害も甚大なものになる。


 わたしは、ふたりの意識を他に逸らすことにした。

「そういえば、シルヴァは朝食を食べたの?」

「いいえ、まだです」

「じゃあ………」

「朝食にするか。ラーシュ」

「はい。準備いたします」

 シルヴァに話しかけたのに、クロヴィスが割り込んで来て朝食にすることをさっさと決めてしまった。

 まぁ、いいけど。


 ラーシュは瞬間移動で消えてしまった。朝食を受け取りに厨房に行ったかな?

「じゃあ、わたし達は食堂へ行こうか」

 誰ともなく声をかけると、クロヴィスがわたしの肩に回した腕を外してくれた。と思ったら、腕はわたしの腰に回された。

 まるで、シルヴァに見せつけるように触って来るクロヴィスだけど、シルヴァは動揺した素振りもなく冷ややかに微笑んでいる。

「わたしがシルヴァを食堂に案内するね」

「そんなの、他の奴やに任せておけ。行くぞ」

「それじゃあ、一緒に………」

 シルヴァに向かって手を伸ばした瞬間、体を浮遊感が襲った。次の瞬間には食堂にいた。


 クロヴィスが待ってくれないせいで、シルヴァを置いてきてしまった。

「もうっ。なんで意地悪するの!」

「なぜだと?俺以外の男が、セシルに触れるのが気に食わないからだ」

 独占欲丸出しだった。

 食堂には朝食の準備のため侍女が待機していたけれど、いつもの時間より早くクロヴィスが現れたせいか驚いていた。

 しかもわたしとクロヴィスが言い争いをしているので、どうしたらいいかわからないようだ。


「シルヴァをわたしの護衛として認めてくれたんじゃないの?」

「それとこれとは話が別だ」

「明日にはレイヴ達が来るのに、同じような態度を取るつもり?」

「当然だ」

「レイヴもエステルもフィーも、わたしの大切な仲間なの。もちろんシルヴァもね。もしわたしを大切に思ってくれるなら、わたしの仲間も尊重して」

 そう言うと、クロヴィスは眉を上げた。


「もし、だと?心臓を捧げるとまで言った俺の想いを疑うのか?セシルを大切に思ってるに決まってるだろう」

「え、あ、疑ってるわけじゃないよ」

「ならいい」

「そうじゃなくてっ。わたしの仲間を尊重してという話、聞いてた?」

「十分、尊重してる。この城に入れてやるんだからな。それに、シルヴァ同様、おまえ付きの従者として扱う。だが、それまでだ」


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