261 対等でいたいのに
クロヴィスがわたしに遠慮して、手加減してくれているのはわかっていた。だって、無理やり仰向けにさせることはしなかったし、秘所にも触れて来ることはなかったから。ただ、愛でるようにわたしの体に愛撫を施していっただけ。
それでも、こんな姿をクロヴィスの前に晒していることが恥ずかしくて堪らなかったし、クロヴィスの愛撫に反応してしまうことが恥ずかしかった。
「今日はここまでで我慢してやる。続きは明日だな」
その言葉を聞いて、複雑な気持ちになった。今日はこれで解放されるけれど、明日は続きが待っているのだ。………って、続き!?今度は正面に背中と同じことをするっていうこと!?そんなの無理ぃーーー!!
抗議したくても、裸に近い状態では体を起こすこともできない。
首を回してクロヴィスを見ると、シャツを脱いでいるところだった。
惚れ惚れするような肉体が目の前に現れる。
と思ったら、その脱いだシャツを頭から被せられた。
「これでも着とけ」
もぞもぞと体を起こし、クロヴィスのシャツに袖を通した。明らかにぶかぶかで、シャツの裾は太ももの上まである。そして、シャツからはクロヴィスの男らしい匂いがした。まるで、クロヴィスに抱かれているみたいだ。
クロヴィスはわたしの様子を見て、満足そうにくっくと笑った。
クロヴィスに主導権を握られているのが悔しい。
でも、力でも、知識や経験、色気でも負けているわたしに主導権をとることができるわけがない。
体は16歳くらいに成長したと言っても、胸は小さいし、色気と呼べるものは備わっていない。とても、クロヴィスに太刀打ちできない。
………悔しいな。
あれ、でも、どうして悔しいんだろう?
………そっか。わたしはクロヴィスと対等でいたいんだ。
でも、どうして対等でいたいんだろう?………う~ん………。
「どうした。寝ないのか?」
腰をするりと撫でられて、体がびくんっと跳ねた。
なんなの、この体は!どうして、クロヴィス相手だとこんなに反応するの?
「もちろん寝るよ。おやすみなさい」
そう言ってベッドを降りようとすると、腰をがしっと掴まれた。
「どこへ行く気だ。ここで寝ろよ」
「えーーーっ」
「なにか不満がありそうだな」
だって、クロヴィスが一緒だと落ち着かないんだもの。心臓がどきどき言ってうるさいし、どうしてかわからないけれど、クロヴィスが欲しくなる。
「どうした?なにか言ってみろ」
クロヴィスがわたしを掴まえて、耳元に囁いてくる。
それがくすぐったくて、やめてほしいのに、もっと囁いてほしいとも思う。もう、わけがわからない。
わたしは、どうしてしまったんだろう?
くるりと振り返ると、クロヴィスの首に抱きついた。
クロヴィスは驚いた顔をしていたけれど、妙な満足感がわたしを満たしてくれた。
それに勇気づけられて、わたしはクロヴィスの裸の胸を軽く押した。
クロヴィスはわたしを抱いたままベッドに横になり、「なにをするつもりだ?」と嬉しそうな声で聞いてきた。
わたしはそれには答えず、体を起こすと、クロヴィスに誘導されるがままクロヴィスの上に跨った。そして、美しい顔に両手を添えると、その柔らかい口びるに口づけした。
とたんに、体の芯を熱いものが貫き、全身に飢えのような感覚が広がった。
あぁ、わたしはこれが欲しかったんだ。でも、足りない。全然足りない。もっと欲しい。クロヴィスを求めて夢中でキスしていると、クロヴィスが喉の奥でくっくと笑った。
すると、急に恥ずかしくなって。クロヴィスから離れようともがくも、当然のごとく離してくれない。
それどころか、左手でわたしの頭を固定したまま、空いた右手でわたしの体をまさぐりだした。
「………いてっ!」
シャツの中に差し入れられた手に胸を掴まれて、思わずクロヴィスの舌を噛んでいた。
「………嫌か?」
わたしは体を起こし、クロヴィスの両手はわたしの腰に添えられている。
わたしはお尻の下のふくらみが気になって落ち着かない。
「セシル?」
「………わたしの胸は小さいし………」
「なんだ。そんなことを気にしてるのか」
そう言って、今度は両手をシャツの中に差し入れてくるクロヴィス。
「やだっ………………あぁっ!」
触れられて声を上げると、クロヴィスは嬉しそうに笑った。
「綺麗な形じゃねえか。それに、感度もいい。俺に不満はないぞ」
クロヴィスに触れられるのは気持ちがいい。頭がおかしくなってしまいそうなほど。でも、どうしてだろう?足りないと思うのは。
………足りないと思っていたのは、わたしだけじゃなかったみたい。
突然、クロヴィスは体の上下を逆にすると、わたしが着ていたシャツを引き裂いた。本当に突然のことで、止める間もなかった。そして、わたしの胸に愛撫を始めたのだ。
恥ずかしくてたまらないのに、クロヴィスのしてくれることが全部気持ちよくて声が漏れてしまう。
クロヴィスはそんなわたしの様子に満足しているようで、愛撫を止める様子はない。
「あー………っ!!」
体の中心の高まりに、どうにかなってしまうそう。
そう思っていたら、弾けた。